【第9回】なぜ、事務長のリーダーシップに部下がついてこないのか?―事務長の悩みは、99%解決できる

野々下みどり(ののした・みどり)

株式会社LHEメディカルコンサルティング代表取締役。熊本大学法学部を卒業後、約20年間にわたり医療法人社団シマダ 嶋田病院に勤続。その間、医事課長、診療情報管理課長、情報システム課長、診療支援部長、企画広報部長を歴任。2018年、医療福祉の経営コンサルタントとして起業し、現職。医療経営・管理学修士(九州大学大学院医学系学府)、診療情報管理士指導者の資格を持つほか、日本診療情報管理士会評議員などを務める。
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最初にリーダーについて学ぼう、組織マネジメントを学ぼう、と思ったのはいつだったでしょうか。数日間にわたる経営塾に参加して作った発表資料を見返すと、作成日が2006年。前職の病院に入職して8~9年目、30代前半の頃です。

その頃から今に至るまで、自分自身の目指す姿、組織への貢献、部下の育成などに悩みもがき、「リーダーとは?」と自らに問い、勉強し続けています。果たして、答えを出せる日は来るのでしょうか。

先人が説かれている様々なリーダー論を学ばれていらっしゃる事務長やリーダーに、私がお伝えすることはないようにも思いますが、何かのお役に立てればと思い、今回は私が学んだ「リーダー」についていくつかご紹介したいと思います。

「経(きょう)」を唱え「営む」こと

私の手帳には、学びがあった、奮い立たせてくれる言葉がたくさん綴ってあります。先ほど触れた経営塾で講師だった某院長の言葉をご紹介します。

• リーダーは「経営」をしなければならない。
• 「経営」とは、私の考えですが、読んで字の如く「経」を唱えて組織を「営む」ことなのです。

リーダーは組織の向かう姿や自分の考えをいつも、ずっと、唱え続けなければならない。その考えを組織に浸透させ、日々の業務を営んでいく──といった趣旨でした。リーダーとして初心者マークだった私が、素直に「なるほど」と感動できた言葉で、あれから10年以上たった今も覚えています。

組織をマネジメントするには、やはり組織の目指すところ、リーダーの考えを常にメンバーに説かなければならないのです。

アニメに学ぶ組織論

さて、もう1つ。今年最初に参加した、認知症キャラバンメイトの講師対象の勉強会で、アニメとリーダー像の関係について、興味深く聴いた話をご紹介します。

「あなたがリーダーとして思い浮かべる、アニメのキャラクター(主人公)は誰ですか」

そうですね、リーダーというより、ヒーローやキャプテンと言ってもいいかもしれません。さて、あなたはどんなキャラクターを思い浮かべましたか。世代や性別によって違うでしょう。そう、まさにそこなのです。“違うこと”が重要なのです。

私はいわゆる団塊ジュニア世代です。同じ世代でもそれぞれ見ていたアニメや嗜好も違うので一概には言えない部分はありますが、この世代はあるアニメの影響から、優秀でチームをぐいぐい引っ張るような人物をリーダーとして認識していることが多いのだそうです。

私より上の世代は、「俺がみんなを守る」というような絶対的なカリスマリーダー。少し下の世代になると、自分は普通だけれど、周りの優れた才能を生かしながらチームをまとめるリーダー。そして今は、「みんな違ってみんないい。みんなが主人公」という考えのもと、欠点や劣っている部分があるリーダーを、周囲の人たちがそれぞれの得意分野で能力を発揮しながら支えていく組織が描かれているアニメの影響を受けているそうなのです。

ここでの学びは、以下の2つのことではないでしょうか。
• リーダーである登場人物は、夢や目標を叫び、それを信じて仲間が集まり、仲間同士が支え合い、同じ目的に向かって進んでいっている
• 我々の組織は、アニメの影響1つにしても「感覚」が違う者の集まりであることを再認識する

