【第15回】「言って聞かせて」はしてみても…「やってみせ」はできていますか?―事務長の悩みは99%解決できる

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野々下みどり(ののした・みどり)

株式会社LHEメディカルコンサルティング代表取締役。熊本大学法学部を卒業後、約20年間にわたり医療法人社団シマダ 嶋田病院に勤続。その間、医事課長、診療情報管理課長、情報システム課長、診療支援部長、企画広報部長を歴任。2018年、医療福祉の経営コンサルタントとして起業し、現職。2020年女性の“働く、稼ぐ”を支援する「女性働く研究会」を発足。医療経営・管理学修士(九州大学大学院医学系学府)、診療情報管理士指導者の資格を持つほか、日本診療情報管理士会評議員などを務める。

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「生きているだけで丸儲け」と思いつつ、悩みは尽きない

梅雨が明けた途端、待ち構えていたように蝉が大合唱を始めました。リモート会議中に相手の画面から鳴き声が聞こえてきて、「夏だな」とちょっと微笑ましい気持ちになります。立秋は過ぎたけれど、まだまだ連日猛暑を伝える天気予報。誰もが経験したことのない2020年の夏。

この季節は終戦記念日があり、「戦争」を回顧する機会も多くなります。今年は、ちょうど終戦から75年の節目の年です。目を背けたくなるような戦争や原爆の様子を改めてテレビなどで観て、怖くてたまらない気持ちと、生きていられる感謝の気持ちを感じています。「生きているだけで丸儲け。今、生きているだけで幸せじゃないか」。そう思いつつも、いろいろな課題や出来事に、悩んだり、考えたりするのが人間です。リーダーである事務長も、日々、何かしらに頭を抱えていらっしゃることでしょう。(ですから、私のコラムも続けられています(笑))。

「言って聞かせて」はしたけれど…

今回は、太平洋戦争を生きた山本五十六氏の名言をなぞりながら事務長のお悩みに触れていきたいと思います。

有名すぎる「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」。この言葉は、「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」と続きます。

前回のコラムで、施設長と他のスタッフとの関係性がうまくいっていないことに悩んでいた経営者のエピソードをご紹介しました。実は後日談があり、その施設長に会い、アドバイスをすることになったのです。そこで、「まさに、この名言の通りだな」と感じた出来事がありました。

私は、施設長に会ったとき、こんなことを伝えました。(山本氏の名言を思い浮かべていたわけではないのですが、自然とその要素が盛り込まれていました)

「リーダーは、マネジメントをしなくてはダメです。スタッフに、こういう施設を作りたいと目標や理念を語って(言って聞かせて)、一緒に行動を考えて、日々それを取り組んでみましょう(させてみせ)。相手を認めて、『できる』って信じて(ほめてやらねば)、スタッフのモチベーションを上げましょう(人は動かじ)」。話をしながらも、「伝わっているだろうか」と一抹の不安がよぎったのですが、施設長が「そうですね、分かりました」と答えたので、まずは様子を見てみようと、その施設を後にしました。

数日たったある日、その施設の経営者の方から「ミーティングで、施設長がスタッフに『あとは任せた。自分たちでやって』と突然言い放ちました。スタッフは混乱していて、雰囲気がさらに悪化しています」と連絡がありました。

しまった、と後悔しました。私は、施設長に対して「言って聞かせた」けれど、「やってみせ」をしていませんでした。ですから、施設長も、部下にやってみせる、が抜けてしまったのです。

「やってみせる」とはどういうこと?

