「人手が足りない」と言われる中での人件費抑制、どう取り組む?【ケース編】:病院経営ケーススタディーvol.7

【K病院の幹部たち】
・理事長 兼 院長:68歳・男性。外科医。創業者である父から引き継ぎ15年目。
・理事:32歳・女性。理事長の娘で医師。K病院では勤務していない。病院経営に興味なし。
・副院長:58歳・男性。内科医。人柄はよいが病院経営には関心がない。争いを好まない性格。
・看護部長:58歳・女性。理事長にはあまり意見はしない。
・T事務長:45歳・男性。ボトムアップ型の経営改善コンサルティング会社に勤務していた。医療業界には精通していない。

T事務長はK病院の事務長として着任してから、理事長の依頼であった「トップダウン型の組織文化」から「ボトムアップ型の組織文化」への変革を意識してさまざまな取組みをしてきた。「自ら考える組織になるための意識改革」「職員満足度調査の実施」「職員一人一人がコスト意識を持つための仕組みづくり」……。もちろんまだ種まきの段階ではあるが、少しずつ院内の雰囲気が変わってきていることにT事務長はこの変革への自信を持ち始めていた。

そんな中、T事務長は理事長から依頼されている組織文化の変革だけでなく、事務長の役割として最も重要な収支の改善にも着目するようになった。病院の損益決算書はこれまで見てきた業態の中ではサービス業に近いものがある。とにかく全体の支出の中で人件費の占める割合が高い。医療というサービスを提供する原資が人であるのは当然であるし、経済産業省も医療はサービス業と分類をしている。とはいえ、K病院では人件費率(=人件費÷医業収益)は60%に近い値となっていた。

兎にも角にも、経営収支の改善のためには人件費の抑制が避けられない。そう感じたものの、入職まもない自分が医療職の人件費の話をすれば、現場の大反発を招くのは目に見えている。そこで、T事務長はまず医事課の勤務体制とその働き方について調べることにした。自分が管理している部署で実績を作ることができれば、他部署に対する説得力も増すだろう。

【医事課の体制】
・医事課職員:17名
・職員の内訳:課長、係長、外来担当5名、入院担当6名(うち主任1名)、受付4名
・平均残業時間:月間50時間

毎日大変です。残業時間も多いので、精神的にも体力的にもいっぱいいっぱいです。受付に、電話の応対、入退院の患者対応、レセプトの作成など全ての業務を行っています。

みんなでいろんな業務をしていますので、日中はレセプト業務に集中できません。結局、残業をしてレセプトの作成をしてしまっています。

最低限度ぎりぎりのシフトは作れないので少し余裕のある日などもあります。ですが、人員に余裕がある時でも、ぎりぎりのときと同じ業務量をその人数で分担しているため、結局残業は減りません。職員のことを考えると少しでも残業を減らしたいとは思っているのですが……。

T事務長自身は医事業務についてよく知らない。そのため業務のことなど口を出しにくいと感じる部分も正直あったのだが、人件費の問題はなんとかしなければならない。T事務長は「どこかに解決の糸口がないか」と熟考し始めた。

【設問】
  1. K病院の医事課では何が問題になっていますか?
  2. 今後、どのように医事課の体制を検討していけば良いですか?
加藤隆之(かとう・たかゆき) 40歳。下北沢病院(東京都世田谷区、一般病棟31床・回復期リハビリテーション病棟22床)事務長。病院向け専門コンサルティング会社にて全国の急性期病院で経営改善に従事。その後、「全国初の足と糖尿病の専門病院」下北沢病院の立ち上げに参画。中小企業診断士、経営学修士(MBA)、工学修士などの資格を有する。専門領域は病院経営、データ分析、組織マネジメント、コスト削減。※所属・役職は取材当時のものです

<編集:角田歩樹>

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