病院の顔である事務・管理部門は、影で経営も支える重要なセクション。彼らの働きは医師の目にどのように映っているのでしょうか。今回、編集部では医師792名に「自院の事務・管理部門への満足度アンケート」を実施。半数以上が満足している一方、約4分の1は不満の残る結果となりました。
待遇、職場環境、スキルを総合的に評価
調査は、2017年3月11日―15日の期間に、m3.com医師会員を対象に実施し、回答した医師は792名でした。
調査結果では「満足している」が19.6%、「どちらかといえば満足である」が30.4%と、ちょうど50%の医師が満足と回答=図1=。前回調査(2015年実施)の45.3%から、4.7ポイント増加しました。
満足している具体的な理由としては、「仕事量と給与のバランスがとれている」などの待遇(16%※)、「自由に意見が言える」といった職場環境(13%)、「無駄な動きがなく報酬改定にも敏感」などのスキル(12%)があり、事務・管理部門の評価が多角的にされていることが分かりました。
※満足している医師に対する割合。以下、同じ。
また、勤務形態別にみると、勤務医の46.1%が満足感を覚えているのに対し、開業医では65.5%とより高い割合を示しています。その理由には「請求事務、患者対応、院内補整など、良くできている」とスキルを評価する声や、「自分で管理しているから」など事務部門に直接アプローチできることを挙げる声が多く寄せられました。
また、診察を行いながら管理責任者を兼任している医師52名のうち50名がポジティブに回答しており、事務・管理にもやりがいと責任を持って取り組んでいる医師が多いことがわかりました=図2=。
個人はスキルアップ、組織は働きやすい環境づくりが課題
一方、不満を抱く人は「どちらかと言えば不満である」(17.2%)、「不満である」(10.4%)を合わせて27.6%となりました=図1=。その理由として多く挙がったのは、スキル、待遇に続き、人事・採用についての悩み。「理事長と院長の意見が違う」「医師に人事任命権がなく事務が決めてしまう」といった、部門・役職が多くなりがちな病院ならではのコミュニケーションの難しさが明らかになりました。
本調査で挙げられた、満足していない理由トップ3は、前回調査(2015年実施)から順位が変わっておらず、事務・管理部門に対する医師の不満には根深いものがありそうです。こうした不満の解消に向けて求められるのは、「業務が遅い」「医師の勤務内容について理解が不十分」といった声に対する個々のスキルアップのほか、「明確な給与体系」や「労務管理の整備」など病院全体での取り組みであることが浮き彫りになりました。
満足している理由(抜粋)
1位 待遇(63人、15.9%)
- 時間外労働が少なく、休暇もとりやすい。(50代、循環器科)
- 働きやすい環境であり、給与にもある程度満足している。(60代、麻酔科)
- 仕事量と給与のバランスが取れている。休暇および学会出張に理解が得られている。(50代、脳神経外科)
- 交通・宿泊費などの事務的な事柄に不満がなく、また入り上がり時間や移動手段などの連絡調整が事前にうまくなされています。そのため、3カ月前には予定が確定し、急な変更がある場合は喧嘩にならないようお互いに相手の立場を尊重した丁寧な対応がなされています。ドタキャンなどの経験もなく極めて良好な勤務をさせていただけていると感じています。(40代、血液内科)
- 自分に合わせた労働条件を提示してもらっている。(40代、精神科)
- 専門性が活かされているから。(60代、放射線科)
- 営業利益、人事面でも概ね満足している。(60代、消化器内科(内視鏡))
- 裁量権が与えられていること。ストックオプション制度があることでモチベーションアップがある。(70代、精神科)
2位 職場環境(51人、12.9%)
- 自由に意見が言える。(50代、脳神経外科)
- 自分の診療計画で、自分らしい医療ができる。(40代、一般内科)
- ベテランの従業員が頑張ってくれている。(70代、一般内科)
- 医院施設、職員も安定している。(50代、皮膚科)
- 収益最優先ではなく医療の質の維持を考慮してくれるから。(50代、脳神経外科)
3位 スキル(47人、11.9%)
- 管理部門自ら“汗をかいて”仕事をしているから。(50代、一般内科)
