13:1・15:1病院における地域包括ケア病床導入の効果とは?専門家が徹底解説!

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地域一般基本入院料(旧13:1・15:1)を算定する病院は、構造的に収益が上がりづらくなっている──。こう指摘するのは、エムスリーキャリアで病院経営支援に携わる福田陽子氏です。つまり病床単価の低さや、紹介患者の減少といった課題は、病院の自助努力だけではカバーしにくいというのです。そしてこの構造から脱却するための突破口の一つが、地域包括ケア病床だと福田氏は強調します。
2019年7月に開催された「0からの地域包括ケア病床導入対策セミナー」では、同氏が主に収益増の観点に絞って、導入による効果やポイントを詳しく解説。その一部をまとめました。

いま、地域包括ケア病床を導入したほうがいい理由

全病院の約32%が届け出ている地域包括ケア病床。近年は増加ペースが落ち着いたものの、2014年に新設されて以降、導入・転換に踏みきる病院は後を絶ちません。普及が進む背景には、病床再編で地域包括ケアシステムが出来たとき、「自院が生き残れないかもしれない」という危機感が大きいと福田氏は語ります。

一方で、地域包括ケア病床の将来に疑問を持っている病院も。福田氏はそれを、「地域一般入院基本料からの転換を検討している病院に関しては杞憂」だと一蹴します。

「地域包括ケア病床を導入しませんか、というお話をすると『“はしご外し”(地域包括ケア病床の点数引き下げ)があるのでは』と危惧する医療機関も少なくありません。

ですが、病床数は、2年前時点でのデータにはなりますが、地域包括ケア病床の届出病床数(約8万床)が地域一般入院基本料(旧13:1・15:1あわせて約7万床)をすでに上回っています。また、1日当たりのレセプト請求点数も、地域一般入院基本料より地域包括ケア病床の方が高いです(図1参照)。地域包括ケア病床が今後の診療報酬の体系に見合った包括算定で創設されていることをふまえても、『地域一般入院基本料の方が地域包括ケア病床よりもリスクは高い』というのが私の見立てです」(福田陽子氏)

図1:1日あたりのレセプト請求点数(中医協「平成28年度調査結果(速報)の概要について」の資料から抜粋)

つまり、地域一般入院基本料(旧13:1・15:1)を算定している病院にとっては、今後の病床再編に対応する上でも、また収益の観点からも、地域包括ケア病床の導入・転換はメリットが大きいということです。

転換によるメリットとは?

入院料による収益は「病床単価 × 入院患者数」という2つの変数に分解されます。福田氏によると、「処置などを要する患者が少ないために平均病床単価が高くない」という病院であれば、地域包括ケア病床の導入によって病床単価と入院患者数、双方の改善につながるといいます。つまり、収益を構成する両方の変数で改善が期待できるのです。

【地域包括ケア病床導入に適している病院】
以下の条件のうち、1つでも該当する場合は地域包括ケア病床導入により改善が期待できます。

  • 病床単価の平均があまり高くない(目安:1日4000点以下)
  • 紹介患者が減っている
  • 在院日数の上限により、病床稼働率を制限せざるをえない
  • 療養病棟の継続が困難と考えている

病床単価改善のポイントはベッドコントロール

中医協の資料によると、地域一般入院基本料、特に旧13:1である入院料1および2は病床稼働率が2012年より低下傾向にあり、2017年度は74%を下回っています(図2参照)。同入院料は在院日数について24日以内という制限があるため、たとえベッドに余裕があり、「もう少し入院していたい」という患者ニーズがあっても対応できないという現状があります。

図2:入院料別の病床稼働率(2019年6月「入院医療等の調査・評価分科会」資料より抜粋)

ベッドをいたずらに休床させておくよりも、一部を地域包括ケア病床に転換することで、自院内での転床が可能になるため患者様の目線でもより選択肢が広がると福田氏は語ります。また、あくまでも患者様の医療ニーズに即していることが前提ではありますが、ベッドコントロールを意識的に行うことで、病床単価を改善することも可能ということです。一般病棟(出来高算定)と地域包括ケア病床(包括算定)、それぞれの病床単価の推移をみると、以下のようになります。

入院直後は検査や処置などを行うため病床単価が高くなりますが、急性期を脱すると在院日数が伸びるほど下降していきます。一方で地域包括ケア病床は基本的に包括算定のため、日数に限らず点数は一定。受け入れ疾患に制限もないため、最大60日間算定が可能です。

「患者様にとって必要な処置などから点数を概算し、地域包括ケア病床の病床単価水準を下回るタイミングで転床すれば、入院料はそこで下げ止まり、その分が増収となります。もちろん、患者様の容態に応じた医療的な判断が前提ですので、全てこの通りにいくわけではありませんが、それでも一定の経営改善効果が期待できるケースが多いです。

当社が支援している病院は100床未満の規模が多いのですが、地域包括ケア病床を導入したことにより、平均して月間400~500万円ほどの増収につながっています。さらに、地域包括ケア病床に転床してからは平均在院日数のカウントから除外されるため、地域包括ケア以外の病床の看護必要度や平均在院日数といった指標の改善にも効果的です」(福田陽子氏)

