ヒーロー型リーダーシップの限界とは?―前編―医師への選択、医師の選択【第35回】

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著者:野末睦(あい太田クリニック院長)

 
質問:これから求められるリーダーシップの形とは何でしょうか?
※編注:質問に対する「私的結論」を次回掲載します。

 病院で、あるいはその組織で、何か解決しなくてはいけない課題が持ち上がった時に、「よし。それは俺に任せておけ」と言って、院長や組織のリーダーが自ら乗り出して解決していき、そのことによって職員の尊敬を集め、強いリーダーシップを発揮していく手法は「ヒーロー型リーダーシップ」といいます。

このタイプのリーダーシップは、その組織が発展途上の時、危機を迎えた時などに、最初に取り入れるには最強の手法ではありますが、組織の規模が大きくなったり、組織自体が安定期に入った時には、むしろ破たんしやすいのも特徴です。とかく、リーダーは「ヒーロー型」になりがちで、「どうだ。こんなふうに解決していくんだ。だから、これからもおれの判断に従うんだぞ」と自己陶酔の領域に入りがちです。わたしが院長を務めていた庄内余目病院は、徳洲会グループの病院でした。グループを率いていた徳田虎雄氏がALS(筋萎縮性側索硬化症)に罹患しつつも、強いリーダーシップをとって、そして最後には、家族間の後継争いなどから露見した、公職選挙法違反などで、とても残念な状態になっているのは、皆さんご存知だと思います。彼はまさに、ヒーロー型のリーダーでした。わたしは、そのリーダーシップに対して感じたことを院長在任中、徳洲会の機関紙「徳洲新聞」に投稿したので、少し引用したいと思います。

職場文化とのギャップ

 わたしが徳洲会に入り、庄内余目病院の院長になってからちょうど8年が経ちました。この間、医師不足などで大変な時期が続いていますが、何とか乗り切ってきており、それなりの評価をしていただいているように感じています。しかし、個人的なことをもう少しお話しすると、実は院長になって5年ほど過ぎたころからごく最近まで、わたしの心はあまりいい状態ではありませんでした。疲れがたまっていたせいもあるかもしれませんが、それ以上に徳洲会の文化に漠然とした違和感を感じていたからだと思います。それがボディーブローのようにわたしを蝕んでいたような気がします。徳洲会は、3歳の弟さんを亡くしたという徳田理事長のつらい経験からスタートしています。そして病院建設時の医師会との確執、衆議院選挙での壮絶な戦い、そして最近では修復腎移植を巡っての厚生労働省や移植学会との戦い。そして、徳田理事長の著書の中に「頭の悪いやつほど成功する」があり、土日も働いて、無理な努力、無駄な努力、無茶苦茶な努力を期待し礼賛する文化。このような徳洲会文化の中でがんばって、貢献していこうとすればするほど、そして徳洲会に深く関わろうとすればするほど、わたし自身の心の奥底のつぶやきとのギャップがどんどん拡大していったのです。

≫次回に続きます≪

野末睦(のずえ・むつみ)

初期研修医が優先すべきこと1―医師への選択、医師の選択(野末睦)筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。

 

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