- 無駄な動きがなく報酬改定にも敏感。(50代、循環器内科)
- 医師の仕事がしやすいような環境を比較的整えてくれる。(50代、心臓血管外科)
- 請求事務、患者対応、院内補整など、良くできています。進取の気性が多少弱い。(70代、糖尿病科)
- 質問にしっかり答えてくれる。予定を早めに連絡してくれるなど配慮が行き届いているから。(40代、精神科)
その他
- 自分で開業したから、それを不満とは言えない。(50代、成人病)
- 事務長がしっかり支えている。(50代、小児内科)
- 融通が利いて対応が良好。(50代、心臓血管外科)
- システムが迅速である。(30代、小児内科)
- ライフワークバランスがよい。(30代、全科)
- 理想的とまでは言えないが、よく頑張っていると思う。(50代、放射線科)
- 公立病院の為、業務の迅速性には欠けるが、その他に不満はない。(40代、内分泌内科)
- 一定程度、市役所の事務の異動ですが、懸命に病院の改革&改善に積極的です。(60代、産婦人科)
- 以前勤務していた大病院に比べ、診療に協力的と思う。もちろん立場が異なるため、完全に満足とはいかないが、感謝する気持ちもある。(40代、眼科)
- 研究、臨床のバランスが取れている。(40代、糖尿病・代謝内科)
満足していない理由(抜粋)
1位 スキル(67人、30.7%)
- 医療の現場の危機管理など、全く管理が出来ていない。そのような人物がいない。(60代、泌尿器科)
- 気が利かない、気配りが出来ない職員が一部にいる。(60代、循環器科)
- こちらの提案に対する反応があまりにも遅いので、時期を逸する事が多い。(40代、内分泌内科)
- 合理性に欠ける。(50代、小児内科)
- 要望が伝わりにくい。(50代、血液内科)
- 業務が遅い。稟議して判を押すだけに2週間かけている。(50代、消化器外科)
- 事務方の提言がない。(40代、一般内科)
- 現場を理解していない事務職が多い。(50代、集中治療科/i.c.u./c.c.u)
- 医師の勤務内容について理解が不十分と思われる。(40代、婦人科)
- やっていることが、行き当たりばったりにしか見えない。行っている行動に対する理由を尋ねてもはっきりとした回答が得られたためしがない。(40代、形成外科)
- 医療関係でありながら医療の知識がない事務員がいる。話が通じないことが多く、困る。(40代、脳神経外科)
2位 待遇(44人、20.2%)
- 人事考課がない。(50代、一般内科)
- 拘束時間が長い。(50代、救急医療科)
- 給与体系が不明瞭。(50代、循環器内科)
- 時間外労働の概念がない。現状の医療供給システムでは医師の時間外労働を認めると病院経営は極めて厳しくなる。(50代、脳神経外科)
- 仕事量に無理がある。(30代、小児アレルギー科)
3位 人事(41人、18.8%)
- 理事長と院長で意見が食い違い、現場が混乱している。(50代、消化器内科)
- 専任の担当者がいない(50代、一般内科)
- 情報管理がなされていない。業務内容が上司報告されず共有されていない。(60代、整形外科)
- 職場の現状を把握できていない。適材適所ができていない。実行力のある現実的な方針を提示できず、きれいごとばかりを言っている。(40代、消化器内科)
- 人事任命権がなく、看護師や事務職に問題があっても、現状を全く知らない人事担当が異動を決めてしまう。(50代、一般内科)
その他
- やる気のない人が多すぎる。(50代、一般外科)
- 経営方針が不明確。(50代、泌尿器科)
- 人材確保、経営面でのコントロールが難しい。(50代、一般内科)
- 全部自分でしているので煩雑になっています。(40代、皮膚科)
- 院内ではマイナー科なので、自分の科についてないがしろにされている。(40代、一般内科)
- 非協力的で部門間のコミュニケーションも悪い。(60代、消化器外科)
- 新規・変更事項も全く連絡がなく推し進められ、事前の連絡がないことが多いため。(40代、一般内科)
- 管理部門の施設設備が古く、更新がうまく進まない。(40代、放射線科)
- 委員会がやたら多く、本業以外で時間をとられる。(50代、脳神経外科)
- 先を見通す能力に欠ける。(60代、脳神経外科)
- 責任回避のたらい回しが散見される。(40代、頭頚部・耳鼻いんこう科)
コメント