2025年に向けて構築が進められている地域包括ケアシステムの中で、重要な役割を果たす存在として注目されているのが、どのような疾患にも対応できる“総合診療医”。新専門医制度によって新たに総合診療医養成のプロセスが描かれることもあって、医師の間でも関心が高まっています。
こうした中、エムスリーキャリアは医師を対象にアンケート調査を実施。総合診療医として働くなら医師はどんな環境を求めるのでしょうか。意向を探りました。
総合診療医とは
日本病院総合診療医学会(http://hgm-japan.com/general/info.php)によると、総合診療医とは「Subspecialtyを持った上でどのような疾患にも対応し、未診断症例には速やかに正確な診断を行い、速やかな治療を行うことができ、場合によっては患者のことを考えた専門医との連携を円滑に行うことが出来る医師」と定義されています。
2025年に向けて構築が進められている地域包括ケアシステムの中で、適切な治療を判断する総合診療医はキーパーソンとして注目を集めており、その育成や採用が急務となっています。
2018年度にスタートする予定の新専門医制度では、総合診療が19番目の基本領域として追加。総合診療専門医の誕生が目玉の一つとなっています。
過半数が総合診療医に対して興味・関心あり
今回の調査概要は以下の通り。総合診療医に対する興味・関心をm3.com医師会員411人に質問しました。
回答期間:2016年12月3日―7日
回答:411人
その結果、いずれの年代も過半数の医師が総合診療医に関心を示していることが判明=下グラフ参照=。若手医師ほど実際に「将来(総合診療医として)勤務するつもりである」という意向が強いことも分かりました。
その反面、総合診療医に興味・関心こそあるものの、実際に勤務するかどうかは「条件次第」と回答した“浮動層”が若年層を中心に分布していることも明らかに。地方の中小病院が総合診療医を採用する際には、こうした浮動層をいかに取り込むかが一つのポイントと言えそうです。
総合診療医を地方で採用するためのポイント
調査ではさらに、総合診療医に興味関心があり、「条件次第では勤務したい」と答えた医師に、どのような条件を重視して勤務先を検討するか質問(複数回答)。「重症患者発生時に他病院搬送体制が整備されていること」を望む声が最も大きい結果となり、「長時間拘束でないこと」「単身赴任となった場合の手当て」などが続きました=下グラフ参照=。
なお、各年代の中でも「条件次第では勤務したい」の回答割合が多くを占めた30-40代医師に着目。重視しているポイントを抽出してみると、以下のような結果に。重視する条件の順位は変わらず、幅広い世代で、重症患者発生における他院搬送体制の整備を求めていることが分かりました。総合診療医として招聘する上では、病院側の体制整備や、過剰労働にならないことの明文化がポイントであることと言えそうです。
医師が語る、地方勤務の不安とは
今回のアンケートでは、地方の中小病院に総合診療医として携わることへの不安感について、自由コメントも募集。不安の対象は大きく3つに分けることができ、それぞれに対して実際に寄せられた声をご紹介します。
・診療の負担具合
・重症患者の受け入れにおける他病院との連携
・医師としてキャリアが途切れてしまう可能性
-診療の負担具合が分からない【回答数:88 (31.8%)※】
・仕事内容の範囲が曖昧で、負担が増えるのではないか
・医師1人の負担が大きい印象がある
・整形や小児科もしないといけないから怖い
・なんでも診させられることが心配
-重症患者の受け入れにおける他病院との連携【回答数:62 (22.4%)※】
・重症患者の対応
・急患・重症患者の搬送先がないと非常に困ります。
・他の医師(近隣の医療機関、自施設の他科医師、同僚)との連携
-医師としてキャリアが途切れてしまう可能性【回答数:23 (8.3%)※】
・結局は老衰に伴う肺炎を診るだけになるのではないか
・専門性の充実およびキャリアパスが確立されていない点
・専門医として評価されなくなるのではないか
-その他
・総合診療といってもいわゆるERに近い内容の勤務であることが多く、他科の診たくない患者の押しつけの場になっていることが多々あると聞く。
・子供の教育上難しい
・地方が不便であり、期間限定なら考える
また、勤務に向けて期待するコメントもありました。
-期待すること【回答数:8 (2.9%)※】
・地域には専門医が少ないが、しっかりとした診断を行って専門医での治療を行える体制を作るのは重要
・サテライトの診療所や在宅にも加われると嬉しい
・地域コミュニティとうまくバランスを取りながらお互い無用に負担をかけない、そんな地域医療を実現したい
・期間限定ということが明文化されていると嬉しいです
※有効回答数に対する割合
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