病院事務職キャリア相談室vol.16:役職者の転職、在職中でいい?慰留されたら?

総務課長代理Mさん

38歳、男性、病院事務職歴10年

一般企業に勤めていた10年前に知人から紹介され、今の病院に入職しました。現在まで仕事内容に不満があるわけではないのですが、ルーチンワークが多く変化の乏しい日々に「このままで良いのか」としばしば自問するようになっています。40歳を前に、もっと幅広い業務に関われる挑戦的な風土の医療機関で働いてみたいと思いはじめました。

ただ、紹介してくれた知人への恩もありますし、一部シフト制の勤務形態のため、なかなか転職活動の時間を設けることができません。

今の病院にきちんと辞意を伝えてから、もしくは退職してからの方が転職活動に集中できるのではと思っていますが、実際のところどうなのでしょうか。
また、仮に在職のまま転職活動をして転職先が見つかっても、今の職場から慰留されそうです。そうした場合の情報も何かないでしょうか。

【回答者】雪竹舞子(事務職専門コンサルタント)

医療事務職キャリア相談室
ご質問ありがとうございます。ご自身の今後のキャリアを考え、もっとできることを増やしたいと思われたのですね。意欲的なご姿勢は転職活動においても高評価につながりやすいかと存じます。

さて、今回は「在職中から転職活動を行うべきか」と「内定後に退職できない状況が発生することはあるか」の2点について、順番にご説明させていただきます。

「こんなはずじゃなかった」を避けるために

まず、転職活動の開始時期について。お知り合いからのお声掛けという背景をふまえると、けじめをつけてからというMさんのお気持ちもお察しします。しかし、本コーナーでも何回か触れてきたように、まずは現職についたまま転職活動することをおすすめします。理由は、大きく分けて2つあります。1つは現職に残る選択肢を持っておけること、もう1つは「早く決めなければ」と焦らなくてよいことです。

転職活動をしばらくしてから転職自体を見送るというケースは、珍しいことではありません。たとえば求人情報を見たり他院を訪問したりした結果、報酬や担当業務、環境といった面で「現職の方が自分に合っている」という結論に至り、転職活動を中止される方もいます。また、中には足りないスキルが明確になり、それを現職で身につけてから転職を考えようと、時期を見直す方もいらっしゃいます。特に、現職に明確な不満がない場合、「自院と他院を比較したことで、今後の道が見えた」というお声はよく耳にします。急いで現職を辞めれば、選択肢を狭めることにもつながりかねないのです。

また、自己都合による退職の場合、給付制限があるため、一定期間は失業手当を受け取ることができません(例外もあります)。つまり、いきなり安定的な収入を失ってしまうことになります。たとえ十分な貯蓄があっても、ご家族から早期就業への催促があったりと、やはり日に日に不安やプレッシャーが募ってしまうもの。「早く転職先を決めなければ」と焦った結果、条件や環境を吟味せず、早期に内定をもらえた医療機関に入職しようと判断してしまいがちです。

せっかく「できることを増やしたい」「挑戦的な風土の医療機関で働きたい」という想いで転職を決意されたのに、入ってみたら前職とあまり変わらない業務・環境だったということにもなりかねません。結局、早期退職ということになればMさんにとってはまた転職活動をしなければならないのでご負担が大きいですし、転職先の医療機関にも迷惑をかけることになってしまいます。こうした事態を避けるためにも、現職についたまま活動されることをおすすめします。

転職するつもりだったが辞められない…そんなときは?

最後に、内定受諾後に現職を退職できなくなってしまった場合について、お答えします。理由は様々ですが、現職から強く慰留され辞められなくなる、というケースは稀に発生します。そして弊社サービスを利用する方からもそうしたご相談はいただきますし、中には退職を思いとどまる方も当然います。その場合、弊社から内定先にご事情をお伝えしますが、求職者の方にペナルティなどは発生しませんのでご安心ください。

ちなみに、退職の申し出について、就業規則で制限されている場合もあるかと思いますが、基本的には以下のように定められています。意外とご存じない方も多いのではないのでしょうか。

「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。(民法627条1項)」

つまり、法律上は2週間前に申し出れば退職する自由が保証されているということです。一度内定を辞退してしまうと、どんな事情があっても後から取り消しはできません。ご自身にとって何が最善なのか、慎重にご検討いただく必要があると思います。とはいえ、強引に辞めたくない・辞められないというご事情もあるでしょうし、これは個別性が強いテーマです。どうしたら円満退職できるかは、ご相談いただければお力添えできるかと思います。

現職で働きながらの転職活動は、業務の折り合いをつけたり面接の時間を確保したり大変な面も多いと思いますが、最終的にはメリットのほうが大きいです。ご納得のいくキャリアチェンジとなりますよう、陰ながら応援しております。

《まとめ》
  1. 転職活動は現職についたまま行うのがおすすめ
  2. 退職後の転職活動は早期離職につながるリスクも
  3. 内定後の辞退も相談・対応は可能

▶▶病院・クリニック事務職(管理職/管理職候補)のご転職・キャリアのご相談はこちらから

 

【関連記事】
病院事務職のキャリアパスとは?─10年後に後悔しないための働き方
転職が“攻めの経営”にチャレンジするきっかけに―福岡輝栄会病院 小林敬一事務次長

雪竹舞子(ゆきたけ・まいこ)
エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 事務職紹介グループ
大学卒業後、企業にてBtoC営業とセミナー企画・運営に従事。兄弟が先天性の疾患を抱えていたことから、思い入れの強かった医療業界に飛び込むべく、エムスリーキャリアに入社。現在は、前職での営業経験も活かしながら「顧客ファースト」を信念にキャリアコンサルタントとして活動中。趣味はミュージカル・舞台鑑賞で、月1回の鑑賞を欠かさない。

【無料】病院経営事例集メールマガジンのご登録

病院長・事務長・採用担当者におすすめ

病院経営事例集メールマガジンでは、以下の情報をお届けします。

  • 病院経営の参考になる情報
    エムスリーグループのネットワークをいかし、医療機関とのコミュニケーションを通じて得た知見をお知らせします。
  • セミナー情報
    医師採用など、病院経営に役立つ知識が学べるセミナーを定期開催しています。

関連記事

  1. 医師という職業とは―医師への選択、医師の選択(野末睦)

コメント

コメントをお待ちしております

HTMLタグはご利用いただけません。

スパム対策のため、日本語が含まれない場合は投稿されません。ご注意ください。

医師の働き方改革

病院経営事例集アンケート

病院・クリニックの事務職求人

病院経営事例集について

病院経営事例集は、実際の成功事例から医療経営・病院経営改善のノウハウを学ぶ、医療機関の経営層・医療従事者のための情報ポータルサイトです。