相澤病院が進める人事制度改革-病院経営管理学会リポート

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地域中核病院として全国的に著名な相澤病院は、長野県松本市で1700名以上の職員を抱える502床の急性期病院です。全国でも数少ないJCI病院プログラムの認定を取得するなど、医療の質の向上に力を注いでいます。その相澤病院も、社会情勢の変化に合わせた方針転換が必要となり、人事制度などにメスを入れてきました。人事制度改革の現状を、同院人事部長の松岡浩氏が話します。
本稿は、病院経営管理学会の賃金・勤務条件委員会が「制度激変に対するわが病院の取り組み」をテーマに開催した会合(2015年2月)の模様を抜粋したものです。

≪話し手≫
松岡浩氏(社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院 人事部長)

“バリバリ急性期”に迫る大きな転機

相澤_01概要
当院の事例を、総額人件費に占める賞与の観点からお話したいと思います。

当院が位置する43万人規模の二次医療圏には、700床クラスの大学病院をはじめ、旧国立系の独立行政法人、公立系の病院などがあり、200床以上の比較的大きい病院が乱立する激戦区となっています。

当院はこれまで“バリバリの急性期”で、救命救急センターや、山岳遭難等の対応に有効な屋上ヘリポート、先進医療として陽子線治療などの環境を整えてきました。ところが、団塊の世代が75歳以上になる2025年を10年後に控え、急性期病棟の一部を回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟に転換するといった大きな転機に迫られています。

2014年6月には急性期病棟の45床を回復期リハ病棟に転換しました。8月にはさらに5床増床して50床に。そして現在、新病院を建設中で、地域包括ケア病棟の新設を視野に動いているところです。

15年間で変化してきた人事制度

社会背景や構造が大きく変化する中、当院は1997年にそれまでの年功序列型の人事制度を見直しました。現在は、職員の能力を公平に、かつ、根拠立てて評価することが求められるようになっています。そこで、職能資格等級制度、複線型人事制度、人事考課制度の3つを柱とする新人事制度を立ち上げ、それぞれを給与や賞与、退職金といった処遇に結びつけ、15年ほど運用しています。

この15年間で大きく変わったものの一つに人事考課制度があります。図1のマトリクスで、縦軸には何を以って評価するかという考課の項目、横軸にはどのような職位に区分して評価するかという被考課者区分を配置しています。
2年ほど前までは、(1)事業体や法人の業績、(2)部署の計画の達成度、(3)個人を評価するためのレポートや課題―を一緒にして考課していました。

図 1 2003年の被考課者区分と考課項目一覧(当日配布資料より抜粋)

図1 2003年の被考課者区分と考課項目一覧(当日配布資料より抜粋)

それを2013年以降に見直し、前述の(3)にコンピテンシー(役職者の行動特性)の要素を盛り込みました。こうして、さまざまな評価をまとめて考課していたものを、業績に関する項目での評価に一本化して考課することにしました=図2=。カッコ内の数字はそれぞれの項目が占めるウェイトになっています。

図2 2013年の被考課者区分と考課項目一覧(当日配布資料より抜粋)

図2 2013年の被考課者区分と考課項目一覧(当日配布資料より抜粋)

整理すると、それまでの人事考課を業績考課と能力考課に区分しました。業績考課は、1年度の通期で評価し、その結果は賞与に反映します。これに対して能力考課は、通常言われる人事考課に該当し、共通職能要件書と部署ごとの職能要件書に基づいて評価しています。これによって職能資格の等級が決定され、給与に反映されます。

「賞与は予算通りに支給されるもの」からの脱却

当院では、この10年ほどは職員採用に力を入れて、今では1700人規模にまでなりました。職員数が伸び、人件費も上がるとともに、収益もある程度は順調に伸びてきました。

しかし、少子・高齢化や医療制度の激変がある中、これまで通りの体制で病院が増収し続けられる保証はありません。こうした状況下で、病院の収益を確保し、患者に継続して医療提供することを死守しなければいけません。それだけでなく、職員に一定水準の給与を支払うことも求められます。
端的に言えば、収益と給与費のバランスを調整する必要があり、賞与がそのカギになるのではないかと考えています。当院では予算編成期に収益を見積もりますが、実際は見積もりよりも伸びる場合もあれば、減少する場合もあります。これに対応して月例賃金を変えるわけにはいきませんので、賞与を調整弁として活用します。収益が減少したときにはその分を賞与で圧縮、逆に収益が増加したときには賞与を増加させるのです=図3=。

相澤_04業績連動型賞与の考え方

図3

ここで触れておきたいのは、賞与の捉え方が、経営者と職員の視点で大きく異なるのではないかと言われることです。これはあくまで一般論ですが、経営者の視点で賞与とは「利益の分配」であり、そのほかに「貢献に対する報奨」「生活費」としても見ています。それに対して職員視点では、第一に「生活費」という見方をして、そのほかに「労働力に対する対価」や「自分の価値に対する指標」といった考え方があるようです。

そのような中で、当院では「自分たちで稼いだものが賞与になる」という考え方をしています。賞与規程には何が賞与原資となるか具体的に明記し、職員にオープンな情報となっています。そのようなこともあり、徐々にですが、職員の意識も「予算通りに当たり前のように支払われるもの」という考え方から脱却してきているのではないかと思います。

職員のモチベーション維持が経営サイドの使命

職員の考え方が変化してきているとはいえ、業績連動型賞与は職員にとってシビアな話です。そればかりでは職員のモチベーションが下がってしまいますし、定着しません。したがって、当院では人事制度を抜本的に改定しようと動いています。
たとえば、一定の等級までの自動昇格や、小幅であっても長期的に昇給する安定的な賃金表への組み直し、ワークライフバランスの取り組み強化など、モチベーション向上につながるような施策を並行して考えています。

最後になりますが、めまぐるしく変わる社会情勢の中、病院の経営環境が従来のまま続くことはないでしょう。長期的な将来を見据えた対応が必要ですが、賃金は一方的に下げるわけにはいきません。代わりに、職員の働きがいやモチベーション維持も考えるのが経営サイドの使命です。経営と職員のどちらが大事かといった極論ではなく、双方のバランスが取れるように工夫と努力が求められています。

今日は儲かったときに賞与を支払うという当たり前の話をしましたが、そんな当たり前のことを実践していく大切さをお伝えできていればと思います。

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