著者:木村憲洋(高崎健康福祉大学健康福祉学部医療福祉情報学科准教授)
医療法人のあり方も、時代の要請とともに変わり続けています。今回は、医療法人制度の現状と、今後に大きな影響を及ぼすとされている、“非営利ホールディングカンパニー型”医療法人について解説します。
医療法人制度の現状
医療法人制度は1950年の医療法改正により創設されました。創設の目的は、医療機関に経営の継続性を持たせることで地域医療を安定させることにありました。
医療法人には、大きく表1のように財団(医療法人財団)と社団(医療法人社団)があります。
この中で、社団は、出資に関する持ち分を持つ「持分あり医療法人」と出資持分の払い戻し請求時に出資額しか払い出せない「出資額限度法人」、そして「持分なし医療法人」に分けられます。
財団と「持分なし」の社団については、特定医療法人と社会医療法人になることもできます。
特定医療法人になるには、医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的に運営されていることが国税庁長官に承認される必要があります。
通常の医療法人の法人税率が25.5%であることに対して19%と税制優遇を受けられるというメリットがあるものの、昨今のトレンドでは、より優遇措置の厚い社会医療法人を目指す医療機関が増えています=右グラフ参照=。
社会医療法人は、医療保健業については非課税となり、附帯業務(医療提供行為に附帯する在宅介護支援センター/訪問看護ステーションなどでの業務)や収益事業について、法人税率が19%と優遇されています。
その半面、厳格な要件が設けられており、同族役員・社員を3分の1以下、同一団体関係者の理事を3分の1以下と制限しています。また、表2のように医療法における地域医療計画の5事業に関するアウトカムを1つクリアしなければ社会医療法人となることができません。
自治体病院の赤字体質が指摘されている現在、社会医療法人には、「公益性の高い医療」の担い手として、地域医療を支えていくことが期待されています。社会医療法人の要件を満たすのは決して簡単ではありませんが、それを補って余りあるメリットを感じ、多くの医療機関が社会医療法人になることを目指しているのです。
地域包括ケアの構築が叫ばれる今、医療法人のあり方も変わる
さて、昨今、医療を取り巻く制度改革の中心には、「2025年に向けて地域包括ケアをいかに構築していくか」という考えがあります。これまで、2014年度の診療報酬改定・病床機能報告制度についても解説してきましたが、医療法人制度も例外ではありません。
地域に対して効率的で質の高いサービスを提供するために、早ければ2015年中にも、“非営利ホールディングカンパニー型”の新たな医療法人格が創設される予定となっています。次稿ではこの新型医療法人について解説します。
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