活発化する“サーチ型”の医師採用 医療機関の変化とは?

2025年に向かって大きな変革が求められる医療業界。機能分化と地域連携を推し進める政策の一方で、医療機関の間では、自院の今後を担うようなエース級の医師を“サーチ型”と呼ばれる新たな手法で採用しようとする動きが徐々に活発化しています。こうした採用市場の変化について、医療機関と医師のマッチングに携わる村井智紀氏(エムスリーキャリア・人材紹介グループ)に聞きました。

多くの医療機関が「自院の変革を支えてくれる医師」を求めている

―昨今の医師採用市場の動向について教えてください。

murai_1

村井智紀氏(エムスリーキャリア・人材紹介グループ)

当社へのお問合せを見ると、急性期から慢性期、クリニック問わず全国的に、マネジメントスキルや特定領域の診療能力に秀でた医師のニーズが高まっている印象です。

背景にあるのは、やはり診療報酬や新専門医制度の改定に伴う経営基盤の強化の必要性。病院の建て替え時期をむかえ医療機能を見直そうとしている医療機関も多く、医療圏内の需要に応えるために診療科を立ち上げたり、既存科目を強化したりする動きが起こっています。「診療科や病院の立ち上げ時にトップに立つ医師を招聘したい」「病院の専門性を高めるために経験豊富な医師を招聘したい」と、自院の今後を担う医師を求める声は、今後も高まっていくものと考えています。

-そのようなエース級の医師を採用しようとする際、医療機関の採用担当者はどんなことに苦労するのでしょうか。

転職市場に該当医師が圧倒的に少ないことではないでしょうか。

もちろん通常の医師採用においても応募者獲得は簡単ではありませんが、診療科立ち上げ・既存科目強化を主導できるような診療経験や、マネジメントスキルを備えた医師を採用しようとすると、母数はさらに絞り込まれます。病院の今後を左右するような採用になるため、応募が集まったとしても、選考には多大な労力が掛かりがち、というのも大きな特徴だと思います。

病院の今後を左右するような人材の採用が遅れてしまうと、病院全体の機会損失にもつながりかねません。自院の今後を担う医師を計画的に採用していくためには、要件に合致した医師にピンポイントで求人を打ち出し、確度の高い母集団の中から効率的に選考を進めることがカギになるかと思います。そうしたニーズに応じる一つの解決策として、“サーチ型”と呼ばれる採用手法が広まってきているのだと考えています。

完全成功報酬型で、従来のヘッドハンティングよりハードルは低く

―実際にサーチ型の医師採用は、どのように進められるのでしょうか。

当社の場合、まずは医療機関に専任のコンサルタントが付き、求人の内容とターゲットを策定するところから携わっています。他院の事例や病院経営に対するインパクトなども踏まえて、採用担当者の方や経営層の方とも調整しながら、採用対象になる医師の要件を定義し、求人の打ち出し方を決定します。

★DSC_3197求人が決定したあとは、要件を満たした医師にコンサルタントがスカウト活動を行います。通常の人材紹介の場合は、当社に転職相談を寄せている医師の中から該当者を探す形になりますが、当サービスは当社のグループが運営しているm3.comに会員登録している全国の医師約25万人にも求人を届けられます。この会員基盤からも保持資格やご経験、役職、年齢などの応募要件を満たす方を抽出し、ピンポイントで求人をお送りしています。

一般に“ヘッドハンティング”と呼ばれる従来のサービスでは、学会の専門医リストや、有名医療機関のホームページなどを確認して該当する医師にスカウトのお手紙を送ったりするのが一般的でしたが、こうした手法を取るとヘッドハンティング活動自体にコストが掛かるため、医療機関側から前金をいただいたり、段階的な課金精度を取ったりする場合がありました。
当社の場合、自社プラットフォームが充実しているため、医療機関側からの初期費用はいただかず、医師の入職が決まった段階で料金が生じる完全成功報酬型で運営することが可能となっており、この点が大きな特徴かと思います。通常の人材紹介よりも医師入職によるインパクトが大きくなることも想定されるため、通常よりも返金期間を長くするなどの対応も取っています。

こうした導入ハードルの低さも相まって、当社のお取引先医療機関においては、役職付き・ハイスキル層だけでなく、医師の急募案件などにも当サービスを利用いただくケースが増えてきています。

―求人を紹介された医師の反応はいかがですか。

転職を検討しているか否かに限らず、「自分を本当に必要としている医療機関からの申し出であれば」と、興味を持っていただけることは多い印象です。

この背景には、特に医療機関にとってニーズの高い30代中盤~40代後半というセグメントが、医師にとって働き方を見なおす節目の時期であることも影響していると思います。新専門医制度などキャリアに変革をもたらす制度改正も見込まれている分、直近での転職を検討していなかったにしても、「自分自身が活躍できる場」を求めている面もあり、今後のキャリアに関する情報を欲している―サーチ型の人材紹介が急速に浸透している背景には、こうした医師からの需要の高さも関連しているように感じます。

 「医師ならどんな方でも」では通用しない時代に

―医療業界の変化に伴って、医師採用のあり方も変わっていきそうですね。

機能分化が叫ばれ、医療機関ごとに強みを打ち出していかなければならないこれからの時代は、「医師ならどんな方でも」というスタイルでの人員増強に限界があると感じます。自院の経営戦略を進めるに当たって必要な医師像を明確に定義し、妥協せずに採用を進めていく―既にそんな戦略を取って、地域で求められる役割を果たすための機能を着実に増強している医療機関が、医師の採用市場においても存在感を高めている印象です。

今後の自院のあるべき姿を見定め、もし、戦略のカギとなる医師の採用を検討されているようであれば、お気軽にお問合せいただければ幸いです。

 

IMG_7328村井智紀(むらい・とものり)
大学卒業後、社会福祉法人 恩賜財団 済生会に入職し病院経営に携わる。医療現場で学んだ経験を基に2012年エムスリーキャリア株式会社に入社。常勤職のコンサルタント業務に従事し、現在はプレミアムサーチサービス・採用ソリューションサービスを兼務し、医療機関の採用活動を支援。

 

関連記事

  1. 広島国際大学学生論文_組織とマネジメントに関する研究
  2. 川越胃腸病院の小川卓氏(総務部長、医療サービス対応事務局長)

コメント

コメントをお待ちしております

HTMLタグはご利用いただけません。

スパム対策のため、日本語が含まれない場合は投稿されません。ご注意ください。

医師の働き方改革

病院経営事例集アンケート

病院・クリニックの事務職求人

病院経営事例集について

病院経営事例集は、実際の成功事例から医療経営・病院経営改善のノウハウを学ぶ、医療機関の経営層・医療従事者のための情報ポータルサイトです。