ハードワークの中で求められるキャリア戦略―医師への選択、医師の選択【第20回】

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著者:野末睦(あい太田クリニック院長)

 
もう少し大学院での経験をお話して、皆さんの選択の参考にしたいと思います。

臨床よりも教育・研究が求められる大学教官

大学の講師になると3つの分野での働きを期待されます。それは「教育」「研究」「臨床」です。そして、これらの分野の優先順位は、この順番なのです。このことについては、折に触れて当時の教授から言い含められました。「君は文部教官だから、教育者なのだよ。教育を第一に考えなくてはいけない」と。実際、給与もいわゆる教師の給与ベースで支払われます。ですから、例えば国立病院の医師の給料と比較しても、国立大学の医師の給与はかなり低いのです。

教育の次に来るのが研究です。研究の先には、学会発表や論文作成があります。そして最後が臨床、すなわち患者さんの治療なのです。一般の方が、大学の教官に期待していることと、乖離しているとは言わざるを得ませんが、教授選において、研究業績がもっとも重要視されることからも、この事実はうかがい知ることができます。

でも実際の生活における時間配分は、どうしても臨床に傾きがちになります。臨床をする中で、若手医師や学生への教育も入ってきますが、どうしても研究や論文作成に割く時間が足りなくなります。それを補うために、個人の時間をいかに有効に使うのかが、最も重要になってきます。

私の場合は、朝7時過ぎに出勤し、夜の6時ごろまで臨床を行い、軽く夕食を取り、12時ごろまで実験などの研究をしていました。帰宅するのは1時ごろ。ときどき、いわゆる飲み会があったりするときは早く帰るという感じです。

キャリア形成は戦略的に

講師になって、5年ほどすると、大腸分野の責任者になったので、茨城県全体から、難しい病状の患者さんが紹介されるようになっていきました。このように患者さんの治療にあたりつつ、研究生活も継続していたのですから、かなりのハードワークでした。でも振りかえってみると、論文作成に対する時間配分が足りませんでした。

患者さんのデータを使った論文でも、実験の結果の論文でも、作成にはそれなりの集中力と時間配分が必要です。後に教授選に応募するにあたって私の直前に教授になった先輩に話を聞きに行ったところ、その先生は、毎日3時に起床して論文を書いていたとのこと。それには驚くとともに、戦略を間違えたなあと感じたものでした。もう少し、頭を働かせることに時間を使うべきだったと。その先輩は、ただ、毎晩8時には寝るようにしていたとのことでしたので、睡眠時間そのものは、私と大差なかったと思います。

「大学のスタッフになって何を学びますか?」への私的結論

後輩を指導することによって、自分自身の進歩が加速され、加えて研究、論文作成の習慣の重要性を知ることになります。自分自身のキャリア形成に関して戦略的になる必要があります。私は、この点を認識できていませんでした。

≫次回に続きます≪

野末睦(のずえ・むつみ)

初期研修医が優先すべきこと2―医師への選択、医師の選択(野末睦)筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。

 

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