病院事務職は言われたことをこなせばいいという時代ではなくなった―千葉県済生会習志野病院 石井仁氏【前編】

病院事務職のあり方は、どのように変化していくのだろうか。今回は、大規模プロジェクトに携わる中で、事務管理職としてのあるべき姿に気づき、それを実践している、千葉県済生会習志野病院・医事課課長の石井仁氏に聞いた。

病院事務職は言われたことをこなせばいいという時代ではなくなった

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これまでを振り返って、石井氏は過去に在籍した医療機関における新棟立ち上げプロジェクトの経験がターニングポイントだったと語る。他職種や他部門との調整の中で困難な問題にぶつかり、それを乗り越えた経験は特に、その後のキャリアに大きな影響を与えた。

医事課として、患者の受付や導線の設計を一任された石井氏。しかし、医師や看護師の事情を踏まえない医事課の理想ばかり語っても、周囲には聞き入れてもらえなかった。思い通りいかないことに悩んでいたが、この状態で最も迷惑がかかるのは患者だと気付き、石井氏は他職種とのコミュニケーションを積極的に取ることを決めたという。最初は医事課のまわりから。次に医師と看護師のような他職種同士の事情もくみ取るように、職種や部門の壁を越えて、どんどんコミュニケーションを図っていった。

「相手の意見を全部聞けないわけですし、こちらの意見も全部聞いてはもらえないわけです。そこをうまく調整し、各々を納得させて、良い物をつくっていくにはどうしたらいいかを徹底的に考えて、会話しました」

他職種の考えを聞き、良い導線を策定するにはどうすべきかを突き詰めて考えた。その過程では、困難な調整の連続だったという。しかし結果として、誰もが納得ができ、患者にとってより良い導線を作れたと自負する。新棟立ち上げの末にたどり着いたのは、「事務職として自分のまわりの業務だけを極めるだけではダメだ」という気付きだった。

「このような経験は若いうちに経験しておく方が良いですね。理想的には20代後半から30代前半でしょうか。ある意味、鼻を折られておくと。医事課長という立場から『これをやってください』と発信するだけでは、うまく動かないことも多いにある。日常的にコミュニケーションを取って、相互理解を図っていくことが重要だと思います」―若いうちに困難を乗り越えて、他部門・他職種に対する理解の必要性に気づくことが、事務管理職へキャリアを進める上で必須の経験だと、石井氏は強調する。

事務職としてキャリアを重ねていく上での学ぶ姿勢

石井氏は、上司から座学で“教えてもらう”という経験は少なかったと振り返る。
「上司や先輩の背中を見て学んできました。ある意味、職人の世界のようですね」―若い頃は、先輩が打ち終わった伝票をゴミ箱から拾って学んだこともあったそうだ。ここまで極端な例は別として、受け身で学ぶ姿勢ではこの後のキャリア形成に大きな違いが出るのではないかと石井氏は指摘する。

「同じ仕事でも、将来を描けている人は、『これができたら次』と自分から吸収しに行く。教わるのを待っている人との差が表れるのは当然だと思います。事務職がキャリアアップを図る上で最も大事なのは、自分の目標を持ち、それに向かって突き進むことなのではないでしょうか」

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