一般的な職種では、複数の求人に応募しながら、同時並行で転職活動を進めていくもの。そのため、自ずと面接の場に慣れていくものです。しかしながら、病院事務職の場合は他業界ほど求人数が多くないため、場数を踏む機会がほとんどありません。そのため、事前準備をいかにしておけるかが面接の合否を左右すると言えます。Vol.3では、病院事務職、特に事務長・医事課でよく聞かれる質問について、雪竹舞子氏(エムスリーキャリア事務職紹介グループ)が解説します。
【目次】
・これは聞かれる!面接の鉄板質問
・事務長・医事課が面接で評価されるポイント
・事前準備をしっかりと
これは聞かれる! 面接の鉄板質問
「面接では、まず始めに、これまでの経歴、転職理由、応募先の志望動機について聞かれます。そこから、業務内容に踏み込んだ質問に移っていく流れが一般的です。履歴書と職務経歴書に記載した担当業務全般の詳細確認は必ずと言っていいほど確認されますので、自分自身の経験についてしっかり振り返っておくことは必至。さらに、ここで注意しておきたいのが、転職理由をネガティブに伝えてしまうこと。退職したい理由があって転職活動を行っている方が多いので気持ちはわからなくもないのですが、必要以上に現職を悪く言ってしまうと悪印象を与えてしまいます。悪い印象を与えない伝え方のアドバイスは求職者の方によくしていますね。メールや電話、ときに直接お会いして面接対策のサポートをすることもすることもあります」(雪竹氏)
管理職全般
- 施設基準の届出や院内折衝の実績について
- 建て替えや移転に対応した経験があるか
- 男女比に偏りがある環境で、うまく連携をとるための工夫、具体的なマネジメント内容
- 医師や看護師の採用、折衝について
事務長
- 担当してきた医療機関の施設区分、規模、担当施設数
- 収益アップ・コスト削減における実績やそのための具体的な取り組み
- 総務、事務、経営企画、採用などの経験有無、その実績
- 経営方針をどのように院内に波及させるか
医事課長
- 紙カルテから電子カルテへの移行経験があるか
- マネジメント経験の有無(ある場合はマネジメント人数)
- 面接先の医療機関での課題と思われる点
- 施設基準取得について
- 査定率や返戻件数について
- 医事課の残業時間やそれにまつわる思考について
医事課員
- 入院・外来のレセプト経験(枚数/日、科目、経験年数)
- 手術のレセプト作成経験の有無
- 医療業界に入ったきっかけ
- 電子カルテの経験の有無(ある場合はメーカー名)
- (DPC取得病院以外でも)DPCについて
「医事課員は、一問一答のスキルジャッジをする質問がよくあります。医事課長は『現在の本院の施設基準取得状況を見て改善点はありますか』『外部委託ではなく、自院でレセプト業務をすべて担当することになりました。教育を強化するために、どのような組織づくりをしていきますか』というような、自院が抱える課題に対してどう取り組んでいくかを見るような具体的な質問が出る場合もあります。回答内容はもちろん、順序立てて説明できるかも重要視されます。
役職が上がるほど、これまでの実績に対する突っ込んだ質問が多くなります」(雪竹氏)
事務長・医事課が面接で評価されるポイント
つづいて、面接で見られる・評価されるポイントは、事務長、医事課長、医事課員でそれぞれ以下が多く見られます。
事務長
- 財務諸表を分析しできるか、経営面の知識
- 行った施策とその結果
- 実行力と調整力
- 実績を踏まえた具体的なエピソード
医事課長
- 施設基準に絡めた提案、収益予想ができるか
- 医事課の人数構成や教育についての実績
- 査定率の改善や返戻の発生件数抑制など数値的な実績
医事課員
- 病院・クリニックでの経験年数
- コミュニケーション能力、人柄
- 施設形態や病床規模とのマッチング
「総じて、即戦力になるかどうかはもちろん、コミュニケーション能力をどの程度持っているかをチェックする面接官が多いですね。医事課員は、退職理由と転職の正当性から『逃げのための転職ではないか』をジャッジされることも。医事課長や事務長は、院内調整の詳細やプロジェクト単位の実績をストーリーとして話せるとインパクトを与えやすいでしょう。事務長の場合、そのエピソードからトップダウンだったか、自分主体だったかを判断されることも往々にしてあります」(雪竹氏)
事前準備をしっかりと
書類の書き方、身だしなみ、面接時の受け答えなど、転職活動を成功させるために押さえておくべきポイントは、いくつもあります。求人内容、面接官が求職者に何を求めているかは、ケースバイケース。
普段は面接する側の管理職の方が、面接される側に回ったとたん、緊張も相まって何を話せばよいのか混乱してしまう場面もお見受けします。受験先の病院の情報はしっかりとチェックし、改めてご自身の経験と照らし合わせて落ち着いてお話できる環境をつくりましょう。不安な面は担当のキャリアコンサルタントに相談するのも有用です。
その時々でしっかり対応できるようにしておくためにも、事前準備をしっかりして面接に臨み、自分が望むキャリアを築いていきましょう。
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雪竹舞子(ゆきたけ・まいこ)
エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 事務職紹介グループ
大学卒業後、企業にてBtoC営業とセミナー企画・運営に従事。兄弟が先天性の疾患を抱えていたことから、思い入れの強かった医療業界に飛び込むべく、エムスリーキャリアに入社。現在は、前職での営業経験も活かしながら「顧客ファースト」を信念にキャリアコンサルタントとして活動中。趣味はミュージカル・舞台鑑賞で、月1回の鑑賞を欠かさない。
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