
地域の医療ニーズに幅広く応え、5つのクリニックを展開する法人が、これまで併設していなかった「皮膚科」を新たに開設しました。その際、採用されたのがエムスリーキャリアが提案する「患者来院型オンライン診療」です。従来の対面型ではなくオンラインという手法を選んだ理由、導入におけるシステム構築の工夫や運用のメリットについて、西高松グループの原憲昭事務長にお話をうかがいました。
「週2回2時間のスモールスタート」でも医師採用がスムーズに
ーーエムスリーキャリアの「患者来院型オンライン診療」サービスを知ったきっかけと、導入を決断された背景について教えてください。
私たちは香川県内で5つのクリニックを展開しています。外来患者さまに加えて、往診だけでも毎月800〜1000人ほどの患者さまがいらっしゃいます。これまで皮膚科は未着手でしたが、患者さまが抱える皮膚のトラブルに対して、皮膚科に精通した医師にアドバイスをいただける環境をつくることで、地域医療の質を高められると感じていました。そんな中、関連会社から「患者来院型オンライン診療」サービスの存在を教えていただき、「オンライン診療で立ち上げるのも一手だ」という話になったのです。
ーー通常の対面外来ではなく、「患者来院型のオンライン診療」の形式にはどんな利点を感じましたか?
利点の一つは、「スモールスタートが可能」という点です。私たちのクリニックでは「週2回、10時30分〜12時30分の2時間」という限られた枠での開始が理想でした。通常の対面診療の場合、この条件での医師募集はかなり厳しいと言わざるをえません。しかし、オンライン勤務であれば、短時間の枠でも先生方に応募していただきやすいというメリットがありました。また、初期投資が安く抑えられる点も経営層としては大きな魅力でした。院内に専用のオンラインブースを設けるだけでスタートできます。
そしてなにより、私たちが得意としている「検査」と、オンライン診療の相性が良かったことが決め手でした。患者さまはクリニックに来院してくださるため、現場の看護師が血液検査や皮膚観察用デジタルカメラでの撮影、細胞診検査などを行うことができます。医師が遠隔地にいても、対面と同等の検査情報をもとに診断を下せる「患者来院型」のスタイルは、当院の強みを活かせる合理的な仕組みだと考えました。
「臨場感」にこだわった患者目線でのシステム構築
ーーオンライン診療の体制整備はスムーズに進みましたか。導入に際して不安だった点や工夫された点について教えてください。
どのようなシステムを組めば良いのか、遠隔の医師がどのようにカルテを操作し、患者さまにどのように画像を見せて説明を行うのかについては頭を悩ませましたね。
私たちが工夫した点は、システムの接続方法です。遠隔操作ソフトを利用し、医師には当院のオンライン診察室にあるパソコンの中に直接アクセスして操作していただく設定にしました。クラウドカルテのアカウントや電子証明書を付与するほうが導入は簡単でしたが、あえてこの形は採用しませんでした。セキュリティ面での懸念があるだけでなく、当院の皮膚観察用デジタルカメラで撮影した画像や血液検査の結果を、患者さまに見せる際にラグが生じるからです。
対面診療と同じような臨場感を出すためには、顔を合わせるだけでなく、医師が操作している画面を共有できる仕組みが必要不可欠でした。遠隔操作形式にすることで、医師がどこを操作しているかが画面上のカーソルの位置でわかるため、院内LANで繋がる検査結果や画像、読影レポートの見方、カルテの操作方法などの初期説明がスムーズでした。
「画面越しでのトーク力」という独自の採用基準
ーー皮膚科の立ち上げにあたり、どのような医師を求めていらっしゃいましたか。採用プロセスについても教えてください。
実は、皮膚科の診療だけでなく、内科の「健康診断の結果説明」もオンライン診療でカバーしたいという目的がありました。当院の内科医が忙しく、健診結果の説明に十分な時間が取れていなかったためです。皮膚科と健康診断の結果説明、両方の業務を担当できる医師という条件で募集しました。
採用において重視したのは、「画面越しでもわかりやすい話し方」と「親しみやすい笑顔」です。オンラインという性質上、一生懸命さや専門知識だけでは患者さまに安心感を与えるのが難しく、対面診療以上に声のトーンや話し方、表情が重要になります。実際に、専門スキルは申し分なくても、トーク力の観点からお断りさせていただいたケースもあります。現在の先生は非常にお話が上手で、画面越しでも患者さまに安心感を与えてくださっています。
採用プロセスについて感じたことは、面接設定がスムーズに決まることです。対面での面接よりも日程調整がしやすく、オンラインツールを使ってすぐにお話しすることができます。細かい点では会議室の準備などが不要になり、採用のリードタイムや手間は削減されたと実感しています。
「オンラインだからこそ本音を話せる」想定外の成果も
ーー稼働を始められてから約1ヶ月が経ちました。現状をどのように評価されていますか。
皮膚科については、まだ始めたばかりなので手応えが出てくるのはこれからだと考えています。とはいえ、除々に若い年代の方が皮膚トラブルの相談に来てくださるようになっており、軽症で処方をメインとする患者さまがリピーターになってくれる可能性を感じています。当院のオンラインブースは、一般の待合室とは別の2階フロアに設けているため、他の患者さまと顔を合わせる機会が少ないです。こうしたプライバシー面も若い方に受け入れられやすい要素になっていると思います。今後も引き続き認知を広げていきたいです。
ーー健診の結果説明においてもオンラインを活用されているとのことでした。そちらの反応はいかがでしょうか。
健診の説明に関しては「オンラインのほうが対面よりも適しているのではないか」と感じるほど、良い成果が出ています。対面の診察室だと、医師を前にして萎縮してしまい、ご自身の心配事を口に出せない患者さまが多くいらっしゃいます。
しかし、「オンラインブースで画面越し」という環境だと、なぜか患者さまがよく話してくださるのです。目の前に医師がいないからこそ、落ち着いて自分の意見や不安を言えるのかもしれません。その結果、「丁寧な診察を受けることができた」と喜んでくださる患者さまが多く、患者満足度の向上に貢献しています。常勤の内科医の業務負担軽減にも直結しており、この点だけでも導入して良かったと感じています。
ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。
今回立ち上げたオンライン皮膚科については、まず既存の患者さまへのご案内を強化し、日常的な皮膚トラブルの相談窓口として定着させていきたいと考えています。そして、ゆくゆくは当院の画像診断クリニックへの展開などにも繋げていければ理想的です。
また、健診のオンライン結果説明で得られた「患者さまが本音を話しやすい」というメリットは、今後のクリニック経営においてヒントになりました。これからもこの「患者来院型オンライン診療」のスタイルを活用し、医師の働き方改革を進めながら、地域の方々へ質の高い医療サービスを提供し続けていきたいと考えています。











