病院公式SNSで発信する広報動画、実はそんなに見られていない?―病院マーケティング新時代(28)

本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣が、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報の取り組みを取材・報告します。

目次

力を入れて制作した広報動画…。でも、どのくらい見られてる?

今回は病院広報の観点で、「公式SNSで発信する動画って、そんなに見られていないですよ」という話をしたいと思います。

私が勤務する小倉記念病院は、これまで公式LINEのフォロワー数が4,000人超えと多く、ブロック率が14%程度と低いことを自慢してきました。その理由は「公式LINEで、医師が病気や最新治療を紹介する動画を配信しているからです」と。病院広報に医師の露出度が重要なことは、この連載でもこれまでお伝えしてきていると思います。

それではみなさん、病院が力を入れて制作した動画を、公式LINEやFacebook、Youtubeで配信したとき、人はどの程度見てくれていると思いますか?チェックする指標は、動画を見る人数と、見られている時間です。

結論から言いますと、「そんなに見てねぇじゃん」ということになります。

あれほど台本を練って、医師のスケジュールを押さえて、納得がいくまでテイク(撮影)を重ねて、意外と時間がかかる動画編集までやって……。それで「そんなに見てねぇじゃん」は、悲しいです。でも視聴者ってそんなもんなんです。

小倉記念病院の動画視聴実績を公開!Facebookでの平均再生時間はわずか13秒

では実際に当院が製作した、脳動脈瘤に対する新たな治療法である「フローダイバーターステント」に関する動画の、各SNSでの配信結果をみなさんにお見せしましょう。

当院の脳卒中センター長が解説している動画で、2分55秒です。

▼画像をクリックするとYoutubeでご覧いただけます

LINE

フォロワー4,163人中、ブロックされずに配信されるユーザーは3,458人。そのうち動画を開いた人は2,548人で、動画を最後まで見てくれた人は332人。フォロワー数の1/10以下ですよ!! そもそも1,000人近くが開くことさえしないなんて衝撃でした。

小倉記念病院公式LINEの分析画面

フォロワーの年齢層が若かったら、まだわかるんです。

でも当院のLIENフォロワーは、70%が50歳以上です(※下のグラフを参照)。年配の方って律儀なイメージあるじゃないですか。「届いたら一応見てやるか」という方が多そうじゃないですか!? でもそういうわけじゃないんですね。

小倉記念病院公式LINEのユーザー分析画面

Facebook

続いてFacebookの配信人数は、1,591人。そのうち1分以上再生したユーザーは88人。平均再生時間は13秒。最後まで見てくれた人はかなり少ないでしょうね。

小倉記念病院公式Facebookの分析画面

Youtube

当院では、Youtubeは動画のサーバー代わりに利用しているので、「Youtube自体をバズらせよう」とは全く考えていないのですが、参考までに分析データをお見せします。

動画をアップしてから2週間で、再生回数70回。視聴者は少ないですが、40%の人は最後まで見てくれているようです。ほかの病院では再生回数を伸ばしている事例もあるので、Youtubeの運用はもっと工夫できると思います。また今後、新しい学びや発見がありましたら、ご紹介したいと思います。

小倉記念病院公式Youtubeの分析画面

ちなみにLINEとFacebookには、Youtubeのリンクではなく、動画の生素材を投稿するようにしています。理由は、リンクだとなかなか開いてもらえないからです。例えばLINEの場合は、動画の生素材の場合、ユーザーが動画部分をタッチしなくても、勝手に再生が始まります。

「Youtubeの再生回数を増やすこと」を目指してしまうと、「なんとかYoutubeに繋げなくては」と試行錯誤することになると思います。でもその目標設定は適切でしょうか?こちらの事情でユーザーに手間を取らせるよりも、ユーザーフレンドリーな運用の方が「自院のことを知ってもらう」という最終的な目的につながるはずです。

「もっと効率よくて波及力がある、病院広報のツールはないのか?」への答え

病院広報の担当者に、「公式SNSは意外と見られていない」という話をすると、「えぇー、じゃあそんなツールを使うのは辞めて、もっと効率的で波及力のある取り組みをやりたいなぁ」と考えてしまうかもしれません。

でも、効率的で波及力があるツールって何でしょうか?

例えばテレビCM? ローカルTVの午前6時台でも、そんなに安い料金では放送できません。自由診療の美容整形はテレビCMで集患しているケースもありますが、保険診療ではそれほど事例がないですよね。

ブランドとは、「タッチポイント(顧客との接点)におけるユニークなイメージの積み重ね」で構築されるものです。まずは、目の前にいるたった1人を感動させられるコンテンツが重要。そのコンテンツが少しでも多くの人たちに届くように、ツールの力を借りるわけです。それが少人数にしか届かなかったとしても、これを繰り返していくしかありません。

病院広報は早めに取り組んだもの勝ちです。現実的には「コツコツが、勝つコツ」というシンプルな戦法しかないと思います。どこも亀のスピードでしか進めないんですから、できるだけ早くにスタートして、競合との距離を稼いでおきましょう。

【無料】病院経営事例集メールマガジンのご登録

病院長・事務長・採用担当者におすすめ

病院経営事例集メールマガジンでは、以下の情報をお届けします。

  • 病院経営の参考になる情報
    エムスリーグループのネットワークをいかし、医療機関とのコミュニケーションを通じて得た知見をお知らせします。
  • セミナー情報
    医師採用など、病院経営に役立つ知識が学べるセミナーを定期開催しています。

関連記事

コメント

コメントをお待ちしております

HTMLタグはご利用いただけません。

スパム対策のため、日本語が含まれない場合は投稿されません。ご注意ください。

医師の働き方改革

病院経営事例集アンケート

病院・クリニックの事務職求人

病院経営事例集について

病院経営事例集は、実際の成功事例から医療経営・病院経営改善のノウハウを学ぶ、医療機関の経営層・医療従事者のための情報ポータルサイトです。