著者:野末睦(あい太田クリニック院長)
もう一つ心がけていたことは、よい変化をもたらすような情報を獲得する前向きな好奇心を持ち、実行していくことです。
毎朝の15分間で大きな変化を巻き起こす
情報を得るために、まずは常勤の医師との面談を定期的に行いました。幸い、余目病院には全国から優秀な医師が集まってきていたので、それぞれなにか新しいものを持っていたり考えたりしていました。そこで毎朝の15分間を常勤医との一対一の面談にあてて、その医師が考えている新規プロジェクトを掘り起こしていく努力をしました。
そして、そのプロジェクトが形になってくると、病院の広報部隊を動員して講演会を開催したり、前回ご紹介した病院広報誌の「Something New」コーナーで取り上げたりして、広報を推し進めていったのです。コンセプトの形成、そして仕組みを作って、最終的に職員などへの委託を心掛けたのです。
余談ですが、この朝の15分間の面談は、各医師の病院への不満がたまって爆発する前に、それを聞き出すことができ、病院側と各医師との良好な関係を維持するためにも非常に役立ちました。
変化には、他者の力が必要
さらに、学会からの情報や、企業からのダイレクトメールについても注意を払うように努力しました。この点で非常に大きな成果を挙げたのが、難治性の傷を治すことに特化した「創傷ケアセンター」の立ち上げとその発展です。後ほどこの創傷ケアセンターについては特別に取り上げる予定ですが、このセンターが発展できたのは取り扱う疾患の特異性によるものも大きいのですが、むしろそれ以上に重要な点は外部からのコンサルテーションによる運営だったということだったと考えています。日本では、診療内容に関しても扱うコンサルテーションは皆無と言っても過言ではないかと思うのですが、その点でこの創傷ケアセンターは画期的でした。
やはり、どんなに優秀な人でも、ひとりで考えたり、実行したりすることには限界があります。ですから、広く情報を集めて、いいと思うことは、多くの方の力を借りて、あるいは中心となる人物を決めて、任せ、実行していくことが、変化をもたらしていくキーポイントだと思います。
「病院が新しいことを取り入れ続けるには何が必要でしょうか?」への私的結論
常に新しいものを取り入れていくことが必要で、そのための仕組みづくり、情報収集が大事。そして外部組織も含めて、多くの人の協力を仰ぐことを心がけましょう。
野末睦(のずえ・むつみ)
筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。