生き残りをかけた病院ホームページ 〜選ばれるためのホームページとは〜―病院マーケティング新時代(5)

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本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣がオムニバス形式で、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報について解説します。

検索エンジンを介して患者に選ばれる病院webサイトとは

著者:竹田陽介(たけだ・ようすけ)/病院マーケティングサミットJAPAN President
株式会社Vitaly 代表取締役

昨年3月の“病院マーケティングサミットJAPAN2018”のweb広報セッションで発表された全国病院webサイト訪問者数調査(※)では、大規模の病院ほどwebサイト訪問者数も大きくなる一方、規模が同等な病院であってもwebサイト訪問者数は大きく異なることが報告されました。興味深いことに、従来の知名度には必ずしも一致しない分布が認められており、提供する医療や地域に差がなくとも、インターネットでの注目度はすでに大きな差が生じています。
※Vitaly先端医療コミュニケーション研究所調べ

web広報が本当に“病院の生き残り”を左右する時代がやってくる可能性も十分あります。なぜなら、スマートフォンの普及でwebを利用しやすくなっており、今後、webサイト注目度の病院間格差はますます拡がることが予想されるからです。本稿では、病院webサイト訪問者数を大きく左右する検索エンジンに焦点を当て、患者から選ばれる病院webサイトを作るためのエッセンスをお話します。
現在、日本国内における病院webサイト訪問者の8割以上が検索エンジン経由(※1)であり、また健康や医療について調べる方法の7割以上が検索エンジンです(※2)。
※1 Vitaly先端医療コミュニケーション研究所調べ
※2 総務省調べ

検索エンジン(Google, Yahoo!, 他)を用いた情報検索は、もはや現代人に根付いており、病院web広報においても適切なSEO(Search Engine Optimization。検索エンジンに表示されやすくすること)対策を行うことが重要です。従来は「地域+診療科」のような検索ワードが病院のSEO対策で重視されていましたが、最近はスマホ普及とともにユーザーの検索行動が変化し、まるで話し言葉のような多様な表現で検索ワードを入力することがわかってきました。特にユーザーにとって最も検索頻度の高い医療系検索ワードは「症状」であり、患者はファジーな検索ワード(専門用語ではなく自分の知っている言葉や表現)を用いて健康・医療情報を検索しています。

「胸痛」の被検索回数/3ヶ月が約5600件にとどまったのに対し、患者目線の文章型ワード「胸が痛い」の被検索回数は7万件を超えています。「胸痛」で検索順位1位をとるためにWikipediaと争うより、「胸が痛い」「胸が苦しい」「心臓 痛い」などの多様な表現で、上位順位を複数とったほうが遥かに効率的にweb集客できますし、スマホ普及に伴って今後は益々「症状」での検索ボリュームが大きくなることが予測されます。

文章型の症状ワードで検索上位に表示されるためには1記事(ページ)あたりの字数も重要です。いくら被検索回数の多い表現を記事タイトルに設定しても、記事内容がスカスカで文章量が少なくては、検索エンジンからも評価されません。検索エンジン集客を狙うためには1記事あたり1500字以上のボリュームが求められます。単純に字数が多いだけが全てではありませんが、専門医が執筆した十分なボリューム(3000字以上)の記事は病院webサイトの検索エンジン集客を大きく改善することも期待できます。

また近年、検索エンジンも健康・医療情報の情報源として病院webサイトなどの医療専門職から提供された情報を優先的に表示するようになりました。検索エンジンがまさに「病院びいき」になったことを示しており、かつて「キュレーションサイトの誤った情報による健康被害」が問題となったことを受けた変化と言えます。

患者はスマホ、検索エンジンを用いて「自分目線の言葉」で健康・医療情報を調べています。1つの医学ワードだけで検索順位1位に表示されるような「順位至上主義のSEO対策」ははなく、「~~が痛い」などの文章型の症状ワードで検索されることを念頭に置いた「患者目線のSEO対策」を行うことが、検索エンジンを介して患者から選ばれる病院webサイトになるための第一歩と言えます。ぜひ自院webサイトのSEO対策に「患者目線」を取り入れていただければ幸いです。

医療機関ホームページはスマホから見られています

著者:小山晃英(こやま・てるひで)/病院マーケティングサミットJAPAN Academic Director
京都府立医科大学 地域保健医療疫学
京都府立医科大学附属脳・血管系老化研究センター 社会医学・人文科学部門

多くの病院でホームページを利用されていると思いますが、スマートフォン対応はお済みでしょうか?現代は、スマホ時代とも呼ばれるように、人々はスマホを通じて得られるインターネット情報を日常生活の大きな情報源として利活用するようになりました。世界の200万以上のwebサイトから算出された訪問者変遷を見てみると、今まで主流であったパソコン(PC)からのwebアクセスが、2016年にはスマホ(Mobile)からのアクセスに追い抜かれたことが認められます(図1)。

それでは、日本の医療機関ホームページにおける、訪問者の使用デバイスにはどのような変化があったのでしょうか。
2017年から竹田陽介先生と展開している調査研究、「全国病院webサイトユーザー行動分析」のデータを用いて、国内医療機関ホームページ訪問者の使用デバイス、(PC、Mobile、Tablet)比率を検証しました。2017年2月から2017年7月まで(6ヶ月間)の使用デバイス比を算出したところ、約6割がスマホで医療機関ホームページを閲覧していることが認められました(図2)。

