“デキる”医事課正職員、どう育てる?【ケース編】─病院経営ケーススタディvol.12

A病院の概要
    1. 病床数:280床(一般病床280床(急性期一般入院基本料1)の総合病院)
    2. 場所:首都圏郊外
    3. 職員数:750名

外部委託の一方で、経営陣からは「医事の人材育てて」の声

病院の医業収入の多くを占める入院会計。年々医事業務が複雑性を増す中で、レセプト管理やDPC対応といった専門性をもち、収入の安定化・増収へとつなげられる人材のニーズは非常に高まっている。A病院でもそれは例外ではなかった。

W医事課長も、「医事の専門性と医療現場への理解を併せ持ち、経営改善のためのプロジェクトをマネジメントできるような人材が必要だ。早急に育成してほしい。」と経営陣から折に触れて言われていた。

しかし、医事業務の外来部門は会計を含め委託しており、入院部門は正職員数名と派遣の職員で回している。中には医事の専門性に秀でた職員もいるが、あくまで医事業務を追求することに関心が高く、病院経営全体をとらえる視点が欠けている。

「どうすれば、将来の病院経営を担えるような医事課員を育成できるだろう?」
W医事課長はため息をついた。

ため息をついているのはW医事課長だけではなかった。A病院に入職してまだ数か月の医事課正職員Oも、ひそかに悩みを抱えていた。

Oは前職では病院で総務の仕事をしており、30代半ばで幹部候補としてA病院に中途入社した。新入社員ではあるものの、経験的にも年齢的にも、プロジェクトをマネジメントする側になれると考えていた。

「まずは病院の収入を理解できるようになるため」と医事課の入院部門に配属された。医事に関しては前職で施設基準を担当していたので、少しは理解しているつもりであった。しかし、現場で計算業務に従事するとわからないことばかりで、派遣社員に質問しなければならないことや、こまかな指導を受けることにストレスを感じている。周囲の医療職からは正社員の自分より、ベテランの派遣社員の方が信頼は厚いことにも辟易していた。

今が踏ん張りどころと自分に言い聞かせながらも、総務の仕事なら周囲からの信頼も得られるはずなのに……という考えが拭えない。

医事課で自分が成長している、新しい視点を身につけているという手ごたえのない生活に、
「いつになったら、自分の経験を活かした仕事ができるようになるだろう?」
今日もまた、そんな思いが頭をよぎるOであった。

【設問】
  1. 今回のケースではどこに問題があると思いますか
  2. もし自分がW医事課長の立場ならどう対応しますか
  3. 今後、A病院ではどのような対策・仕組みづくりが必要だと思いますか

【解説編】はこちら

西・貴士(にし・たかし)
パナソニック健康保険組合 松下記念病院 管理課 兼 医療情報管理室勤務。大阪厚生年金病院の医事課にて10年勤務し、オーダリングシステム・電子カルテ・DPCの導入に携わる。医療系のベンチャー企業で3年勤務した後、松下記念病院の医事課に入職。医事課長を経て、2020年8月に現職。現在の担当業務は用度、情報システム、診療情報管理など。経営管理修士(MBA)、医療経営士1級、上級医療情報技師、診療情報管理士の資格を有する。(過去のインタビュー記事

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