病院の経営を陰で支える事務・管理部門。医師たちは彼らをどのように見ているのでしょうか。編集部では医師698名に「自院の事務・管理部門への満足度アンケート」を実施。過去2回(2015年・2017年)同様のアンケートを実施していますが、今回初めて、満足と答えた医師が過半数に達しました。一方で、依然として不満を抱える医師が全体の約4分の1を占めている現状も浮き彫りとなりました。
医師の意見くみとる姿勢を評価
調査は、2018年3月30日―4月12日の期間に、m3.com医師会員を対象に実施し、回答した医師は698名でした。
調査結果では「満足している」が19.8%、「どちらかといえば満足している」が32.4%と、52.1%の医師が満足と回答。前回調査(2017年実施)の50%から、2.1ポイント増加しました。
満足している具体的な理由として、最も多かったのが「十分な報酬とオンとオフがしっかりしている」などの待遇(11%※)。自由記述をみると、「休暇日を比較的自由に決められる」「給料は安いが自分の時間を持てるようになった」など、収入だけでなくワークライフバランスを重視する傾向が読み取れます。その他、「個々の能力が高く人間関係も良好」といった職場環境(9%)や、「事務処理が的確」などのスキル(6%)が主に評価されているようです。「いろいろ改善点の意見を聞いてくれる」「依頼したことは確実に実行してくれる」といった意見も多く、医師を認め、その声に真摯に耳を傾ける姿勢が満足度につながっていることがわかります。
※満足している医師に対する割合。以下、同じ。
勤務形態別では、昨年に引き続き勤務医(48.9%)に比べ開業医(60.7%)の満足度が高い傾向がみられました。
しかしながら、昨年では開業医の65.5%が満足としていたのに対し、今年は60.7%と5ポイント近く下落。満足と答えながらも、自由記述では「代表者の憂鬱がある」「人材確保が忙しい」などの声が。開業医ならではの悩みや不満を抱えている医師も少なくない現状が読み取れます。
環境づくりだけではなく医師のモチベーション創出を
一方、不満を抱く人は「どちらかと言えば不満である」(16.2%)、「不満である」(7.6%)を合わせて23.8%と過去最少。依然として、スキルや待遇、人事・採用といった不満要因トップ3の構図に変化はありませんでした。人事においては「公務員と外注の職員ばかりで、痒い所に手が届かない」「医療事務に精通した職員が確保できない」など、医師だけでなく事務・管理部門の人材不足により医師たちが疲弊している様子が明らかになりました。
今回で3度目となる本調査。事務・管理のスキルや、給与などの待遇がある程度希望に沿っていて「大きな問題はない」≒「満足」と捉えている医師が非常に多い一方で、「やりがいのある仕事ができる」「管理・事務が医師を尊重し意見を反映してくれる」など、環境以外の要因が医師の満足度向上に大きく関わっていることも浮き彫りになりました。医師の満足度や意欲を高めるためには、基本的な労働環境を整備して不満要因を解消するだけでなく、医師のモチベーション創出に事務・管理がいかにアプローチできるかが、肝になると言えそうです。
満足している理由(抜粋)
1位 待遇(40人、11%)
- 当直なし、寝ている間の連絡も少ない。仕事はそこそこでそれに応じた給料をもらっている(50代、麻酔科)
- 給料はそれほどでもないが、福利厚生が充実しているから
- 研修医等若手医師に対する待遇の考慮(50代、消化器内科)
- 全職種で残業を減らす方針をとっているので(40代、麻酔科)
- 退職後の職場のためかなり緩い仕事(60代、腎臓内科)
2位 職場環境(32人、8.8%)
- スタッフ全員が患者ファーストで対応できている(80代、小児科)
- コミュニケーションがとりやすい(50代、老人科/老人内科)
- 大手チェーン病院勤務。経営知識が共通化、効率化しており働きやすい(40代、感染症科)
- 新しい検査、新しい治療法を積極的に取り入れているから(60代、産婦人科)
