2025年に向けて戦略的な病院経営が求められている今、状況に応じたスピード感のある意思決定が求められている。その主な場となるのが、院内での会議である。本日は、セコム提携病院グループの一つ、医療法人誠馨会を引っ張ってきた和田恭一氏に、会議を有意義な意思決定の場とするまでの話を伺った。インタビューを通して、事務職員とその理想像についても垣間見えてきた。
客観的視点を持ち、難局に望む
和田氏が医療に関わるようになったのは、40代最後の頃。セコム本社から医療法人誠馨会へと転籍した。当初医療に関しては素人であったことから、院長らの信頼を得ることには苦労したという。
しかし、クレームを始め病院経営における難局に自らが矢面に立つことで、医師とも患者とも違う第三者の視点をしっかり持ち、難局を乗り切ってきた。逃げない姿勢を示すことで、提携病院の院長をはじめとする病院スタッフと本音で議論できる関係性を構築できたという。
会議は意思決定の場である
こうして病院職員との信頼関係を築いてきた和田氏。会議の進め方として2つの点に留意しているという。
1.『会議は情報共有の場でであるとともに、意思決定の場とする。』
経営に関わる数字を事前にデータを開示・共有しておくことで、より研ぎ澄まされた判断の場にできるという。細かなデータの解釈に頭脳を使いすぎると、表面的な言葉の奥にある真の利害関係や関心をくみとることができない。
そこで、情報共有を事前に済ませておき、意思決定すべきことが何かにフォーカスを当てて、参加者が会議に臨むことができるようなった。
2.『意思決定の場をクリエイトする』
院長会議であってもその進行にも和田氏は関わる。よりざっくばらんな議論ができるよう、場の雰囲気を和ませ、リードし、各院長が活発な意見を言いやすい雰囲気をクリエイトする。情報や議題が出揃うだけではなく、人が揃う場としての配慮を欠かさないことが良い会議の秘訣であると語る。
職種別会議で課題を複眼的に把握する
和田氏は各病院をまとめていくために、提携5病院の院長会議、看護部長会議、事務長会議をそれぞれ実施している。各病院の課題に対する、職種ごとの捉え方の違いを肌で感じることが目的である。
ある時、「全職種が集まる会議では気を遣ってしまい、発言しづらいこともある」という話をある職員から聞いたそうだ。この時、和田氏はこれまでの前例をあえて変革する方法を選んだ。並大抵のことではなかったが、魅力的な医療機関・組織を築き、地域に貢献できる医療法人を作る上では、現場の声を経営に活かすことが最善であるという信念を貫いた。
視点が違えば、病院経営の課題として見えてくるものも変わってくる。複数の視点で課題を検証していくことで、冷静に判断を下すことできるようになった。さらに、職種間の視点の違いを把握することで、各職種間の意思疎通を効果的にサポートすることできるようになったと語る。”ただ集まるだけ”の会議を続けているだけでは、職種間の意思疎通を改善するにはもっと時間がかかったのではないかと当時を振り返る。
これからの事務職に向けて
こういった会議における工夫を通して、「こんな事務職員がいてくれれば」と思うことがあるそうだ。それは、「言葉の行間」や、「心の機微」がわかる人である。
病院はさまざまな専門職が働く場である。その中で各メンバーがどう考えているかを理解し、配慮することで合意形成の仕方もスムーズになる。チームとして医療を提供していくためには、単純に自分の範囲の仕事ができるということだけではなく、周りのメンバーがどう考えて動いているか、常に相手の立場を理解する姿勢が重要と考えている。
和田 恭一(わだ きょういち)医療法人社団誠馨会に、業務提携関係にあるセコム株式会社より転籍し、40代で病院経営に携わる。2012年に新東京病院、そして2014年に千葉メディカルセンターという2つの最新鋭の新病院をオープンし、質の高い医療を提供できるようグループ組織をけん引してきた。
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