全科算定できる「妊婦加算」で、医事課が知るべき問題とは―診療報酬請求最前線

この記事は約3分30秒で読めます

診療報酬請求最前線

今回は「妊婦加算」について解説します。この加算は、妊娠の継続や胎児に配慮した診療時の対応を評価したもので、難しい条件は無く、診療科を問わず医師が妊婦であると判断した場合に算定できます。

厚生労働省保険局医療課「平成30年度診療報酬改定の概要 医科I」より抜粋

初・再診料、外来診療料に付帯した「妊婦加算」

「妊婦加算」は次に示す基本診療料に付帯する加算として設定されたので、初診時は初診料に併せて算定できます。

基本診療料

・初診料(注10)   75点
・再診料(注15)   38点
・外来診療料(注10) 38点

初・再診料と聞くと、初診・再診時の診察料という印象がありますが、この報酬の正確な意味は「基本的な診療行為を含む一連の費用」です。ここでいう診察は総合的な診療行為一式を指しており、診察時の視診・触診・問診から簡単な検査(血圧測定、簡易循環機能検査など)、点眼・点耳の投薬、そして皮膚軟膏の処置(100平方センチメートル未満)や診察時の人的・物的な費用なども含まれています。

また、初・再診料にはいくつかの加算が付帯しており、6歳未満の子どもの場合は乳幼児加算、日中の診察時間以外の場合には時間外等加算(時間外・時間外(特例)・休日・深夜)などがあります。ここに新たに妊娠に対する「妊婦加算」が加わったということです。

周産期医療充実のため、妊婦への気遣いを評価

さて、どうして医療現場で妊婦の診察が評価される必要があったのでしょうか。なぜ診察料が高くなるのか、疑問に思うところです。

その背景には、どうも妊婦を避ける医療機関があって、妊婦を「産婦人科で診てもらってください」と帰していることが少なくない現実があるようです。医療機関側には妊婦に何かあっても対応できない、余計なリスクを避けたいという気持ちもあるのかもしれません。実際、妊婦に対しては、放射線画像検査を避けることはもちろんですが処方にも気を遣います。厚生労働省には、そこに加算というアメを与え、体制を変えようという狙いがあるのかもしれません。

医事課が知るべき、妊婦加算をめぐる問題

では、この妊婦加算を医療機関でどのように対応し、算定に結びつけるのか、運用について考えてみましょう。当院でもこの算定をめぐり、次に示すようなデリケートな問題が議論になりました。

  • 初診は問診で聞き取りができたとして、再診では「妊娠」をどの時点で把握するのか。
  • 妊娠は本人の申告を100%信用していいのか。
  • 逆に加算による自己負担増を嫌って、妊娠を隠した患者はどうするのか。
  • 医師が妊娠を把握した時点で医事算定へどうやって伝えるのか。
  • 出産して妊婦でなくなったことをどう把握するのか。
  • 出産後も漫然と加算を取ってしまわないか。
  • 流産してしまった場合、把握も難しいが、算定していたことが診療報酬明細書で患者にわかると対応がややこしくなるのではないか。

このような議論を見ると、「医療機関では、妊娠という重要な情報を得て診療を行っていないのか」と言われそうですが、そうではありません。産科はもちろん、検査や処方にしても、あらゆる場面で妊婦への配慮が行われています。

ところが運用をよく見てみると、産科診察の延長線上に他科の保険診療があり、院内での連携が行われています。たとえば妊娠中に合併症を患った時は、出産(原則、自費診療)から保険診療への切り替えが発生するのです。一番多いのは、妊娠で産科にかかりながら、途中で感冒やアレルギーといった比較的軽症な疾患で来院するケース。この場合は産科での保険適応になるので、そのまま産科の主治医が妊婦加算を発信し、コストを紙面や電子カルテ上で医事に送信すれば済みます。

しかし他院の産科に通っている妊婦が、自院の消化器科や循環器科、皮膚科を受診するような場合には、一般患者と同じ受診の流れになる可能性があります。そのため、妊婦の把握自体、難しいことが考えられます。

もれなく算定するためにも医事算定側は、正確かつスピーディに妊娠情報をキャッチする必要があるでしょう。本来であれば電子カルテから医事算定システムまで一貫した運用で妊娠情報が送られて、算定者が一目瞭然になることが望ましいのですが、電子カルテ上にある妊娠情報は更新(管理)が滞っていて意外と信用できません。

実際に調べてみると、産科で妊婦情報を登録して他院で出産した場合、いつまでも妊婦のままになっています。これは、出産情報を診療情報提供書(紹介状)として受け取っているにもかかわらず、電子カルテへの登録が漏れていることを表しています。そのまま放置された結果、妊娠週数が自動計算されて数千日になっている妊婦も、冗談ではなく実際にあり得ることなのです。

以上のような現場の実態を押さえつつ、この妊婦加算をどこまで正確かつ確実に算定できるかが、医事課の腕の見せ所ではないでしょうか。ネックは、情報の管理体制と運用の周知徹底になると筆者は考えます。

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。

関連記事

  1. bs2
  1. まっちー 2018.05.08 7:03am

    いつも拝読しております。産婦人科医院に勤める事務員をしております。
    今回は妊婦加算における記事でしたので、大変参考になりました。
    そこで一つ気になったのですが、流産手術を算定した日の妊婦加算については算定するのかしないのか、考え方をご教示願えれば是非ともよろしくお願いします。
    おそらく医学的には算定するのだと思っておりますが、明細書が発行される今、患者さんに対し心苦しいのです。

    • 0
    • 0
    • 病院経営事例集 2018.05.08 1:02pm

      いつもご覧いただき、誠にありがとうございます。
      ご質問の件について、著者からのご回答をいただきました。

      『人道的には取りにくい話ですが、妊娠に対して加算を設けているのではなく、妊婦への診療上の配慮を加算にしているので、算定可能と思います。この手の話は、厚労省は主治医の判断といわれると思います。』

      今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

      • 0
      • 0

HTMLタグはご利用いただけません。

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

ログイン

業界最大級!

医師利用者数≪年間1万人~≫の医師紹介サービス
エムスリーキャリアにご相談ください。

お問い合わせはこちら

記事カテゴリー

Facebook

病院経営事例集とは

病院経営事例集は、実際の成功事例から医療経営・病院経営改善のノウハウを学ぶ、医療機関の経営層・医療従事者のための情報ポータルサイトです。