テレビは見ない方が良い?―医師への選択、医師の選択【第4回】

著者:野末睦(あい太田クリニック院長)

K先生との思い出は尽きないのですが、もう一つ、選択に関する思い出を。それは小学校を卒業した春休みだったと思います。友達数人とK先生のご自宅に、お礼を兼ねて遊びに行った時のことです。

「テレビは見るな」恩師からのアドバイス

思い出話の間にも、中学生活についてのアドバイスを2ついただきました。一つは「18禁はほどほどにしとけよ」と「テレビは見るな」でした。最初のアドバイスは、私にはまったくわかりませんでした。一緒に行った友達は皆理解したみたいでしたので、私がだいぶ奥手だったのかもしれません。それにしてもずいぶんさばけた先生ですね。こちらのアドバイスは何の影響もなかったのですが、もう一つのアドバイスはとても大きな影響を及ぼしました。家に帰ってから父と祖母にこの話をしたら、「じゃあ、そうしよう」といって、それ以来、中学3年間、私の家族全員がテレビをずっと見なかったのです。また夕食の後は、中学生になったころにやっと退院してきた母が、俳句の話をしてくれました。句会の様子だったり、自分で作った俳句に込めた思いだったり、気に入った俳句の解説をしたりと、最初は「俳句なんて」と思っていた私も、いろいろと聞いているうちに、自然と引き込まれていくのがわかりました。

ちょっと脱線しますが、母から聞いた内容を少し書いてみたいと思います。「俳句の中には、うれしいとか悲しいというような、感情を表す単語は入れないで、情景描写を用いて、読者の心の中に、そのような感情を呼び起こすようにするのがコツだよ」とか「大野林火という人の俳句で、『雪の水車 ごっとんことり もう止むか』というものがあるけれど、どうだい、あたりの情景が彷彿としてくるだろう」とか、いろいろ教わりました。小一時間、こんな話をして、母は自分の部屋にこもってしまいます。私も自分の部屋に入って、勉強をしたり、本を読んだりという習慣が自然と身につきました。高校に入るころ知ったのですが、あの時のK先生のアドバイスを忠実に守ったのは、私だけだったようです。一人っ子だったために比較的素直だったことと、家族の協力があって実行できたと思うのですが、今振り返ってみると、いい選択をしたなあと思います。

「どんな方法でセルフイメージを確立しますか?」への私的結論

小学校の先生には、褒めて長所を伸ばしてくれる人を選びましょう。どうしてもだめなら転校も視野に。テレビは見ないようにしましょう。家族とのコミュニケーションはとても大事ですが、食事の時などを中心に行い、それぞれが一人で考える時間も確保しましょう。

 

野末睦(のずえ・むつみ)

テレビは見ない方が良い?―医師への選択、医師の選択(野末睦)筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。

 

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