新設の診療情報提供料(Ⅲ)、3つの算定パターンと注意点──診療報酬請求最前線

2020年度診療報酬改定において特に注目すべき項目は、「B011診療情報提供料(Ⅲ)」ではないでしょうか。これまでは、たとえば診療所から専門的な医療機関に紹介した際に診療情報提供料(Ⅰ)を算定できるのに対し、専門的な医療機関側からの診療状況のフィードバックは診療報酬上で評価されていませんでした。本医学管理料は、こうした状況の改善を図るものです。また、妊婦に対する評価が付加されており、前回の改定で妊婦加算が途中取り下げとなったことを受けての対応と考えられます。それでは、算定要件からみてみましょう。

B011 診療情報提供料(Ⅲ) 150点
注1 別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において、別に厚生労働大臣が定める基準を満たす他の保険医療機関から紹介された患者又は別に厚生労働大臣が定める患者について、当該患者を紹介した他の保険医療機関からの求めに応じ、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を提供した場合(区分番号A000に掲げる初診料を算定する日を除く。ただし、当該医療機関に次回受診する日の予約を行った場合はこの限りでない。)に、提供する保険医療機関ごとに患者1人につき3月に1回に限り算定する。
2 注1に規定する患者以外の患者については、別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において、他の保険医療機関から紹介された患者について、当該患者を紹介した他の保険医療機関からの求めに応じ、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を提供した場合(区分番号A000に掲げる初診料を算定する日を除く。ただし、当該医療機関に次回受診する日の予約を行った場合はこの限りではない。)に、提供する保険医療機関ごとに患者1人につき3月に1回に限り算定する。
3 別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において、産科若しくは産婦人科を標榜する保険医療機関から紹介された注1に規定する別に厚生労働大臣が定める患者又は産科若しくは産婦人科を標榜する別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において、他の保険医療機関から紹介された注1に規定する別に厚生労働大臣が定める患者について、診療に基づき、頻回の情報提供の必要を認め、当該患者を紹介した他の保険医療機関に情報提供を行った場合は、注1の規定にかかわらず、月1回に限り算定する。
(※傍線・太字は筆者)

かかりつけ医への情報提供を評価

この医学管理料は、医療連携に焦点を当て、かかりつけ医への返書や妊婦に関する情報提供に対する3つ目の診療情報提供料として新設されました。
従来からある診療情報提供料(Ⅰ)は紹介先への診療情報提供書、いわゆる紹介状の作成に対する文書料としての意味合いがあり、診療情報提供料(Ⅱ)はセカンドオピニオンを対象としたものです。一方で、診療情報提供料(Ⅲ)は「かかりつけ医機能を有する医療機関等と他の保険医療機関が相互に連携することで、質の高い診療が効率的に行われることを評価するもの」と留意事項通知に示されていることからも、かかりつけ医機能を強く後押しすることが目的と考えられます。

診療情報提供料(Ⅲ)は、かかりつけ医機能を有する医療機関等と他の保険医療機関が連携することで、質の高い診療が効率的に行われることを評価するものであり、かかりつけ医機能を有する医療機関等からの求めに応じ、患者の同意を得て、当該患者に関する診療状況を示す文書を提供した場合に、患者1人につき提供する保険医療機関ごとに3月に1回に限り算定する。
※厚労省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」別添1より抜粋(太字は筆者)

よって、かかりつけ医との連携パターンがかなり細かく設定されており、診療情報提供書の項目や、診療録への記載には十分に注意する必要があります。算定要件を見ると注1~3と、主に3つのパターンが規定されていますが、この辺の解釈はたいへん難しく混乱しやすいので、厚労省からの改定資料の中にあるイメージ図を見ながら解説してみたいと思います。

3つの算定パターン、その注意点とは

1.地域包括診療加算等を届出ている医療機関から紹介された患者

図1:診療情報提供料(Ⅲ)の対象患者・パターン1(厚労省「令和2年度診療報酬改定の概要(Ⅱ-2 患者にとって必要な情報提供や相談支援の推進 -②より抜粋)

算定要件の注1もふまえると、紹介元の条件として、再診料に付帯した地域包括診療加算等を届け出ている医療機関とあります。

注1 別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において、別に厚生労働大臣が定める基準を満たす他の保険医療機関から紹介された患者又は別に厚生労働大臣が定める患者について、当該患者を紹介した他の保険医療機関からの求めに応じ、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を提供した場合(区分番号A000に掲げる初診料を算定する日を除く。ただし、当該医療機関に次回受診する日の予約を行った場合はこの限りでない。)に、提供する保険医療機関ごとに患者1人につき3月に1回に限り算定する。

