病院の“働き方改革”はなぜ進まないのか?水島協同病院にみる、経営層がすべきこと

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「職員が定着しない」、「人員配置を満たしても現場から増員の要望が絶えない」といった人事課題は、以前から病院経営者たちの悩みの種でした。そこに“働き方改革”の波が押し寄せ、何かを始めなければいけないと考える病院経営者は多いのではないでしょうか。「しかし、どうやって?」という声も同様に多いようです。そこで、働き方改革の進め方について、四元美緑氏(エムスリーキャリア経営支援事業部)に話を聞きました。

四元美緑(よつもと・みのり)
九州大学文学部出身。エムスリーキャリアにて医師を中心とした医療従事者の採用戦略立案・実行支援に従事した後、現在は、医療機関の人事制度設計や運用支援に携わる。

“働き方改革”はなぜ進まないのか?

―病院は以前から人事関連で悩まされ続け、なんとか切り抜けてきたと思います。働き方改革が叫ばれ、いよいよ抜本的な解決を求められるようになりました。何をすれば良いのでしょうか。

まず、具体的な悩みとして「離職・定着」「生産性の低さ」「採用難」を嘆く事務長・院長は多いです。これらの結果に対し、「なぜこの結果に至ったのか」という原因追求に余地を残している医療機関が案外多いのではないでしょうか。

例えば、20代の看護師は採用してもすぐ離職すると嘆くのであれば、「採用前に伝えた業務内容と実際にギャップがなかったか」、「看護師長が若手をマネジメントできているか」など、“自問自答”することが必要です=図1、図2=。

水島協同病院_図1

図1

水島協同病院_図1

図2

―つまり、自分たち病院サイドに課題がないか探るということでしょうか。

その通りです。そのために経営層がすべきことは現場との対話です。

「いやいや、私はしている」という声が聞こえてきそうですが、「あの人とは話が合わないから」と、対話を避けがちになっている職員はいないでしょうか。もしもいるなら、積極的に対話すべきですし、衝突や関係悪化をそれほど心配しなくて良いように思います。

医療者は「より良い医療を提供したい」という職業倫理観の高い方がたくさんいらっしゃいます。そのため、ゴールさえ見失わなければ、腹を割って対話をしても「◯◯さんが悪い!」といった破滅的な議論にはなりにくく、最後は一丸となって「改善のために何をするか」という前向きな姿勢になることが多いです。

研修医~理事長が66の働き方改善案を出した水島協同病院

―課題の解決に向けた業務改善では、医師スタッフがついてきてくれるかが懸念の一つだと思います。どうすれば良いでしょうか。

まず、「トップの強烈なリーダーシップが必要なのではないか」とはよく訊かれますが、必須ではありません。むしろ現場の先生方が自分たちで職場をより良くしよう、と思うための場作りからスタートするのが良いのではないかと感じます。

ほとんどの病院の先生方は 自分たちの働き方について話し合う機会があまりないのではないでしょうか。だから、何を課題だと感じ、それをどのように良くしていくべきかを普段、お互いに知ることもありません。

たとえば水島協同病院(岡山県倉敷市、282床)は、医師16名が集まり、自院の働き方について話し合った結果、大小60以上の改善案が出されました。

水島協同病院の「医師の働き方改革ワークショップ」事例
水島協同病院_ワークショップの様子

ワークショップの様子

・参加者:
医師16名。
年齢は20代~70代、立場は自院の研修医~理事長、大学医局員のほか、医療生協内の病院長・診療所長など、幅広い年齢・科・立場から集まりました。

・取り組み概要:

事前に、参加者の考え方や性格を考慮して2グループに振り分けました。当日はまず、医師の働き方改革をめぐるデータや国の検討状況をミニレクチャーし、この後のワークショップに向けた認識を共有。ワークショップでは、「医局長の立場から職場改善をするなら、何をするか」をテーマに、課題抽出や改善案の洗い出しを行います。その結果、提案された改善案は大小66にも及びました。

水島協同病院_ワークショップで使われたワークの一例

ワークショップで使われたワークの一例

・参加者の声:
アンケートでの平均評価は10段階中8.6点。「問題点や改善策を書き出すことで1つ1つが明確になった」「今までよりコミュニケーションを取っていけそうな気がする」などの声が挙がりました。

実は先生方は心の中で既に、具体的な改善策を思い描いていたりするものです。ただ、その改善策を実施するために合意形成する場がないことが多いのです。

―部長会議は合意形成の場になりませんか。

それだと、経営側から一方的に改善を指示することになってしまいます。それよりは、現場から出ている声を抽出し、1つずつ一緒に解決していく方がお互いに納得感をもって改善を進められます。

まずは、働きやすい環境を実現したいという法人のスタンスを示すことです。専用の場を設け、配慮されたファシリテーションを心掛けつつ、現場からの改善案をまとめます。

上でご紹介した水島協同病院は改善案をまとめ、次のアクションも「医師同士で、ライフプラン・キャリアプランを共有した上でシフトについて話す場をつくる」といったものが決まりました。このように改善案が出たら、あとは具体的なスケジュールに落とし込んで、できることからどんどん実行に移していくことです。

「自分たちで決めたことを実現していく」ことは、組織をどんどん強くします。最初のキッカケをうまく演出し、改善活動を回していくことがひいては経営を良くしていきます。「働き方改革」は経営層だけで進めず、ぜひ現場と一緒に考えて実行していただきたいと思います。
<取材・文:塚田大輔>

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