転職が“攻めの経営”にチャレンジするきっかけに―福岡輝栄会病院 小林敬一事務次長

財閥系の鉱業会社に入社後、異動先の企業立病院で経験を積んでいた小林敬一氏。民間病院で“攻めの経営”に挑戦するため、49歳のときに福岡輝栄会病院(福岡市、259床)へ転職しました。その後、入職して間もなく病院の新築移転プロジェクトに関わるなど、一生に一度あるかないかの経験を積んでいます。自分のやりたいことと向き合い続け、環境を変えたからこそ得たものとは―。

<インタビュイープロフィール>
医療法人輝栄会 福岡輝栄会病院
事務次長  小林 敬一 氏

病院のハードからソフトまで、“攻めの経営”に挑戦する

福岡輝栄会病院 小林敬一

-まず、これまでのキャリアについて教えてください。

大学卒業後は、財閥系の鉱業会社に入社しました。大学で学んでいた都市政策の知識を生かして、社有地の有効活用に関われると考えたからです。

はじめは総務人事からスタートして、新規事業を行う関係会社のサポートや支店の人事、総務、行政対応を経験し、途中では農業土木現場の施工管理なども担当しました。その後、2000年に企業立病院へ異動となり、そこから医療の世界に飛び込みました。一般企業とはまったく違う世界でしたが、いい勉強になると思ったのでとりあえずやってみようという感じでした。

-病院に転勤されてからは、どのような業務に携わりましたか。

まずは、総務課に配属され、行政対応や人事などの仕事に従事しました。今までの経験がそのまま応用できる業務もあったので、違和感もなくスムーズに院内業務に入れたと思っています。特に、行政対応は診療報酬制度自体が法制度として明文化されていたので進めやすかったですね。

その後、施設基準の取得など、さまざまなプロジェクトに関わりながら、院内全体を見ることが増えていき、事務長補佐まで務めました。

-院内でも頼られる存在だったのですね。

なんでも試してみようという性分もありますが、新しいことには積極的に挑戦していきたいと思っていたので、何事にも一線を引かず、いろいろな業務に取り組んでいました。今振り返ると、それが自身のキャリア形成にもつながっていたのだと思います。

-その後、転職を検討したのはなぜでしょうか。

「自身が目指すキャリアを積んでいくため」というのが大きな動機です。当時勤務していた病院の医療圏は、県内でも特に人口減少が進んでいました。それ自体が悪いわけではありませんが、そういった環境下では、どうしてもコスト削減といった守りの経営になってしまうと思いました。

私は、業務を続ける中で、より医療が必要な地域の中で頼りにされるような“攻めの病院経営”に取り組みたい思いが強くなったため、2016年に福岡輝栄会病院の事務次長として入職しました。

-数ある病院の中で、福岡輝栄会病院に入職された決め手を教えてください。

理由は2つあります。1つは、当時の福岡輝栄会病院は人口増加と発展著しい千早(福岡市東区)への新築移転プロジェクトを進めていたことです。医療ニーズが拡大していく地域で、そういった成長フェーズの一大プロジェクトに関われる機会はなかなかないチャンスだと思いました。

もう1つは、中村吉孝理事長の人柄に惹かれました。面接でお話したとき、リーダーシップがあって意思決定も速い印象だったので、スピード感を持ちながら仕事に取り組めるだろうという点が魅力的でした。

-事務次長というポジションでは、どのようなことに取り組まれていますか。

現在は職員満足度の向上、福利厚生やメンタルヘルス等の安全衛生の強化、医療機能評価受審準備などのプロジェクトに注力しているところです。入職当初の大きな目標だった新築移転が2018年6月に完了したので、そのハード面を活かして、ソフト面をどう強化するかという課題になっています。個人的にはやりたいことがたくさんありますので、貪欲に何でもやっていきたいと考えています。

-転職してよかったと思う点をお聞かせください。

転職してまもなく病院の新築移転という大きなプロジェクトに貢献でき、省みても大きな達成感を感じています。病院全職員が一丸となって各自の責任を果たし、半日で約150人の患者を新病院に移転する。こんな経験は一生で一度しかできないことかも知れません。

また、転職前は他病院での勤務経験がなかったので、自分がどれだけ他でも通用するのか疑問がありましたが、着実に身につけてきた知識や経験は間違っていなかったという確信が得られたのもよかったです。

-逆に、転職後のギャップはありましたか。

当然かもしれませんが、新たな環境に慣れるまでには少し時間がかかりました。医療制度は同一ルールなので、知識自体は使えるものの、その運用方法は組織の文化や風土に左右されると思いました。病院のあるべき理想像も法人によって変わるので、知識だけではなく応用力が求められると気づきました。

転職は、自分がやりたいことをベースに考える

福岡輝栄会病院 事務次長

-現在、病院事務職の中では、いかにしてキャリアアップするかがよくある悩みのひとつになっています。小林さんがチャレンジした「転職」によるキャリアアップのメリットは何でしょうか。

自ら選んだ環境で挑戦し、経験が積めることだと思っています。所属している病院内でのキャリアアップももちろん可能ですが、思ったより時間がかかったり、どうしても叶えることが難しい環境だったりすることもあるのではないでしょうか。今後のキャリアを考えた時に、自分の意思を大切にしたいのであれば、自分で環境を選ぶという選択肢があってもいいのではないかと思います。

-では、転職をする際に気をつけた方がいいことなどはありますか。

業務内容や労務環境はもちろんですが、法人の理念や方針を理解して、自分と合うかどうかを判断することが大切だと思います。そのためにも、面接では実務の話だけではなく、その病院を取り巻く地域医療のあるべき姿など、広い目線での話し合いをすることをおすすめします。

また、入職時にはそれぞれの病院にある文化を理解、尊重した方がいいでしょう。自分も今まで勤めていた病院の文化を無意識に引きずっているところがあると自覚した上で業務に取り組んでいます。

-最後に、キャリアアップに悩んでいる読者に向けてメッセージをお願いします。

自分のやりたいことであれば、モチベーションは勝手についてきます。だからこそ、自分のやりたいことを明確にした上で、それを叶えられる環境を選択するべきかと思います。

転職をはじめ、新しい環境に飛び込むのは勇気がいることでもありますが、失敗を恐れないで、いい意味で楽観的にチャレンジしていくことが重要ではないでしょうか。

<取材・文:浅見祐樹、編集:小野茉奈佳>

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