これからのために、これからの人材を育てる

事務長、リーダー、管理者──もっと言うと、少しでも長く生きている先輩にとって、次の世代の「人」を育成することが、重要な任務の1つです。退職や異動で人員配置に変更があっても組織の目的を継続して達成するために必要であり、さらに組織が繁栄し存続することに繋がるからです。

我々が育てる相手は、受けてきた教育や環境が我々と違うため、そもそも「違う」。それを認識することから始めなければならないのです。私たちや先輩方がやってきたことが間違いではないけれど、それをそのまま継承しても相手には通じない、むしろ逆効果ということもあるのです。

私たちの世代は、悔しかったら努力して勝つような、負けん気が良しとされることが多いように感じます。2年前から専門学校の非常勤講師もさせていただいていますが、「私はこんな苦労と努力で、ここまでやってきた(だからみんな、やる気を出そう!頑張ろう!)」といった講演や体験談を聞かせても、学生からは「あんなすごいことをいろいろするのは、私には無理。向いてない」という意見も見受けられます。私達世代であれば「なるほど。みんな苦労と努力をしているんだな。自分も頑張ろう」となるところが、そうではない。こちら側が意図する“狙い”とは、逆効果を生む場合もあるのです。

経営とは「経」を唱えて組織を「営む」、リーダーは自分の考えを常に、絶えず唱え続ける、と冒頭にお話ししました。夢や将来像を語って、同じ方向を向くように熱く語ることは、とても重要だと思います。しかし、自分についてきてもらう相手の価値観を知らないままに指導するのは、リスクがあるのではないでしょうか。知る、知っていることは、それ自体が武器になります。
第4回のコラムで「誕生日の法則」としてお伝えしましたが、してほしいことは先にやること、理解してほしければ、理解すること。相手を先に認めることが、重要なのだと思います。そのためには、相手を知ることが必要なのです。

「抜苦与楽」

突然ですが、お釈迦様は「生きることは苦」だとおっしゃっています。「四苦八苦」という言葉がありますが、その中の四苦とは「生・老・病・死」で、人間は生まれ、老い、病気になり、最後は必ず死ぬ、という避けられない4つのことを指しています。

「今」という時間をHappyにして、そして、自分の人生が終わるとき「生きてきて良かった」「悪くない人生だった」「老いも、病気もしたけれど、良い人生だった」と思えるような最期に関わりたい。私のビジネスの根幹でもある、この「思い」を唱え続けていきたいと思います。ちなみに蓮の花には、「慈悲」の意味があり、「慈」には苦しみを抜いてあげたい、「悲」には楽しみを与えてやりたいという「抜苦与楽」の意味があります。生きることは「苦」ですが、楽しくHappyに──。弊社のロゴマークには、そんな思いを込めています。

病院勤務時代も日々、いろいろなことが起こり、さまざまな感情に翻弄されていました。起業して医療機関だけではなく、介護施設、障がい者福祉施設の方々、そして多様なビジネス業態の方とも出会う機会が増えました。前回のコラムから約1ヶ月の間も、知識に人に感情にと、新しく得るものばかりの毎日を過ごしています。「苦」もありますが、それはとても、幸せなことでもあります。

「今」という時間は、とても大切で有限です。このコラムがそんなリーダー、事務長の「元気」の足しになれば幸いです。

そして若者への応援もしていきたいですね。少子高齢化の日本は、みんなで若者を育て、よりよい社会を作らなければならないと私は思っています。今度、大学生のイベントにアドバイザーとして参加する予定です。これからの日本を創っていく若いエネルギーに触れることがとても楽しみです。

次回は、私の手帳に綴られているその他の「言霊」を持つ言葉から、また何かご紹介しようかな、と思っています。
【読者の皆さまからのご質問をお預かりしています】
連載で取り上げるテーマの他にも、みなさんの「今」のお悩みについてもいっしょに考えていきたいと思っています。「事務長の~」というタイトルではございますが、お役職問わず、お気軽にお問い合わせください。ご質問はコチラから。

<編集:平石果菜子>

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