【第27回】仕事で求めるのは結果だけ?「プロセス」も無視できない理由があります―事務長の悩みは99%解決できる

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野々下みどり(ののした・みどり)

株式会社LHEメディカルコンサルティング代表取締役。熊本大学法学部を卒業後、約20年間にわたり社会医療法人社団シマダ 嶋田病院に勤続。その間、医事課長、診療情報管理課長、情報システム課長、診療支援部長、企画広報部長を歴任。2018年、医療福祉の経営コンサルタントとして起業し、現職。医療経営・管理学修士(九州大学大学院医学系学府)、診療情報管理士指導者の資格を持つほか、日本診療情報管理士会評議員などを務める。

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「大事なのはプロセスですか?結果ですか?」

先日、人材育成やスタッフへの指導方法、事務部の雰囲気づくりに悩んでいらっしゃる事務長と面談をしていたら、最後に尋ねられました。

「大事なのは、プロセスでしょうか。それとも結果でしょうか」

私はしばらく考えて、「仕事ですから、やはり結果です」と答えました。

3年前までの病院勤務時代の私であれば、「結果」と即答していたところです。しかし、当時の人材育成や人との関わり方を猛省している今の私は、「ただし……プロセスも大事です」と加えました。

ちょうどこの出来事があった頃、このコラムの読者の事務長からコメントをいただきました。その中にも「スタッフに、どうしてもまず結果を求めてしまう」というお悩みが……。プロセスか結果か――。私の答えは「結果」が最も大事であることに変わりないものの、プロセスについての考えもお伝えしたいと思います。

契約は取れるが勤務態度が悪い営業マン、どう評価しますか?

ここに、2人の営業マンがいたとします。

  1. 人柄がよく、真面目で周囲から愛されるが、要領が悪く、今月1件も契約を取ることができなかったAさん
  2. 勤務態度はよくないが、要領はよく、今月5件の契約を取ったBさん

会社に評価されるのはどちらの営業マンでしょうか。

どんな職種でも、報酬を得ている以上はプロです。プロは、「結果」を残さなければなりません。求められるのは当然、良い結果。要するに成果です。契約(売上)を獲得することが求められる営業マンとしては、Bさんの評価が高くなると思います。

しかし、組織全体の成果を考えるとどうでしょう。Bさんのような営業マンがいたら、職場の雰囲気が悪くなり、他の社員の士気が下がるかもしれません。Bさんは会社全体の営業成績、つまり他の社員の営業成績にどう影響しているか、という点まで考えたいものです。

強い組織をつくるためには、「結果」だけでは不十分

事務長には、「成果」を生みだすスタッフそれぞれの管理が求められます。管理とは何か?以前もこのコラムでお伝えしましたね。「スタッフのベストコンディションを維持し、最高のパフォーマンスを出せる舞台をセッティングすること。スタッフや環境を、常にいい状態にしておくこと」です。

私はさきほど「仕事にはプロセスも大事」とお話しました。ここで言う“プロセス”とは、単純に、結果にたどり着くまでの工程・スケジュールを指す訳ではありません。この「個々のスタッフの状態管理」も含めてのプロセスです。仕事は、結果が一番大事。でも、良い結果に導くための環境を作れているかも重要だと思います。

先程の営業マンBさんを「契約が取れる人」として評価するだけでは、ほかのスタッフのパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。事務長には、各スタッフが最高のパフォーマンスを発揮できる状態にあるかということにも、注視していただきたいのです。

全員が同じことをしても、同じ結果は生まない

では、スタッフそれぞれが最高のパフォーマンスを発揮できる組織をつくるにはどうすればいいのでしょうか。

以前の私は「みんながオールラウンドプレイヤーになればいい。そうすることで組織が強くなる」と信じていました。誰かが欠けても他の人が仕事を代わることができるし、効率よく、一定の水準で仕事ができるから、と。

そのため、スタッフには、苦手なこと・できないことを減らせるような指導をしていました。スタッフにとってはチャレンジ・自己啓発のきっかけになるため、必ずしも間違っていたとは思いません。ただ、私のように負けず嫌いな性格ならプラスに働いたと思いますが、中にはネガティブに捉え、「これはできて当たり前なのか。できない私は劣っている」と苦痛に感じてしまう人もいたかもしれません。その状況はその人にとって、ベストコンディションとは言えませんよね。

実際、そのような捉え方をしているスタッフがいました。
先日、ある事務長から「指導すると態度が悪くなり、組織を険悪なムードにしてしまうスタッフがいる。話を聞いてみてほしい」との依頼があり、面談を行いました。そのスタッフは「私は、主任や先輩のようには仕事ができないので、いつも自信が持てません。指導されると『仕事ができない』と指摘されているようで、悲しくなり、感情的になってしまいます」と話していました。上司が「本人の成長につながる」としていた指導が、本人にとっては何もプラスに働いていなかったことがわかります。

さて、野球チームをイメージしてみましょう。
選手それぞれ、担当するポジジョン・役割は異なりますし、全員が同じように動いたとしても、みんなが同じ結果を出せるはずがありませんよね。選手一人一人が、どんな相手に、どんな場面に強いのか。各選手をどのように起用すれば、いい成果が出せるのか――。監督、つまり事務長は、まずそれらを見極める必要があります。

「事務長ism」を受け継ぐ“コーチ”を育てられていますか?

ただ、監督である事務長が、選手のスカウトから、2軍の監督、1軍の監督、試合の指揮、来年度の目標設定、オーナー(院長)とのやり取り、選手の評価、年棒の決定まで、全てをできるわけがありません。組織として進んでいくためには、「事務長ism」を受け継ぐコーチをどれだけ育てていけるかが大切になります。

私も、今、自分一人でできることに限界を感じているところです。

マインドやイズムを伝える、自分の代わりに何かを託す。それには時間がかかります。「自分がやった方が早い」と思う場面もあるでしょう。しかし、それでは他にやりたいことにまで手が回りませんし、組織も成長しません。

私も8月は、マニュアルの整備など、自分の中にある考え・やり方をアウトプットする月に決めました。今秋10月に新しくスタートする事業で、「人に託す」を試してみたいと思っています。

セミの声が秋の音色になりました。暑い夏の後にはゆっくり秋がくると信じていましたが、大雨が日本列島を襲い、新型コロナウィルスの猛威は増すばかりです。穏やかな日々は見えてきませんが、明るい「成果」を信じるしかありません。

スタッフの残す成果が、事務長自身の成果になります。スタッフのベストコンディションをつくりだすためにも、自分自身をベストコンディションに管理しましょう。

今日も明日も、堂々とかっこいい事務長でいてください。

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