病院広報動画が公開1週間で40万回再生!“バズる”コンテンツの作り方とは?-社会医療法人杏嶺会・一宮西病院―病院マーケティング新時代(21)

この記事は約6分40秒で読めます

本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣が、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報の取り組みを取材します。

著者:小山晃英(こやま・てるひで)/病院マーケティングサミットJAPAN Academic Director
京都府立医科大学 地域保健医療疫学
京都府立医科大学附属脳・血管系老化研究センター 社会医学・人文科学部門

今回の取材は、愛知県へ。名古屋駅から岐阜方面へ電車で20分ほどの場所にある、31科の総合病院、社会医療法人杏嶺会・一宮西病院(465床、尾張西部医療圏)に伺いました。2020年8月に同院がYouTubeにアップロードした「新人助産師の1日」という動画の視聴数は、わずか1週間で40万回を超え、9月中旬時点で57万回を記録。先駆けて3月に投稿された「新人看護師の1日」も視聴数46万回を超えており、病院のコンテンツとしては恐るべき拡散力です。今回はその動画を制作した広報戦略室の永井仁さんと服部沙耶さんに、“バズる動画”をいかに創り出したのか、その秘密を聞きました。

一宮西病院広報戦略室の永井仁さん(右)と服部沙耶さん(左)

“病院の独りよがりにならない”広報を

――ご無沙汰しています!永井さんとは、2019年の第21回日本医療マネジメント学会学術総会で私が担当したシンポジウム「集患と求人に繋がる病院広報」で、市民公開講座の取り組みについて登壇いただいた時以来ですね。その後もさまざまな場で、広報活動を発信され、受賞もされているとか。

永井:お久しぶりです!ありがたいことに、2018年の第68回日本病院学会ではプレスリリースに関する講演で優秀演題賞を、2019年の全国病院広報研究大会では市民団体と協働したコラボイベントの事例発表で最優秀賞をいただきました。本年度はコロナ禍で事例紹介の機会が失われ、みなさんにお会いできないのが残念です。

 ――ユニークな病院広報の取り組みによる素晴らしい実績ですね!さまざまな受賞を重ねてこられて、院内での広報戦略室の評価も変わってきているのではないですか?

永井:うれしい言葉をかけてくださる方もいて、とても励みになります。優秀なメンバーたちと一緒に実績を築いてきたことで、他部署からは広報のプロフェッショナルとして一定の信頼は得られているかと思います。というか、そう信じたい(笑)。ただ、この状況にあぐらをかいていてはいけないとも考えています。患者さん目線、一般市民目線を忘れない広報と、病院側の独りよがりにならない広報を、いつも強く意識しています。

YouTubeで再生回数57万回超えの病院広報動画とは?

――いろいろお聞きしたいことはあるのですが、今回は視聴数57万回超えのYouTube動画の制作にスポットを当てさせていただきます。あの動画は、どのような経緯で制作したのですか?

永井:人事部採用担当から、リクルート用にスタッフの働き方を案内する動画を制作できないかと相談されたのがきっかけです。今年3月にアップロードした「新人看護師編」が約4か月で視聴数40万回を突破、続けて8月にアップロードした「新人助産師編」は、1週間も経たないうちに40万回を超えました!その後も視聴数は伸び続け、9月中旬現在、新人看護師編は46万回、新人助産師編は57万回を超えています。

視聴ターゲットは看護師を志す若い年齢層と想定していましたので、動画全体の構成や演出については若い感性に託すべきだと判断し(笑)、広報戦略室の新人である服部にディレクション全般を任せました。いかにしてバズる動画を創り出したのか、服部からお話しします。

服部:前振りがすごい(笑)。私はYouTubeをよく見ます。YouTubeには、テレビ並みに撮影のレベルが高いものや、貴重な情報を発信しているものなど、さまざまな人気動画がたくさんアップロードされています。それらを見ながら、病院広報動画で視聴回数を伸ばすにはどうしたらよいかと考えました。そして、まずは自分が「これだ!」と思った映像編集や動画の構成などを参考に、見た人を感動させるような、メッセージ性の強い動画づくりを目指そうと決めました。

制作した動画には字幕だけでなく、ナレーションや出演者の生の声(インタビュー)も入れています。当院で働くスタッフ本人の声を発信することで、どんな思いで患者さんや仕事と向き合っているのかということに加え、人柄までも伝わるように工夫しました。そして動画内では、治療を受けられた患者さんにもコメントをいただきました。医療を提供する側と受ける側、双方のリアルな声がそのまま視聴者に伝わることを意識しました。

動画「人看護師の1日」の看護師インタビュー
動画「新人助産師の1日」の患者さんインタビュー

――私も動画を拝見しましたが、ドキュメンタリー番組のようでした。インタビューのタイミングも素晴らしく、人情に訴えかける作りで、見入ってしまいますね。

服部:私は以前から「看護師さんの仕事ってかっこいいな」と思っていたので、当日の密着取材は楽しみながら臨めました。患者さんのために一生懸命働く姿を目の当たりにして「なんてひたむきでかっこいいんだろう…!」とすごく感動したことを覚えています。同時に、ほかの人がこの姿を見ても、同じ気持ちになるだろうと確信したんです。密着した1日のありのままの姿を伝えることで、見た人に感動を届けられる動画、視聴者の心に響く動画を目指しました。

――動画の反響はいかがでしたか?

服部:「看護師さんがかっこいい!」「憧れます」という一般の方や、「将来の夢のためにとても参考になりました」という学生さん、「この病院でお世話になりました」という利用者さんなど、さまざまな方から好意的なコメントをたくさんいただきました。意外にも、他院で働いている看護師さんからの共感の声も多くありました。

――ここまで視聴回数が伸びた要因はなんでしょう?

