「必然性のないチャレンジはしない」
-さまざまな新しいチャレンジを続けていますが、経営判断の際はどんな軸を持っているのでしょうか。
医療と言うのはインフラですから、社会が向かう方向に対して、自分たちのチャレンジに「必然性」がなければ、実行すべきでないと思っています。
世の中が今、かつてないようなスピードで変わっていく中で、「前と同じことをし続けること」のリスクは非常に高い。そのことは何となく実感できたとしても、「どんな風に変化すべきか」は簡単には分かりません。
そういうときに、「自分たちにとっての必然は何なのか」を組織の共通認識として持った上で、アクションを起こしていくことが大切だと思っています。
-具体的に、どのような社会変化に対して、鉄蕉会として取り組むべき「必然性」を捉えていらっしゃいますか。
今後、日本の最大の問題は、少子高齢化と人口減少です。それに伴い、人やお金が都市部に一極集中してしまう「コンパクトシティ」化が起こっています。
亀田総合病院の位置する安房医療圏においても、人口13万人に対し、年間1200人ずつ人口が減少しています。そもそも、そんな人口減少地域に、当院のような大規模医療機関が本当に必要なのか。もちろん、「来院する患者さまのために必要」という考えもありえますが、当センターの医療は、この地域の最大産業でもあります。「この地域を活性化させ、人口を増やすこと」も、我々が果たすべき重要な役割ですし、この地域で継続的に医療を提供し続けるには、この地域自体を盛り上げていくことが、絶対的に必要であるという「必然性」も見えてきます。
今後、日本のあらゆる場所で起きてくる問題を踏まえた上で、持続的な社会インフラをどう提供していくのか。われわれのチャレンジは、地方を中心に、そのモデルづくりをするということにもつながります。
日々の議論から共通認識を醸成
-新たなチャレンジを迅速に実行に移すために、組織内の合意形成には、どのくらい時間がかかるのでしょうか。
時間はかけません。日々の議論の中から、共通認識は出来上がっていくものではないでしょうか。亀田メディカルセンターには未だに、院長室がありません。代わりに管理室があって、そこでわたしや、わたしの兄弟でもある鉄蕉会理事長、亀田総合病院の院長が仕事をしていて、日常的に議論をしています。
また、毎朝、各部門の責任者が集まり、お互いの意見を交換しています。最近起こった院内の問題の報告に留まらず、「こんなニュースがあったが、どう考えるべきか」など、部署横断的に様々な問題意識をぶつけ合うのです。
これだけ大きな医療機関になると、隣の部署の様子は見えづらくなりがちです。今、院内で何が起こっているのか。隣の部署は何を考えているのかについて主だったものは、タイムリーに共通認識を持てるようにしています。組織の縦割りの壁を回し蹴りで壊すことが、わたしの役割だとも思っています。
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