つまり、脂質異常症や高血圧症、糖尿病または認知症といった慢性疾患を日常的に管理する診療所と、合併症や急変時の対応を担う中核病院との、密接な連携を図るものと解釈されます。
この地域包括診療加算等の「等」が示す届出の範囲は、厚労省の告示において以下の通り施設基準が示されています。算定対象を把握する意味においても、紹介元の医療機関の施設基準などを確認しておくことが大切です。

地域包括診療加算等の「等」に含まれる届出の範囲

次のいずれかに係る届出を行っていること。
イ 区分番号A001の注12に規定する地域包括診療加算
ロ 区分番号B001-2-9に掲げる地域包括診療料
ハ 区分番号B001-2-11に掲げる小児かかりつけ診療料
ニ 区分番号C002に掲げる在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所(医科点数表の区分番号B004に掲げる退院時共同指導料1に規定する在宅療養支援診療所をいう。)又は在宅療養支援病院(区分番号C000に掲げる往診料の注1に規定する在宅療養支援病院をいう。)に限る。)
ホ 区分番号C002-2に掲げる施設入居時等医学総合管理料(在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院に限る。)

また、算定要件の注1には対象患者について、上記の医療機関から紹介された患者以外に「別に厚生労働大臣が定める患者」とあります。注1の施設基準に「妊娠中の者であって、他の保険医療機関から紹介された患者」と記載されていることから、「別に厚生労働大臣が定める患者=妊婦」ということがわかります。これは算定要件の注3の解釈とも関わりますので、具体的に見ていきましょう。

2.産科医療機関から紹介された妊娠している患者または産科医療機関に紹介された妊娠している患者

図2:診療情報提供料(Ⅲ)の対象患者・パターン2(厚労省「令和2年度診療報酬改定の概要(Ⅱ-2 患者にとって必要な情報提供や相談支援の推進 -②より抜粋)

図2は産科連携を対象にしたパターンで、算定要件の注3に該当します。

3 別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において、産科若しくは産婦人科を標榜する保険医療機関から紹介された注1に規定する別に厚生労働大臣が定める患者又は産科若しくは産婦人科を標榜する別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において、他の保険医療機関から紹介された注1に規定する別に厚生労働大臣が定める患者について、診療に基づき、頻回の情報提供の必要を認め、当該患者を紹介した他の保険医療機関に情報提供を行った場合は、注1の規定にかかわらず、月1回に限り算定する。

注3の施設基準として、産科・産婦人科を標榜しているかに関係なく、紹介を受ける医療機関に対し「当該保険医療機関内に妊娠中の患者の診療を行うにつき十分な体制が整備されていること」とされています。より具体的には、施設基準の留意事項に「当該保険医療機関内に、産科若しくは産婦人科を担当している医師又は妊娠している者の診療に係る適切な研修を修了した医師を配置していること望ましい」と示されており、たとえば妊娠糖尿病などの管理を行う専門病院をイメージしたものとなっています。算定上のポイントとしては、受診状況はもちろん、紹介元の標榜科といった情報の把握が極めて重要です。

一方で、前述したように注1にも対象患者として妊婦の記載があるため、混乱しやすい部分でしょう。ただし注3とは違い、「妊娠中の者であって、他の保険医療機関から紹介された患者」と、対象者についてのみ条件が設けられています。前回の改定で途中廃止になった妊婦加算の意味合いを引き継いだものと解釈できます。

3.地域包括診療加算等を届け出ている医療機関に紹介された患者

図3:診療情報提供料(Ⅲ)の対象患者・パターン3(厚労省「令和2年度診療報酬改定の概要(Ⅱ-2 患者にとって必要な情報提供や相談支援の推進 -②より抜粋)

さて、残る3つ目のパターンが図3となります。こちらは算定要件の注2に該当します。

2 注1に規定する患者以外の患者については、別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において、他の保険医療機関から紹介された患者について、当該患者を紹介した他の保険医療機関からの求めに応じ、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を提供した場合(区分番号A000に掲げる初診料を算定する日を除く。ただし、当該医療機関に次回受診する日の予約を行った場合はこの限りではない。)に、提供する保険医療機関ごとに患者1人につき3月に1回に限り算定する。

地域包括診療加算等を届け出ている医療機関が、診療所などから紹介を受けて、紹介元へ情報提供を行った際に診療情報提供料(Ⅲ)を算定できる仕組みです。

最後に、これまで解説してきた3パターンについて、要約したものを図4として整理しました。運用構築の際に参考にしていただけたらと思います。

図4:診療情報提供料(Ⅲ)の要約

>>vol.54 婦人科特定疾患治療管理料の算定、運用フロー構築のポイントは─診療報酬請求最前線

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