では、「やってみせる」とはどんなことを指すのでしょうか。「自分がスタッフの目の前でやってみせる」ことは確かに大事ですが、事務長には、時には自分が経験していないことをスタッフに伝えないといけないこともあるでしょう。そんなときはどうすればいいのでしょうか。

私は、さまざまな病院の事務長から、「自分は医事課の経験がないから、医事課のスタッフに指示ができない」「遠慮して強く言えない」「口を出せない」という相談を受けます。事務長がそのような姿勢だと、その組織は、コミュニケーションが活発でなくなり、風通しが悪く、発展性がない風土が形成されてしまいます。「経験が無いと言えない」「やってみせないと指導や指示はできない」――。果たして本当にそうなのでしょうか。

事務長やリーダーは、マネージャーでなければなりません。例えば、「部活のマネージャー」を思い浮かべてください。高校の野球部のマネージャーは、上手に野球ができる必要はありません。しかし、選手と同じように甲子園を夢見て、選手が心身ともにベストコンディンションであるようにサポートしています。「タレントのマネージャー」はどうでしょう。その人自身が歌や演技ができるわけではありませんが、そのタレントがスターになるにはどうしたらいいのかタレントと一緒に考えながら、成果を出すためにサポートしていますよね。私はこれも、「やってみせる」ことだと思うのです。

あなたにその業務の経験が無いからと言って、遠慮する必要は一切ありません。「一緒に考える」、「考えている姿を見せること」をやってみせてください。

先程の施設長へのアドバイスの反省に戻ります。私は野球部のマネージャーを例に、施設長の “在り方”は伝えたけれど、実際のやり方についてもう少し具体的に伝えるべきでしたし、対応方法を施設長と一緒に考えるべきでした。

事務長、あなたは「素直」ですか?

この施設長には、実はもう一つ大きな課題がありました。人間の成長に一番必要な、「素直さ」です。私がアドバイスをさせていただいたときも、素直に聞き入れられていない様子が表情や言動から感じ取れました。私が「伝わっているだろうか」と不安に感じた原因です。

実際、現場でもスタッフからの提言は、無視か否定をしていたようです。自分がスタッフを信頼していないので、当然、スタッフからも信頼されません。ここで、山本氏の教えを振り返ってみましょう。「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」。一方で、この施設長がしていたことは、「話し合わず、耳を傾けず、否定し、任せず。やっている姿を感謝で見守らず、信頼せず」です。山本氏の教えとは真逆ですね。しかし、この施設長の姿勢、実は私にも心当たりがあるのです。

(毎回のように懺悔をしていますが)私も前職の病院管理職時代、周囲から「言っていることは正しいけれど、言い方が間違っている」と何度も言われていました。確かに私の言い方は、決して相手の耳に届くようなものではありませんでした。しかし、当時は、「言っている内容が合っているならいいじゃない」と、忠告を素直に受け入れられなかったのです。今なら分かります。影響力がある立場の自分がどうあるべきだったのか。

私が参加している経営者の勉強会で、幾度となく口にされる言葉があります。「何を言うかではない、誰が言うかである。リーダーは信頼される人物でなければならない」。

信頼されるためには、まず自分が相手を信頼すること。そして、相手を承認、感謝、称賛して、その人のモチベーションが上がるきっかけを作ること。素直に人の話を聞き入れ、人間性を磨くことが大事なのです。

これを読んでいただいている事務長の皆さん。あなたは「素直」ですか。

事務長の「一緒に考える背中」を見せて

これまで経営コンサルタントとして多くの病院を見てきましたが、昇給や昇格の際に、プレイヤーとしての経験値を重視することが多いように感じます。

例えば、「現場の業務はできるから、もうリーダー業務を任せられるだろう」「自分ができない業務だから、その業務の経験が長い人を昇格させよう」というように。現場の業務ができた人だからと、任命後、放置されている例も珍しくありません。

しかし、現場でのスキルとリーダー業務に必要なスキルは全くの別物です。現場の業務ができても、できなくても、スタッフと一緒になって考えているかどうかが重要なのです。一緒に考える事務長の背中を、スタッフにぜひ見せてあげてください。

「信頼する事務長が言うから頑張ろう」。そんな風にスタッフが思ってくれるような組織を目指したいですね。

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