需要高まる「施設基準管理士」。合格者に求められるスキルとは?―日本施設基準管理士協会田中利男代表理事

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医療機関の施設基準を総合的に管理する専門知識・スキルを持つ「施設基準管理士」。2019年に第1回認定試験がスタートしてから、2021年6月までに609人の施設基準管理士が誕生しています。「資格所有者を採用したい」という医療機関が出てくるなど、現場からのニーズは高まりつつありますが、施設基準管理士には実際どのような力が求められているのでしょうか。また、認定試験を実施する日本施設基準管理士協会は、受験者や合格者にどのような環境を提供しているのでしょうか。田中利男代表理事に伺いました。

▼施設基準管理士認定試験スタート時の田中氏のインタビューはこちら
病院の生き残りを左右する「施設基準管理士」とは―日本施設基準管理士協会 田中利男代表理事

目次

施設基準管理士に重要なのは「どれだけスムーズに必要な情報へたどり着けるか」

日本施設基準管理士協会の田中利男代表理事

――施設基準管理士とはどのような資格ですか。

施設基準管理士とは、医療機関の施設基準の適正な届出、管理・運用を行うスペシャリストです。日本施設基準管理士協会では2019年から、専門知識・スキルの獲得を目的として認定試験を実施しています。これまでに3回の試験が実施され、609人の施設基準管理士が誕生しました。

――この資格ができた背景を教えてください。

安心・安全な医療の提供、病院の健全運営には、施設基準を総合的に管理・運用できる人材が必要です。

施設基準の管理が適切になされていないと、医療機関は返還金が請求され、経営に影響が出ますし、また厚生労働省(地方厚生(支)局)としても、監督業務に膨大な負担がかかります。

ただ、制度の複雑さに加え、人事異動などにより知識やノウハウが職場に蓄積されにくいこと、担当者が限られるため職場内で相談をしにくいことなどから、専門人材の育成が課題となっていました。

そこで、施設基準管理の精度向上を図るべく、2018年に日本施設基準管理士協会を設立し、2019年から認定試験をスタートさせたのです。

――資格取得を通して、どのようなことが学べるのですか。

施設基準は、厚生労働省が発出している通知や告示、疑義解釈などがすべてで、解釈についても最終的な判断は管轄の厚生(支)局に確認するほかありません。

それでは、協会がある意義はなにか。我々の大きな使命は、どの施設基準を見ても自分でかみ砕いて理解でき、必要な情報にスムーズにたどり着き、管理・運営ができる人材を育てることです。資格取得を通して、そのための知識やテクニックを身に着けられるような設計にしています。

また、自分の勤務先では普段触れる機会のない施設基準についても、この機会にぜひ学んでいただきたいです。欲しい情報にたどり着くトレーニングになりますし、この先、自院の方針が変わったり、ほかの医療機関に転職をしたりするときにもきっと役に立つはずです。施設基準全般を学ぶことで「読み解く力」を養っていただきたいと考えています。

医療機関からは「施設基準管理士資格者を採用したい」という声も

――協会設立から3年が経ち、「施設基準管理士」のニーズは高まっていると感じますか。

そうですね。最近は、医療機関から「施設基準管理士資格を持っている人を採用したい」という声を聞くようになりました。施設基準管理士の存在が現場で認知され、かつ求められていることを実感しています。

また、最近は施設基準専門の部署を持つ医療機関も増え、部署として当協会の開催する講習会に参加したという話も耳にします。学びの場を提供する協会の役割も認知されてきたのかなと思っています。

――すでに609人の施設基準管理士が誕生しているということですが、どのような方が多いですか。

施設基準管理士の9割以上は医療現場で働く方で、40代以上の方が多いですね。中には、合格当初は施設基準を担当していたが、その後他部署に異動したという方もいらっしゃいますし、役職者・事務長になった、という方も出てきています。

病院事務は異動が多い職種ですが、施設基準管理の知識・スキルは、他部署や管理職でも生かすことができます。協会には、病院全体の管理ができる医療マネジメント人材を育てるという使命もありますので、資格取得が病院事務職のキャリアアップの支えになっていればうれしいです。

理想としては、若い世代の施設基準管理士がもっと増えてほしいと思っています。実際に施設基準管理の具体的な業務を担うのは若い方が多いですし、院内で施設基準に詳しい人材の層が厚くなることは、組織としてもプラスです。ぜひ施設基準管理士の方には、職場の同僚や後輩に資格試験や施設基準を勉強する意義について伝え、仲間を増やしてほしいです。

――新型コロナウイルス感染症の流行は、試験や講習会の実施などに影響していますか。

認定試験は原則、毎年11月に実施していますが、2020年に予定していた第3回試験は新型コロナウイルス感染症の感染が拡大したため、2021年1月30日に延期しての実施となりました。しかし、結局は緊急事態宣言下での試験開催となったため、やはり受験者数はキャンセルや次年度に振り替える方が多く、第1回の半分以下に減ってしまいました。そして2020年は予定していたセミナーや全国研修会などもすべて中止せざるを得ず、協会としても苦しい1年間でしたね。

ただ、ちょうどコロナが本格的に流行する前の2019年末から講習会をeラーニングにする構想があったので、2020年はオンラインでの設計を進め、なんとか第3回試験の受験者には間に合わせることができました。第4回試験は、通常どおりのスケジュールに戻し、2021年の11月に予定しています。

施設基準管理士認定試験の受験者数と合格者数の推移:日本施設基準管理士協会提供

学び続ける環境・モチベーションの維持が重要に

――診療報酬は2年に一度必ず改定されますので、施設基準管理士にとっては合格後も学び続ける環境・モチベーションをいかに維持していくかが重要になりそうですね。

そうなんです。施設基準は2年ごとに内容が変動するため、診療報酬改定に合わせて知識を肉付けし、更新していく必要があります。もちろん協会としても、診療報酬改定に合わせて教材を更新し、合格から3年目には更新講習も設けるなどして、学び続ける機会を提供しています。

今後は、合格者がさらにスキルアップ・キャリアアップを目指せるような研修なども設計していきたいです。例えば、「医療マネジメント能力の向上」「他職種とのコミュニケーションスキルアップ」「管理職としての施設基準管理」などですね。

コロナ流行以前は、年に1回、合格者が集まる全国研修会を実施していました。コロナの流行が落ち着いたらぜひ復活させたいですし、将来的には規模を拡大し、多くの病院が取り組みを発表し、知見を共有できるような学会形式にしていきたいと考えています。

施設基準の担当者から「院内でほかに相談できる人がおらず、一人で悩んでいた」という声を聞くことは珍しくありません。会員同士で学びながら、切磋琢磨する場として活用いただければと思います。

――協会の活動として、新しい動きがあれば教えてください。

最近、医療事務・医療秘書・診療情報管理などの専門学校や医療系大学から、教員向けの講演を依頼されることが増えてきました。「施設基準管理士の役割や医療機関から求められる人材の育て方を教えてほしい」という依頼です。教育施設も施設基準の重要性を認識していて、教育カリキュラムに組み込むことを検討し始めているようです。将来的には全国の教育施設に施設基準管理士の認定校を設け、校内で試験を実施するといった構想もあります。

「一病院に一人は施設基準管理士を」は、協会立ち上げ当初から掲げていた目標ですが、いまようやくそのスタートラインに立てたような感覚があります。2022年は次のステップとして、施設基準管理士の中から次の指導者を育てていく活動を始めたいと考えています。

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