婦人科特定疾患治療管理料の算定、運用フロー構築のポイントは──診療報酬請求最前線

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2020年度の診療報酬改定では、子宮内膜症や子宮筋腫などの器質性月経困難症に対し、「婦人科特定疾患治療管理料 250点(3月に1回)」が新たな医学管理料として設置されました。対象となる診療上の条件を整理すると、主に次の3項目になります。

  • 器質性月経困難症に対しホルモン剤を投与している患者であること
  • 婦人科または産婦人科の外来診療であること
  • 治療計画(患者の病態、社会的要因、薬物療法の副作用や合併症のリスクなどを考慮)を作成し、患者の同意を得て、継続的な医学管理・指導が行われていること

施設基準としては、「婦人科疾患の診療を行うにつき十分な経験を有する常勤の医師が1名以上配置されていること」と、当該医師が「器質性月経困難症の治療に係る適切な研修を修了していること」の2点が設けられています。

新設の狙いは早期介入と重症化予防

まず、対象となる疾患を押さえておきましょう。月経困難症とは、月経期間中の月経に伴う病的な症状(下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、食欲不振など)を指し、機能性(原発性)と器質性(続発性)に大別されます。

機能性月経困難症は明らかな原因となる疾患が見つからない場合にいうのに対し、器質性月経困難症と診断されるのは、子宮内膜症、骨盤内炎症(クラミジア感染など)、性器奇形、子宮筋腫、子宮腺筋症、IUD挿入、癒着による牽引痛、骨盤内うっ血など、疼痛の原因となる器質性病変が骨盤腔内に存在する場合です。器質性月経困難症は、重症化すれば癌や不妊につながる可能性があります。

図1は、今回の改定で示された定期的な医学管理のイメージです。この医学管理が新規に導入されたポイントは、続発性疾患の早期発見・介入と、適切な管理に基づいた重症化予防にあります。そのため、留意事項に「治療に当たっては、関連学会等から示されているガイドライン(※)を踏まえ、薬物療法等の治療方針について、適切に検討する」といった、診療の標準化に関する一文が加えられています。
(※筆者注:日本産科婦人科学会の「産婦人科診療ガイドライン2017」を指す)

図1 器質性月経困難症の定期的な医学管理のイメージ (厚労省「令和2年度診療報酬改定の概要(外来医療・かかりつけ機能)」Ⅲ-2 外来医療の機能分化-⑥より抜粋)

算定漏れに要注意!運用上の2つの注意点

それでは、算定要件など診療報酬請求上の注意点を見てみましょう。特に気をつけたい部分として、まずは“算定回数の縛り”があります。「3月に1回に限り算定」ということは、個々の患者の診察の回数などをふまえ算定する必要があるということです。全ての患者に毎回一律で算定するものではないので、算定漏れが発生しないよう注意が必要です。

B001_30 婦人科特定疾患治療管理料
30 婦人科特定疾患治療管理料 250点
1 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、入院中の患者以外の器質性月経困難症の患者であって、ホルモン剤(器質性月経困難症に対して投与されたものに限る。)を投与している患者に対して、婦人科又は産婦人科を担当する医師が、患者の同意を得て、計画的な医学管理を継続して行い、かつ、療養上必要な指導を行った場合に、3月に1回に限り算定する。
2 区分番号A000に掲げる初診料を算定する初診の日に行った指導又は当該初診の日の同月内に行った指導の費用は、初診料に含まれるものとする。
(※傍線は筆者)

また、留意事項通知の(2)にあるように、治療計画の作成と患者への説明および同意取得、さらに指導内容の診療録への記載など極めて煩雑な作業が求められるため、運用上の工夫が必要です。
患者の同意取得については、留意事項などでは必ずしも署名を求められていませんが、後の保険診療における指導・監査対策を考慮すると、治療計画書の「患者署名」によって条件を満たすことが望ましいと思います。この場合、治療計画書を作成・説明した際に、患者の署名(サイン)をもらい、その原本を診療録に保存、控えを患者へ渡す──という運用が考えられます。治療計画書は、日本産科婦人科学会などがフォーマットを示しているのでそちらを参考にするとよいでしょう。

(1) 婦人科又は産婦人科を標榜する保険医療機関において、入院中の患者以外の器質性月経困難症の患者であって、ホルモン剤(器質性月経困難症に対して投与されたものに限る。)を投与しているものに対して、婦人科又は産婦人科を担当する医師が、患者の同意を得て、計画的な医学管理を継続して行い、かつ、療養上必要な指導を行った場合に、3月に1回に限り算定すること。

(2) 治療計画を作成し、患者に説明して同意を得るとともに、毎回の指導内容の要点を診療録に記載すること。なお、治療計画の策定に当たっては、患者の病態、社会的要因、薬物療法の副作用や合併症のリスク等を考慮すること。

(3) 治療に当たっては、関連学会等から示されているガイドラインを踏まえ、薬物療法等の治療方針について適切に検討すること。

※「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」別添1より一部編集の上抜粋

図2:日本産婦人科学会「資料2 診療計画書の例

>>vol.53 新設・排尿自立支援加算は入院+外来のセットで考える─診療報酬請求最前線

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