永井:要因を一つに絞ることは難しいですが、少なくともYouTubeチャンネルの登録者数が増えたことが影響していると思います。3月の第一弾のアップロードで、当院YouTubeチャンネルの登録者数は200から1000まで増えました。そして8月の第二弾のアップロードでは更に2200まで増えました。

また当院には公式ブログやフェイスブックもありますので、そこでも同コンテンツの記事を展開することで、広くリーチできていると思います。YouTubeチャンネルをはじめとするオンライン上での情報発信の積み重ねにより、フォロワーが増えてきたことが、今回の反響に少なからず寄与したのだと考えます。

そして何よりも、コンテンツのクオリティの高さですね!視聴者目線で構成・編集した服部の感性によるところが一番大きいと思っています。ニーズにマッチしたと同時に、誰もが見入ってしまうような動画であると自信を持って言えます!

――今後も職員密着取材の動画を制作されるのですか?

服部:今は医師の密着取材動画を予定しているほか、バーチャル病院見学会の動画も制作中です。単純な施設紹介ムービーにならないよう、実際に院内を歩いている目線や尺を意識して撮影・編集をしています。前提として、バーチャル見学会などはリクルート用のコンテンツなので、採用担当者にとっては説明しやすい、エントリーしてくださる方にとってはわかりやすいツールになることを目指しています。

永井: コロナ禍をきっかけに、採用シーンも大きな転換期を迎えています。当法人の人事部長が申していたのですが、オンラインには、対面せずに細かなところまで情報を伝えられる、情報を曖昧なままではなく正確に記録できる、時間や場所を選ばない、そして採用担当者の経験やスキルに影響されにくい採用活動が担保できるなどのメリットがあります。今般のコロナ禍においてこういったツールは必要不可欠になってきています。そういう意味でも、オンラインでの情報発信を今後どんどん増やしていく予定です。

コロナ禍だからこそ…病院を訪れる患者への情報発信をおろそかにしない

――YouTubeはセルフメディアに近いものだと思いますが、元々貴院はメディア戦略が得意なイメージがあります。広報活動では、外部メディアを意識されているのでしょうか?

永井:プレスリリースを経たメディア露出は、大事な広報活動です。外部のメディアを介した広報、特にニュースや報道記事となると、記者やライターの目線、すなわち第三者目線を介した露出になります。いわゆる「広告・宣伝」にはない客観性が生まれるので、情報の受け手側には少なからず信頼が付加されるでしょう。外部メディアへの露出があるからこそ、広告・宣伝を含めた広報活動全般の価値も高まり、正のスパイラルが生まれると考えています。

――最後に、今後の一宮西病院の広報戦略室が目指す姿をお願いします。

永井:コロナ禍で、患者さんや一般市民の皆さんとの接点が減る中、情報発信はどうしても“外へ外へ”という意識になりがちです。しかしその一方で、身近な人たちへの情報発信を置き去りにしてしまっていないだろうか……?と、最近思うようになりました。患者さん目線、一般市民目線と言いながら、「じゃあ今日外来に来られた患者さんに、我々はどんな有益な情報をお届けできたのだろう?」と自問自答してみると、すぐに答えが出ませんでした。

コロナの影響で、患者さんは病院に足を運ぶことさえ、高いハードルを感じていると思います。患者数減により、経営的に逆風が吹いている民間病院さんもあるでしょう。だからこそ、それでも受診して下さった患者さんを大切にしなくてはなりません。

当院では昨年まで市民公開講座を頻繁に実施してきましたが、今年度はまだ一度も実施できておりません。患者さんや市民の皆さんと対面する機会が激減した今だからこそ、病院へ来てくださった患者さんやそのご家族への情報発信にも、注力しなくてはならないと思っています。そういう観点から、ポスター・パネルなどの院内掲示物や、院内に常時設置しているパンフレット類、待合スペースに設置している情報モニターのコンテンツ充実化など、“足もと”の情報発信を見直し、パワーアップさせているところです。

病院の外に向けた広報と、病院の中での広報。この両輪がそろって初めて、真の患者さん目線、一般市民目線の広報が実現するのではないかと考えています。

<取材をしてみて>

コロナ禍により、社会はさまざまな変化が求められています。今回の医療職の密着動画が57万回もの視聴数に至った背景には、新型コロナウイルス感染症の流行があると感じました。各医療機関がオンラインによる採用活動を強化し始め、オンラインでの情報発信と情報収集が必然となっています。さらに、世の中が対面での接触を制限されている中で、人の心が、より感動や共感に動くようになってきたことが影響しているのではないでしょうか。
取材では、永井さんの「一宮西病院の広報内容は、患者と一般市民の目線を忘れない」という言葉が胸に刺さりました。採用活動のために制作された動画ですが、医療従事者だけではなく、患者と一般市民の目線を意識して制作したことが、これだけの人気動画に成長した大きな要因だと感じました。

vol.20 安心感を生み出すカギは「人」の顔? 保険・自費診療を提供する御所南はなこクリニックの情報発信

「良い先生が見つからない」そんなお悩みをお持ちなら

データベースで求職者のプロフィールを見て
要件に合う先生にオファーを出せる、新たな採用ツールをご存知でしょうか

関連記事

コメント

コメントをお待ちしております

HTMLタグはご利用いただけません。

スパム対策のため、日本語が含まれない場合は投稿されません。ご注意ください。

ログイン

山梨県ケアミックス病院が、半年で働き盛り医師2名を採用!

M3Careerプライムは、地方病院のスピード採用を実現します。

病院経営事例集について

病院経営事例集は、実際の成功事例から医療経営・病院経営改善のノウハウを学ぶ、医療機関の経営層・医療従事者のための情報ポータルサイトです。