2014年度診療報酬改定で痛手の入院医療、カギは地域包括ケア病棟(前編)

著者:木村憲洋(高崎健康福祉大学健康福祉学部医療福祉情報学科准教授)

2014年度の診療報酬改定は、入院医療にとってとても厳しいものとなりました。当初は一般病棟入院基本料7対1の施設基準の厳格化に注目が集まりましたが、それ以外の要因も合わさって、入院医療全般が厳しい局面をむかえていると言えます。こうした中、病院経営の一筋の光明となるのが地域包括ケア病棟入院料であることは間違いないでしょう。2014年度の診療報酬改定では、主に3つの要因によって病院における病床稼働が悪くなるように仕組まれています。

なぜ、“入院医療にとって厳しい改定”と言えるのか―3つのキーワード
(1)「医療・看護必要度基準の厳格化」

一般病棟入院基本料7対1では、入院患者の15%が看護必要度の基準を満たしている必要がありますが、2014年度の改定ではこれを、より急性期の特性を踏まえた形へと「適正化」するために、評価表のA項目が見直されました=下表参照=。

7対1の基準厳格化

また、これまでであれば上記の15%の基準が緩和されていた医療機関(※救命救急入院料を算定する医療機関であれば基準免除/専門入院基本料7対1を算定する医療機関であれば10%としていた)から、緩和措置を撤廃し、同じく15%の基準を適用することとなりました。

業界では改定当初からこうした厳格化が引き金となって、「7対1を算定する医療機関は大幅に減少するのではないか」とささやかれていました。ただ、実際に蓋を開けてみると、国が想定するほどの減少には至らないのではないかという声もあります。どこの病院も厳格化対策に頑張った結果、15%の壁を越えることができているようです。

(2)「90日以上の特定除外患者の扱い」制度の廃止

617900368ad5628a7790284e9a3ca221_sこれまで、一般病棟に90日以上入院している長期の入院患者は、難病など厚生労働大臣が定めた状態であれば、平均在院日数の計算から除外され、特定入院基本料という低い診療報酬点数で算定することを逃れることができました。

しかし、2014年度の改定で、この制度が廃止されたことにより、医療機関はこれらの特定除外患者を平均在院日数への計算対象とするか、療養病棟入院基本料での算定を行うのか、選択しなければならなくなったのです。特定除外患者を多く受け入れていた医療機関には、転換が求められる内容となりました。

(3)「短期滞在手術入院基本料3」の範囲拡大

b2f327520995aa6406f2b38948c4b850_s「短期滞在手術入院基本料3」は「短期滞在手術等入院基本料3」へと名称変更し、これまで2項目だった対象検査・手術が、23項目へと大幅拡大=下表参照=しました。入院5日目までに行われるこれら23項目の検査・手術については、入院から手術に関する事項の診療報酬点数が、包括となりました。もちろん、入院基本料も包括なので、入院日数が伸びたからといって収入が増えるわけでもありません。これまで出来高で算定できていた診療報酬点数が包括となることの影響は、非常に大きなものがあります。

短期滞在手術等入院料3

これに加えてとどめとなるのが、「短期滞在手術等入院基本料3」を算定した患者は、平均在院日数の計算対象から外すように定められたことです。対象になっている手術や検査によって平均在院日数の短縮を図ってきた医療機関には、大打撃となります。

 

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