- 診療以外の無駄な仕事がない。当直もないのでありがたい(50代、整形外科)
3位 スキル(22人、6.1%)
- リクエスト対応が早いので(60代、糖尿病内科)
- 困った時、悩んだ時、丁寧に相談に乗って頂けます(60代、腎臓内科)
- 働く者の立場に沿っていろいろ考えてくれているようだから(60代、脳神経外科)
- 病院の運営・管理を維持すべく、努力をしていることが感じられる(40代、胃腸科)
- 理事長ご自身の言葉で法人の方針をはっきりしめしてくれる(50代、一般内科)
- 事務長以下医療機関を定年退職した人材を雇用して経験豊か(60 代、脳神経外科)
その他
- 診療報酬改定についてや、院内ルールの変更について細かくメールで教えてくれるため(20 代、放射線診断科)
- 間違いはないが遅い(50代、皮膚科)
- なかなかすべてに満足する!そんな職場などありません(70代、小児科)
- 非常に忙しいが、オペもできるし、充実しているので(50代、泌尿器科)
- 現在は小規模病院に勤務している。大規模病院に勤務していたころに比べ、管理部門が現場の声に耳を傾けてくれるように感じるため。(40 代、眼科)
- 臨床と研究が行え、学会にも出席し易い(50代、整形外科)
- 診療点数のとり漏れがないようにしっかりチェックしてくれる(50代、放射線科)
- 働きがいがあります。(60 代、胸部外科)
- 温厚、真摯、優秀、親切で言う事がありません(50代、神経精神科)
満足していない理由(抜粋)
1位 スキル(47人、28%)
- ある仕事と別の仕事がバッティングする様な予定を組んだり、勝手な振舞いをする年配の医師がいても、他の医師に迷惑がかかっているのに放置しており、ガバナンスがきちんとした出来ていない。(40代、一般内科)
- 危機管理が不足している(50代、形成外科)
- 現場の状況を把握していないし、把握しようともしない(50代、一般内科)
- 管理者が労働者を管理できてなく 名だけ管理者が多い(残業台等は不明)(40代、脳神経外科)
- 将来の方向性が全く見えない。目先の事だけ考えていて、流されている感じが不満である(40代、内分泌内科)
- 事務が自分の仕事をしようとしない。公務員体質(40代、呼吸器科)
- 利益を重視し、人件費削減ばかりしているため(50代、放射線科)
- 経営に、精神論、根性論のみ訴える事務方の考え方の甘さにがっかりしています(50代、小児循環器科)
- 経営者の無知により,赤字が大変多い事(60代、消化器外科)
2位 待遇待遇(26人、16%)
- サービス残業当たり前なので(30代、精神科)
- 評価の客観性に欠けます(50代、泌尿器科)
- 勤務時間が入職時と違う。超勤手当は出ない(50代、一般内科)
- 能力に応じた評価体制があまりできていない(50代、代謝内科)
- 時間外労働を減じる指導の一方で,平気で仕事を増やしてくる(50代、神経内科)
3位 人事(18人、11%)
- 現在、事務長不在。(60代、精神科)
- 人間関係が悪い(40代、消化器外科)
- 公務員のため、すぐに人が入れ替わるから(60代、一般外科)
- アウトソーシングをしておいて、収益が上がらないと派遣切りをしているので、結局しわ寄せが医療業務にかえってくる(40代、一般内科)
- 現場の意見が反映された配置になっていない(50代、消化器内科)
その他
- 出勤簿がないので毎日必ず遅刻する医師がいる(60代、一般外科)
- 各診療科の枠にとらわれすぎて、柔軟な診療体制が構築できていない(50代、呼吸器科)
- 書類が回覧されるのが遅く、なんでもギリギリになって仕事することになる。(50代、小児科)
- カルテの管理が杜撰(50代、小児内科)
- 会議などが多すぎ(50代、一般内科)
- コミュニケーション不足(60代、一般内科)
- 医療サービスの内容に沿った設備になっていない。(60代、麻酔科)
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