インセンティブ給は「時代の流れ」医師給与の出来高制 賛成派の主張

給与の出来高制は、医師のモチベーションを高める効果が期待される半面、過剰診療の懸念や、診療科ごとの特性の違いによって、是非が分かれるようです。前回に引き続き、医師2238人を対象に行った調査から、賛成派・反対派双方の生の声をお届けします。

今回ご紹介する賛成派から得られた意見として最も多かったのは、「モチベーションアップになる」「やりがいにつながる」と言った声。現在「正当な評価を受けていない」という不公平感をのぞかせるような回答も目立ちました。一方、「どちらとも言えない」とコメントした医師からは、実績に連動した給与を求める声がある一方、そもそも給与の出来高制を、現場が納得できる形で設計できるかどうかに懐疑的な声が上がりました。

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備考: ご自身の診療科目において給与の出来高制を導入すべきだと思いますか。

グラフ2

調査方法:m3.com会員の医師にWEBアンケートを実施
回答期間:2015年5月23日―27日
回答:2238人(内訳:内科系1159人、外科系850人、その他229人*)
*なお、今回の調査における分類は以下の通り。
内科系:内科、内分泌内科、消化器内科、循環器内科、腎臓内科、呼吸器内科、神経内科、小児科、精神科
外科系:外科、消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、泌尿器科、整形外科、形成外科、脳神経外科、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、産婦人科、救急科
その他:病理科、放射線科、麻酔科

 

「導入すべき」と答えた医師(23.2%)のコメント=抜粋=

・どのような出来高にするかは問題だが、患者の処理速度の差が歴然であるということは、それに伴う労力および診察によって発生する責任にも差が歴然ということ。1例や2例の地雷患者による誤差を埋めるような形式で、能力給にするのは当然のこと(50代、内科)

・医師がさらに働くようになり、医学が発展し、さらに患者にためになる(60代、内科)

・何も出来ない低能なやつと一緒にされたくない。働くのが馬鹿らしくなる今の制度はダメだ(40代、麻酔科)

・手術に対する評価は行われるのが当然です。手術する医師としない医師の給与が同じなことは根本的におかしいことで、リスクのある仕事を避けた方が得だとする現在の状況を招いています。医師の善意だけでは成り立たない現状です(50代、整形外科)

・分娩に関しては出来高制を導入した方がモチベーションが向上する。年俸制だと、苦労して分娩にたずさわらなくても収入は変わらない。これでは、分娩をする医師、分娩医が減ってしまう(50代、産婦人科)

・忙しい診療科とヒマな診療科で給与格差を設けることは、インセンティブを上げるために有りだと思う(50代、整形外科)

「どちらかと言えば導入すべき」と答えた医師(25.3%)のコメント=抜粋=

・ある程度は導入しないと救急当直など、3Kな分野の担い手がいなくなってしまう。赤字を出しながらも体は楽な勤務体系の高齢医師のみが、現場の管理能力もないくせに、管理職として国公立病院に吹き溜まりのように居残り続ける。そのくせ、自分の給料の減額には、強硬に反対する。(50代、産婦人科)

・だらだら仕事をやっている医者と、一生懸命たくさん仕事をやっている医者の給与が同じなのは、どう考えてもおかしい。ただ、患者数だけで決まるものではないので、評価は難しい(50代、産婦人科)

・医師の能力に応じた給与を支払うべき。年功序列による給与の支払いは、おかしい(70代、内科)

・過剰診療となる可能性があることと、『出来高』に整合性があるかが問題だから。ただ、どうやっても不公平感はなくなりはしないと思われるので、試みとしては賛成(40代、内科)

・緊急手術対応や、残業で実績をあげたにも拘らずプラスアルファが出ないのと出るのでは、自分も含めてモチベーションが上がらないと思います。そんなに多くなくても良いので、若干の<お疲れさま的な報奨金>があると良いと思っています(年代、科目不明)

・時代の流れだから(40代、内科)

・出来高制には基本的に賛成ですが、仕事の全てが売上に反映されるわけではない点が問題です。大学病院か一般病院か、一人医長か複数人常勤医がいるのか、などでも求められる仕事の量や質が変わってきますので、万人が納得するように制度化するのは難しいかもしれません(30代、放射線科)

 「どちらとも言えない」と答えた医師(30.0%)のコメント

・「出来高」の「出来」を評価するのは非常に難しい。外来を何人診た、とか、手術点数を何点上げた、とか。やった診療の質を評価する事も患者さんの満足度を点数にする事も不可能だから(50代、整形外科)

・「儲けの山分け」的な考えのように見えます。私も若いころ脳外科医として年間2億3千万円を病院に稼ぎ出していました。ただ標榜科によっては、不採算に近いところもあります。それでも必要な科目です。「何」が「出来た」とするかが明らかにならなければ、制度としては難しいでしょう。暇な病院でも、ベッド数に応じた「医師数」を確保する必要があります(50代、脳外科)

・1.同一診療科での場合でも、医師の職務は複雑で、評価が難しい。入院患者を多く持てばいいかどうかは疑問。2.異なる診療科の場合は更に異なる仕事内容のため、評価が難しい。単に保険点数で評価すべきか疑問(50代、整形外科)

・外勤先が出来高制です。予約制なので、キャンセルが出た場合は減収に直結します。また、同じように診療しているつもりでも、月によって金額にばらつきが出ていて、いまひとつすっきりしません。細かな明細を示されればもう少し納得できます。予防接種や、検査をオーダーした場合10:0で施行医に行くのか、問診をした分は考慮してもらえるのかなども、明確にしてほしいです(内科、50代)

・何をもって出来高と評価するのか?麻酔科は麻酔料は手術料に合算されており診療保険点数での評価が困難。また手術が多ければ死ぬほど多忙になるが外科系の学会などで手術が減れば暇になる。引き受け仕事なので自分の努力で仕事を増やすも減らすも自由がない(50代、麻酔科)

・急患相手の診療科では収益が安定しない。一方で、不必要な手術を増やして収益を増やそうとしかねない。基本給プラス、診療成績に応じて、その分プラス、という成果主義でなければ、医療が荒廃する。開業医のみならず、勤務医までも金の亡者にしてはならない。医師の能力の評価が甘く、優秀で優良な医師に適切で十分な金銭的評価がなされていないことが問題であって、出来高制で解決する問題ではない(50代、脳神経外科)

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