裾野の広い事業展開で黒字化を目指す~事例でまなぶ病院経営 赤字体質からの脱却~vol.2

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多くの医療機関が赤字に陥っている昨今。病院経営はかじ取りが難しい時代となっています。健全経営を続けるためにはどのような点に留意していく必要があるのでしょうか。医療機関の経営コンサルティングに携わる専門家が、事例とともに医療機関の赤字経営になりやすいポイントと、解決策について解説します。
第2回目の事例は地域密着のケアミックス病院です。

解説者:加藤 隆之氏 株式会社日本M&Aセンター 医療介護支援部 上席研究員/中小企業診断士/経営学修士(MBA) 

目次

B病院(地域密着のケアミックス病院)の事例

【基本情報】

  • 地方郊外にあり、病床数は55床(一般病床28床 回復期病床27床 手術室1室)
  • 脳血管領域を中心とした、地域に根付いた病院運営
  • 常勤医師数は4人
  • 二次救急
  • 看護基準は入院料4
  • 脳血管リハⅠ(リハスタッフは10人)

【補足メモ】

  • 脳梗塞・くも膜下出血など救急症例については、常勤医師で対応を行っている
  • 脳腫瘍の開頭手術、脳血管内治療など予定手術については、患者に応じて大学病院から医師がきて対応しているが、症例数は少ない
  • 院長含めて医師達は「地域の脳血管領域の急性期医療を支えているのは自分達だ」という自負が強い

B病院で起きている経営課題

これまでは黒字経営を展開できていたが、一昨年に自院の5キロ圏内に三次救急を行っている公的病院が移転してきた。それ以来、救急入院症例が目に見えるように減少、コロナ禍による影響もあって昨年はとうとう赤字となってしまった。

院長が救急隊員に営業訪問をするものの、救急隊員からはお茶を濁したような返答しか返ってこない。救急症例が今後増えることは期待できないように思えた。「このままでは今後慢性的な赤字体質となってしまう」と危機感は募る。

幹部メンバー間では「今後、急性期医療を継続していく事は難しい」「中途半端な医療で今後のビジョンがない」といった意見が飛び交い、とある医師からは「急性期領域を辞めるのであれば、退職も考える」という声まで出てきた。

院長は「脳血管領域での急性期医療にこだわって経営していくことは難しい。抜本的な経営方針の見直しが必要ではないか」と考え始めている。

B病院の経営を改善するヒント

  • 老健や訪問看護などの事業を始めて、グループ全体での利益を上げていく
  • 法人の経営の要が、病院運営であるという意識を捨てる

【解説】

病院単体での経営状況は年々厳しいものになってきています。

特に中小の急性期病院であれば、その傾向はより顕著です。現在の診療報酬体系が、出来高病院には不利なものになっていることに加え、DPC病院であっても規模の大きい高度急性期病院でなければ、病院全体に配布される機能評価係数等が高いポイントはとれない仕組みとなっているからです。

さらに小規模なほど、人件費や設備機材などの固定費が相対的に高くなるので、中小病院が厳しい経営環境になってしまうのは、構造的に仕方がない部分もあります。

法人全体で、入院から在宅・介護までのサービスを提供

これからの病院経営にとって重要な考え方は、「一人の患者に対して入院から在宅・介護までのサービスを提供していける、裾野の広い事業展開」です。健診センター、急性期から転院させる回復期・療養期、さらに老人ホームや訪問診療、介護事業、訪問看護など、経営の幅を広げて、法人全体として利益を上げていくことが大切です。他法人からの事業買収も一つの手と言えるでしょう。

このとき、B病院のような急性期からの撤退という選択肢については、患者の流れをふまえて検討する必要があります。経営状態が悪いからと、基幹となる急性期医療を閉ざすことは、法人全体の崩壊にもつながりかねないからです。

規模の経済を働かせることができれば、病院単体では難しくても、法人全体では黒字化しやすくなります。例えば、「在宅診療が当院のバックベッドであり、収益の要となっていく」「病院は在宅診療を集めるための宣伝であり、緊急時の入院先としての意味合いが強い」とまで言い切れるほどの明確な変革が必要になってくるかもしれません。

職員の意識改革も重要に

この場合、職員の意識改革をどのように進めていくかも課題になります。特に「地域の急性期医療を支えてきた」という自負がある医師たちからの理解を得るのは難しい一方で、必要不可欠な事項です。医師は職員への影響力が大きいだけに、病院のビジョンをしっかりと伝えないまま、法人の方向性を変えていくと、医師発信で職員全体に法人のネガティブな印象が広がってしまうなど、悩みの種となってしまうかもしれません。急性期病院とバックベッド、それぞれの役割について、職員と膝を突き合わせて伝えていく事が大切ですね。

また、こういった場合、サービス同士の連携ができていることが前提となります。連携を深め、患者の流れだけでなく、人員の活用や共有、コスト削減活動を積極的に行うことも忘れてはいけません。

【筆者プロフィール】

株式会社日本M&Aセンター 医療介護支援部 上席研究員 加藤隆之
中小企業診断士 経営学修士(MBA)
「事例でまなぶ病院経営 中小病院事務長塾」 著者
病院専門コンサルティング会社にて全国の急性期病院での経営改善に従事。その後、専門病院の立上げを行う医療法人に事務長として参画。院内運営体制の確立、病院ブランドの育成に貢献。現在は日本M&Aセンターで医療機関向けの事業企画・コンサルティング業務等に従事する傍ら、アクティブに活躍する病院事務職の育成を目指して、各種勉強会の企画や講演・執筆活動を行っている。

病院経営に関するご相談、事業承継に関するご相談は、
株式会社日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/)まで(代表:0120-03-4150)

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