地域包括ケア病床が集患に有利な理由

さらに、地域包括ケア病床を導入することで、入院患者数の増加につなげることも可能と福田氏は語ります。一部の入院料には要件としていわゆる在宅復帰率が設定されていますが、復帰先の定義は入院料によって異なります。これをふまえ、「こういう患者さんならこの病院で急性期の治療をして、その後はこちらの病院に移して…」というおおよその患者の流れ、病病連携のパスが各医療圏単位で出来ています。

しかし、地域一般入院基本料1~3(旧13:1、15:1)を算定している病床は急性期一般入院料1(旧7:1)の在宅復帰先に含まれておらず、制度上、連携パスの中に組み込まれにくい構造があります。このため、急性期からの集患が難しくなっているという側面があります。当該病院が患者を増やすには、なんらかの打ち手が必要です。

集患の主な方法としては、(1)救急車の受け入れ件数を増やす、(2)外来→入院の移行率を上げる、(3)紹介患者を増やす―の3つが考えられます。しかし、中小病院にとって(1)はなかなか難しい選択肢でしょう。また、外来→入院の移行率は全国的に見ても低いと言われているため、(2)もあまり現実的とは言えません。

残すは施設やクリニックといった病院以外の施設と連携を強める、もしくは前述した連携パスに入ることにより、紹介患者を増やすという手です。地域包括ケア病床であれば急性期一般入院料1(旧7:1)の在宅復帰先として認められるため、前方病院や近隣施設等への営業を強化することで、紹介患者増に結びつけることは容易になります。実際に、地域包括ケア病床導入により病床稼働率があがる病院は少なくありません。

ただし冒頭でも述べたように、地域包括ケア病床は全国で普及が進んでいます。導入しただけで紹介患者が集まるフェーズは過ぎていますから、自院の地域包括ケア病床ならではの強みや魅力を併せて打ち出していく必要があります。

導入・運用における3つのポイント

それでは実際に地域包括ケア病床を導入・運用する際、どんな点に注意すべきなのでしょうか。福田氏は「実務的な留意点はこまごまとありますが、大きなポイントとしては、(1)院内の合意形成、(2)実績要件のキープ、(3)早期のPR活動―の3つ」と語ります。

院内で合意形成を図るのは当然のことと思われるかもしれませんが、内部調整がうまくいかず増収効果が高まらないなどのケースは多いです。地域包括ケア病床は医師、看護師、リハビリスタッフ、事務職といった多職種が協力し合わないと、要件をクリアできません。福田氏いわく、重要なのは“正しい知識をもった旗振り役がいるか”。実際に導入・転換するとなると、おそらく各部門から「〇〇だからできない」という声が上がると思います。1つ1つの声に対して、「これは〇〇だから大丈夫です」「ここはこうやってクリアしましょう」と対応できる存在がいるかどうかが成否を左右すると言います。

また、実績要件をしっかりキープするためには、各部門の責任者が指標を適切に管理し、情報共有を行わなければなりません。たとえば看護必要度やリハビリの単位数、在宅復帰率といった実績要件は、1部署で管理するよりも複数部署で総合的に管理した方が効率的な場合があるそうです。

「たとえば当社が支援している病院では、週1ペースで多職種によるベッドコントロール会議を開催し、各部門の視点を共有しながら意思決定を図る、ということを試みています。たとえば医事課から『病床単価を鑑みると、急性期病棟のこの患者さんはそろそろ地域包括ケア病床に転床してもらっては』という提案をして、医師からは医療的な観点から、看護部門からは看護ケアや重症度の観点から、MSWは在宅復帰の観点から……と話し合いながら、最終的に転床するかどうかの判断をします。地域包括ケア病床という“器”を用意するだけでは増収に結びつきませんから、地道な運用を怠らないことが大切です」(福田陽子氏)

最後に、遅くとも地域包括ケア病床としてスタートする2~3か月前には前方病院や施設、クリニックなどへPRを行うと良い、ということです。特に、「慢性期病院」「結核病院」といった従来の医療機能のイメージが根強い場合は、「地域包括ケア病床を開設しました」と大々的に告知しないと、せっかく導入しても認知されない恐れがあるそう。資料をつくって連携できそうな病院をまわるなど、早期に積極的な営業活動を行うことが重要だと言います。

「とはいえ、本来業務もある中で病床転換やベッドコントロールにまつわる業務を漏れなくこなすのは易しいことではありません。実際の転換にあたってはこまごまとした条件を満たす必要もあり、通則の解釈に戸惑う場面もあるかもしれません。当社では経営戦略立案~実行までトータルでサポートしています。中でも実行支援には力を入れており、ベッドコントロールや営業といったフロント部分までお手伝いさせていただいているため、実務的なご質問やご相談もいつでも対応可能です。もし疑問や不安などがあれば、ぜひお気軽にセミナーやWebサイトにてお問い合わせください」(福田陽子氏)

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<写真・文:角田歩樹>

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