経営視点の転棟ルールに現場が拒否反応、機能させるには?【ケース編】─病院経営ケーススタディvol.10

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A病院の概要
    1. 病床数:280床(一般病床280床(急性期一般入院基本料1)の総合病院)
    2. 場所:首都圏郊外
    3. 職員数:750名

稼働率向上のため新病棟を開設するも…予想外の展開に

長年、急性期病院として発展してきたA病院。近年の医療ニーズの変化や、急性期病院に求められる基準が厳しくなったことに伴い、平均在院日数は短縮できたが、新規入院患者が増加せず病床稼働率が低迷している。急性期一般入院基本料1(以下、一般病棟)のみでの運営では難しいと判断し、以下の3つを目的に地域包括ケア病棟を導入することにした。

  1. 転棟後の在院日数を伸ばし、病院全体の稼働率を上げることで、収益を向上
  2. 重症度、医療・看護必要度(以下、「必要度」)が低い患者を転棟させることで、必要度を安定化
  3. 日当点の低い患者を転棟させることで、診療単価を向上

W医事課長は自らシミュレーションした結果、十分に効果が得られると確信していた。新病棟の対象患者や、一般病棟からの転棟判断基準の整理など、運用上のルール作りに関わりながら無事に開設までこぎつけたのだった。

しかし導入から3カ月後、W医事課長は首を傾げた。地域包括ケア病棟の稼働率が想定していたほど上がっていない。このため、収益の増加幅も当初の見込みを下回っていた。しかも、地域包括ケア病棟への転棟が進まないがゆえに、一般病棟の稼働率が上昇して、緊急入院の受け入れが困難になっているという弊害もうまれていた。

対象患者選定のフローとしては、まず事務が一般病棟患者の日当点、必要度、リハビリの実施状況を調べ、週次の「転棟判定会議」にて報告。その報告をもとに、会議で病棟師長、ベッドコントロール師長と転棟候補者をピックアップするという運用であった。

担当者の意見を聞くと、看護部からは以下のような意見があり、前向きな姿勢ではあるものの、転棟の判断・実行に苦労しているようであった。

「事務から報告される対象者が少ないような気がするし、『容態としては転棟できる』と提言しても、DPC点数が高いとか言われてしまう」
「リハビリも『単位数が多いから転棟させたくない』とか言うよね」
「転院の患者さんの転棟は在宅復帰にカウントできないよね?在宅復帰率を下げることになるから、転棟は避けた方がいいんだよね?」
「治療方針が決まらない患者を転棟させてしまうと、転棟してから検査とか入るとコストとれないよね。転棟してから必要度を満たすともったいないし……」

一方、事務は「主治医がDPCをなかなか決定してくれないので、日当点がわからない」「毎週200名弱の患者のデータを調べるのに労力がかかり、現場が疲弊している」と、判断に必要なデータ提供に苦戦している様子。
医師は「地域包括に転棟させると治療できなくなるでしょ」「入院診療計画書をもう一度作成しなきゃいけないんでしょ?二度手間は避けたい」と、そもそも転棟に否定的な意見が多かった。

意見を聞けば聞くほど、想定通りにはいかないことが判明。「シミュレーション上では効果が出るのに、みんなが思うように動いてくれない」とぼやくW医事課長であった…。

【設問】
  1. 今回のケースではどこに問題点があると思いますか?
  2. もし自分がW医事課長の立場ならどう対応しますか?
  3. 今後、同様の問題を避けるためにどのような対策・仕組みづくりが必要だと思いますか?

【解説編】はこちら

西・貴士(にし・たかし)
パナソニック健康保険組合 松下記念病院 管理課 兼 医療情報管理室勤務。大阪厚生年金病院の医事課にて10年勤務し、オーダリングシステム・電子カルテ・DPCの導入に携わる。医療系のベンチャー企業で3年勤務した後、松下記念病院の医事課に入職。医事課長を経て、2020年8月に現職。現在の担当業務は用度、情報システム、診療情報管理など。経営管理修士(MBA)、医療経営士1級、上級医療情報技師、診療情報管理士の資格を有する。(過去のインタビュー記事
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