病院事務職員の転職活動記(7):企業立の医療法人との面談

前回までは、転職コンサルタントとの面談や求人情報のチェックなどを通じて知ったこと・思ったことをまとめてきましたが、ここからはようやく具体的な転職活動の話に移ります。

初めての転職活動は企業立の医療法人

実は、エムスリーキャリアの事務職紹介以外にも、転職エージェントとして有名な某社に登録して医療機関系の求人情報がないかをチェックしていました。
今回はその中で「面談確約スカウト」として届いた医療機関の面接のお話です。
もちろんここでは法人名は伏せますが、事前にもらったメールやホームページの内容だとこんな感じです。

  • 株式会社で構成される医療グループで、3県で総合病院を運営
  • 医療グループの中で、予防診療を行うクリニックを多く運営している
  • 総合病院のほかにも、高齢者住宅事業や医療周辺事業・介護事業・コンサルティング事業などを運営
  • 近年は海外事業も展開

「法人向けヘルスケアの提案営業職(幹部候補)」として面談をしたいです、という内容で、まずはお話だけでも聞いてみたいなと思い、アポイントを取りました。

面談で相手を知るつもりが…

職務経歴書と履歴書は準備していましたが、「面談」と聞いていたので、まずはどのような企業かを色々と聞かせてもらおう…と思いその法人のオフィスに向かいました。

人事担当の2名の方とお話をしたのですが、簡単な自己紹介が終わると渡した書類を見ながら…
「うちではどのような仕事をしたいと思っていますか?」
「これまでの経歴がどのようにうちの会社で活かせると思っていますか?」
「あまりそういう仕事はないですが、大丈夫ですか?」
と質問攻め。

……えっ、これって面談じゃなくて面接では!?

新卒採用しか知らない自分にとって、初回に企業の人と会う=相手を知るというイメージだったのですが、今回の面談、ではなくて面接では、先方は企業紹介のスライドもなく、いろいろと私のことを聞いてきました。転職活動は初回に会うまでに下調べをして、向こうの企業で何やりたいかをプレゼンするようにしないとだめなのね…と、転職活動の基本中の基本を失敗から学んだ面接でした。

「法人向けヘルスケアの提案営業職(幹部候補)」というカッコいい肩書は、そのグループが持っているクリニックのための営業部隊ということが判明し、終始話がかみ合わないまま面接は終了。「興味があればまた連絡してください」と、最後にはなぜか突き放され、ほろ苦い転職活動デビューとなりました。

面談で聞かれたこと

「あなたはこの企業でどのような仕事ができるのか?」

当たり前ですが、まずこの点を聞かれました。

自分は医療連携の仕事を経験しておらず、集患営業の経験もないので、その点をかなり突っ込まれました。提携する法人を増やすための営業職が足りていないという現状であり、医療法人も営業部隊を欲しがっているのだなぁーと感じました。

営業相手はクリニック・検診事業メインだったので、「医療」の経験よりも、「営業の即戦力」が重要視されているようでした。

また、「医療法人の管理部門のような仕事はありますか?そのような仕事に興味があるのですが…」と聞いてみたところ、管理部門は中途採用がほとんどで、かつ各部門を業界のプロ(コンサル、金融、商社など)で揃えており、病院業界経由で管理部門に入る職員はあまりいないとのこと。見習い的なポジションからなら、また別選考検討しますよと言われる有様でした。

「大学を卒業して、なぜ新卒で病院に入ったのですか?」

こちらは、新卒の就職活動の時にどのような思いで病院に入ったのか、入ってみてどのように感じているかを聞かれました。大学を卒業後に、新卒で病院の事務職になるキャリアが珍しいので、そこを確認したかったようですが、自分の持っている問題意識や現状認識を話すとそこは納得してくださったようでした。

転職活動で意識すべきポイントとして、今の会社に入ろうと思った時の考え→働いてみた感想→今後やりたいこと、のストーリーをきちんと練る必要があるのだと感じました。

ほろ苦い転職活動デビューから学んだこと

ということで、全然的外れな転職活動初戦でしたが、面接を通じていくつか学んだことを最後にまとめます。

(1)自分が興味を持っているのは、医療ビジネスではなく医療機関の経営

「医療」と言っても本当に様々な切り口での仕事があり、その中で自分がどこに関わりたいのか、ということは明確にしておく必要があると思いました。

今回受けた医療法人は企業立で、一番の稼ぎ頭である企業向けの健診クリニックの運営に力を注いでいる印象でした。それ自体の良い悪いは個々人の判断ですが、私としては、急性期の総合病院で見てきた医療現場の重要性と、非効率・経営難の病院業界を知る立場から、やっぱりもっと「医療」要素の強い医療機関の経営に関わりたいなぁという思いを新たにしました。

(2)自分の強みを明確にしておく

上述の通り、こちらの医療法人の管理部門は他業界からの転職者が多くを占めており、その中であなたは何ができますか?という点を聞かれました。

「医療機関」というよりは「民間企業の管理部門」のような仕事内容なので、例えば「予算管理やったことはありますか?」「B/S、P/Lとか見れますか?経験は?」など、コンサル・金融系の業種からの転職者とも渡り合える力を問われており、ここに自分はマッチしていませんでした。

医事課での業務を通じた診療報酬への理解や患者サービスの経験、院内の業務改善や医療安全・質の向上に携わった経験は、この医療機関ではあまり受けが良くなかったです(もちろん、受ける会社や病院によっては高く評価してもらえるはずです)。

『自分が病院経営に関わるうえで、何で勝負していくのか?それを裏付ける実績は?』という点をきちんと磨き上げ、そこを評価してくれるところに転職することが重要であり、いまの自分に足りていない視点だったなと感じました。

(3)経営のプロが医療機関を経営する時代がすぐそこに来ている

今回受けた医療機関は、前に触れたとおり管理部門は中途採用がほとんどで、各部門を業界のプロ(コンサル、金融、商社など)で揃えているようでした。このような経営体制は病院業界ではまだ珍しいと思いますが、今後はこのやり方が主流になっていく可能性は高いと思っています。

その中で、(2)で述べた自分の武器が何で、病院の経営体制に自分がどのようなポジションに入っていくかを考えながら仕事を選んでいくことが、今後の病院事務が持つべき問題意識であると思いました。

ということで、失敗から多くのことを学んだ、ある意味で実りある転職活動初回になりました。

(※本記事は、「病院で働く事務職のブログ」2019年3月7日掲載の記事を一部編集の上、転載したものです)

【プロフィール】
病院事務職歴7年。新卒で500床規模の急性期病院の事務職員として入職後、医事課入院部門、経営企画部門、医療の品質改善部門に所属。診療報酬請求や各種窓口対応などの医事業務から、看護業務改善や病院の機能評価受審の事務局担当といった院内プロジェクトまで様々な業務に従事。現在は再び医事課入院部門に所属し、医事業務全般に加え、医事課スタッフの採用・教育、監査対応や委員会の事務局業務にも携わっている。

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【シリーズ一覧】
(1)転職活動を始めたきっかけ
(2) 転職コンサルタントとの面談
(3)「デキる」医事課職員へのニーズの高さ(スタッフ編)
(4)「デキる」医事課スタッフへのニーズの高さ(管理職編)
(5)医事課以外の事務職員の転職市場は?
(6)転職活動を通じて考えた病院事務のキャリア
(8)クリニック経営支援のコンサル会社との面接
(9)公立病院の企画室との面接

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