2014年度診療報酬改定で痛手の入院医療、カギは地域包括ケア病棟(後編)

前述の通り、2014年度診療報酬改定では、病床稼働を悪化させるようないくつかの要因が盛り込まれた一方で、地域包括ケアシステムを支えるための診療報酬点数が創設されました。外来では地域包括診療料、入院では地域包括ケア病棟入院料がこれにあたります。

かかりつけ医機能を求める「地域包括診療料」

4b082ac866f9dec4b2d8f319f15a58b8_s地域包括診療料(1503点)は、許可病床が200床未満の病院または診療所において、脂質異常症、高血圧症、糖尿病、認知症のうち2以上の疾患を有する外来患者を対象としています。

この点数のポイントは、他の医療機関と連携の上、対象となる患者がかかっている医療機関をすべて把握するとともに、処方されている医薬品すべてを管理し、カルテに記載するように求められていることです。こうした算定要件などから総合すると、地域包括診療料を算定する医療機関には、地域の高齢者などのかかりつけ医としての機能を全うすることが求められていることが分かります。

地域包括ケアを支える入院施設の役割を求める「地域包括ケア病棟入院料」

7f5b85dba9796e7ea329e9c2f8ca87b3_s一方、地域包括ケア病棟入院料(1の場合2558点、2の場合2058点)は、これまでの亜急性期入院医療管理料を廃止することで創設されました。この入院料を算定する医療機関には、名前の通り地域包括ケアシステムを支えるための入院施設としての役割が期待されています。

亜急性期入院医療管理料に比べ、1日当たりの入院料は地域包括ケア病棟入院料の方が高い点数になりますが、一方でリハビリテーションが必要な患者については包括となるように設定されています。これまで亜急性期入院料がリハビリテーション料を別途算定できたことを考えると残念ですが、回復期リハビリテーション病棟との差別化がこれではっきりするのではないでしょうか。

地域包括ケア病棟入院料は、回復期リハビリテーション病棟のように疾患を選ぶ必要がありません。病院経営の観点から言えば、「入院が必要であるが医療行為があまり必要でない患者」にとって最適です。ちなみにこの入院料は、医療行為のほとんどが包括であり手術料も包括となっています。

このようなことからこの病棟の運営を考えると、在宅療養している患者のレスパイト入院や肺炎、熱発、脱水による一時的な受入、急性期医療後の在宅療養へ向けた後方病院機能の強化により受入が期待できます。

地域包括診療料と地域包括ケア病棟入院料のそれぞれが地域包括ケアシステムを支えるために役立つことは間違いありません。

地域包括ケア病棟と病院経営

dc7ca2120ecde335cdddc1d3240406d0_s地域包括ケア病棟は、入院期間が60日までとされ、看護師の配置は13対1で良いこととなっています。このため一般病棟入院基本料7対1や10対1の病院にとって、地域包括ケア病棟入院料を算定することは難しくありませんし、算定に伴う体制変更で看護師が余剰になったとしても、一般病棟への配置転換を行うこともできるでしょう。

また、稼働が落ちている一般病棟を地域包括ケア病棟に転換することで、退院後の受入先が決まっていない患者の受け皿をつくることもでき、入院日数を伸ばすことも可能となります。

これからの病院経営を考えると病棟マネジメントを一般病棟に地域包括ケア病棟入院料を組み合わせないと、病床稼働率を上げることは難しいでしょう。

木村憲洋(きむら・のりひろ)
武蔵工業大学工学部機械工学科卒。国立医療・病院管理研究所病院管理専攻科・研究科修了。神尾記念病院などを経て、高崎健康福祉大学健康福祉学部医療福祉情報学科准教授。
著書に『病院のしくみ』(日本実業出版社)、『医療費のしくみ』(同)など。

 

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