また、グーグルは、Mobileに最適化させたwebサイトを優遇しています。つまり、スマホでの表示が遅かったり、見づらかったりするwebサイトは検索順位が下がってしまう可能性もあるのです。そのため、スマホでの閲覧を意識してホームページを充実させている病院ほど、スマホ由来の訪問が多いことが推測できます。

このようなスマホ時代の到来は、患者が医療機関を選択する時のweb検索行動にも影響を与える可能性があり、医療機関のホームページもスマホから見られていることを考慮すべきでしょう。

小倉記念病院はなぜ、ホームページコンセプトを「主役は街に暮らす人々」にしたか

著者:松本卓/病院マーケティングサミットJAPAN Executive Director
小倉記念病院 経営企画部 企画広報課

当院のホームページコンセプトは、「主役は街に暮らす人々」。TOPページは病院外観ではなく、地域で暮らしている方々のありのままを写真で紹介しています。ホームページを通じて地域へ貢献できればと半年に一度更新しており、現在は計48施設の方々にご協力いただいます。


ホームページで表示される写真(一部)。

現在のホームページへリニューアルしたのは2014年。
最初に念頭に置いたのは、「病院らしくないホームページをつくろう」ということ。それはなぜか。病院ホームページのイメージといえば、必ず病院の外観や風景がTOPに出てくる。言いたいことを詰め込みすぎている。美辞麗句で固めた言葉が並ぶ。これらすべては自院の自慢です。私たちは「安心して暮らすことのできる、そんな幸せな地域づくりに貢献したい」という想いを違った形で発信できないか検討しました。しかし「地域のために」という言葉はどこの医療機関でもよく聞きますね。他施設と差別化できて、なおかつ、この想いを伝えるホームページとはどういったものなのか。そこでたどり着いたものが「主役は街に暮らす人々」です。その意図を簡単に言うと、病院が地域の方々から愛されたいのなら、まず愛しましょう、ということですかね。

そして何よりこのホームページは、「他院がやらない新しいことに取り組む」小倉記念病院スピリットを表現できるものになったと思います。

完成して5年が経ちますが、掲載にご協力いただいた企業とコラボ商品を作るようになったり、市民公開講座のポスター撮影にご協力いただいたり、一緒に市民公開講座やってみたり、健康講座を社内で開催する際には当院の医療従事者を呼んでいただけたりと、地域社会とより深くつながれるようになったことは、大きな副産物です。

タグラインを作成

ホームページリニューアルの際に、タグラインも作りました。
タグラインとは、コスモ石油の「ココロも満タンに」といった、キャッチフレーズみたいなものです。ホームページTOPは地域の方々に登場していただいていますが、当院の想いも同時に伝えるために必要でした。

理念を全面に出す病院が多いと思いますが、正直、全国の病院理念の8割は同じことを言っていると思います。そして、その理念に生活者は関心がないということも事実です。もちろん、その病院で働く職員にとっては指針になるので、必ず必要なものではありますが、それを生活者に押し付けるのは間違っています。

当院は、他院と代わり映えしない理念を出すよりも、生活者に響くタグラインで当院の想いを伝えたかった。

そして出来上がったのが、「いつもの暮らしに、いつものあなた」です。
ホームページで地域住民を前面に出していることとマッチしていますし、タグラインでも生活者を主役にできたかと思います。現在ではロゴマークにも使用し、オフィシャル化しています。

グーグルアナリティクスから見えたホームページの役割

新たなホームページからグーグルアナリティクス(webアクセス解析ツール)を利用し始めました。出てきた解析結果を見て個人的に注目したのはgoogleやyahooなどの検索エンジンから入って来られる方が80%以上であること。そのほとんどが「小倉記念病院」(いわゆるブランドワード)と入力していること。

この傾向はどの総合病院でも同じではないかと予想しています。しかしSEO対策が成功している病院では症状などの検索ワード(いわゆるビッグワード)が病院名よりも上位にくることもあると思います。

WebのSEO対策は私も悩んでいる部分ではあるんですが、これは全国放送のTVに似てると思っています。「全国TVで放送してもらっても東京の人が北九州には受診に来ないだろ」と言う人もいますが、「福岡の人間は全国TVは見ないのかよ!! むしろ全国TVを見ている時間の方が長いだろ!!」と思うのです。「動悸がする」と検索するのは東京にもいるし、福岡にもいる。

なので、ブランドワードとビッグワードどちらからの流入も多いに越したことはないと思います。しかし、マーケティング実務担当者として、webを充実させるために時間を割くことが難しい部分もあります。

小倉記念病院では、マーケット範囲の地域でweb以外のタッチポイント(講座・口コミ・メディア露出・広報誌・SNSなど)に多く触れてもらって、googleやyahooで「小倉記念病院」と検索してもらい、最終的にwebで口説き落とすというスタンスでいます。プロポーズする時の最後に出す結婚指輪のような感じですかね。でも結婚指輪を渡してOKしてもらうまでには、食事に行ったり、旅行に行ったり、コンサートに行ったり、結構長い歳月と手間暇がかかりますよね(妻が読んだら怒られるかな)。なので、当院ではこの手間暇の方に少し重きを置いているという感じでしょうか。

人的余裕があればwebも、それ以外のタッチポイントも充実させたいのですが、両方に対応できる病院は多くないと思います。病院によって状況は違いますので、人員が限られているからwebは特化していくという戦略もありだと思います。ただいずれの戦略にせよ、地域の方々から愛され、患者さんに選ばれるには、前述のようなホームページづくりは欠かせないでしょう。

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