本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣が、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報の取り組みを取材・報告します。
著者:松本卓/病院マーケティングサミットJAPAN Executive Director
小倉記念病院 医療連携課
目次
新年度になり、病院も異動の時期。中には新しく広報担当になる方もいるかもしれませんね。さて、広報担当者の一日はどんな風に始まるのかご存知でしょうか。
今回は小倉記念病院の広報担当である私が実践している、朝のルーティンワークをご紹介します。
「私の真似すれば貴院の広報もうまくいく!」とは言いませんが、日々チェックしているデータやサイト、広報コンテンツをコンスタントに生み出すコツなんかをお伝えしたいと思います。
私の場合、始業時間15分前にパソコンを開きますが、そこからのルーティンをご紹介します。
1.メールをチェック
メールチェック自体は、多くのビジネスパーソンがされていることです。
当院が使用しているメールツールには病院アドレス宛に届いたメールを転送する機能があるので、私は「広報の特性上、緊急性の高い問い合わせにも対応できるように」と病院の許可を得て、プライベート用のGmailに転送されるように設定しています。
終業後に届いたメールもスマホでチェックでき、内容を把握できているため、始業時には返信作業だけします。まぁ、仕事とプライベートの棲み分けをきっちりした方がいいという意見もあると思いますが、私は常にメールを確認できる方が安心できるため、このような運用にしています。
2.エゴサーチ
SNSで、当院に関する投稿がないか検索し、口コミなどをチェックします。
TwitterとFacebookを同時に確認できるよう、yahooのリアルタイム検索を活用しています。検索窓に病院名を入力し、右上の「リアルタイム」という文字をクリックすると、簡単にSNS上の投稿内容を確認できます。
私はTwitterとFacebookの両方をチェックしていますが、本音が書かれやすく、拡散されやすいTwitterの確認だけでも十分だと思います。
検索結果については、ご批判の場合は当該部署に情報共有しています。また、新型コロナウイルス感染症のクラスターが起こった時期は、全てのツイートを役員に共有していました。
当院だけでなく、競合となる他病院名についても、たまに検索をかけて評判をチェックしています。
3.Googleアナリティクスを確認
前日のユーザー数やコンバージョン数を確認します。
コンバージョンとはeコマースで例えるなら「何人商品を買ってくれたのか」という指標です。多くの病院はオンライン販売を行っているわけではないため、何を指標にするのか難しいところですが、当院では外来医師担当表ページの閲覧数を1つの指標にしています。「外来医師担当表ページまで見にくるユーザーは、受診する可能性がある」という考えからです。
リクルートサイトであれば募集要項ページなど、サイトの目的に沿って「本当に当院に興味がないと、ここまで見ないだろう」というページの閲覧数などを指標にするといいでしょう。
私は個人的にあるクリニックの広報もサポートしているのですが、そこでは予約ページ閲覧者数と電話問い合わせ数をコンバージョンとして捉えています。表示している電話番号にタグを仕込むことで、電話問い合わせ数もアナリティクスで計測することができます。
4.YouTubeにアップロードしたコンテンツのコメントを確認
当院ではYouTubeチャンネルを開設しており、定期的に動画コンテンツをアップロードしています。時々視聴者からコメントが届くので、その確認をします。
同時に、アップロードした動画コンテンツの再生回数もチェックするようにしています。
5.医療情報サイトを閲覧
医療に関連する情報を得るために、毎日複数のサイトをチェックします。
<日経メディカルオンライン>
会員登録が必要なサイトですが、まずは日経メディカルオンラインの「医師TOP」ページにアクセスします。
各記事は疾患ごとにカテゴリ分けされているので、特に小倉記念病院に関連が強い循環器・脳卒中の記事に目を通すようにしています。新たな研究結果やガイドライン変更など医療業界の動きが見えるので便利です。
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/doctor/
<m3.com>
こちらも会員登録が必要ですが、コンテンツの豊富さではダントツではないでしょうか。
私の場合は、まずサイト内の「臨床ダイジェスト」をチェックします。日経メディカルと同様にメインで読むのは循環器・脳卒中関連ですが、チェックしたい疾患を登録できるのが便利です。登録してある「循環器疾患」のタブをクリックするだけで、関連する最新情報を抽出することができます。
先日、m3.comに末梢動脈疾患のガイドラインが7年ぶりに変わったという記事が掲載されていたので、すぐさま当院の担当医にメールし、「来月の医療機関向けオンラインセミナーで講演してほしい」と依頼しました。
医師からは「なんで事務の松本さんが、その情報をもう知っているんですか!? すごいですね」と驚かれました。こういうことは結構あるのですが、あえて「m3.comで読みました」とは明かさず、「僕、循環器のストーカーなんで」と得体の知れない事務員を演出するようにしてます(笑)。
また地域ニュースページでは、病院がある福岡県の医療業界でおきた事件やニュースを確認しています。
https://www.m3.com/clinical?tc=sub-m3com
6.医療行政情報サイトを確認
中医協の動きや診療報酬改定の情報など、医療行政に関わる情報も確認しています。
私が参考にしているサイトは以下の2つです。
<GemMed> https://gemmed.ghc-j.com/
<CBnews> https://www.cbnews.jp/
7.マーケティング関連サイトを確認
どれだけ医療情報を仕入れたり、いい広報コンテンツを制作したりしても、伝えたい相手に届けられなかったら何の意味もありません。
他院の広報担当者からも「どうやって広報・マーケティングの勉強をしたらいいのかわからない」と相談いただく機会は多いのですが、私はマーケティング関連サイトをチェックし、一般企業の事例から学んでいます。
顧客や見込み顧客(病院の場合は、患者さん・患者さん候補・連携医療機関など)とどのように接点を持つか、どのように情報を伝えるかという発想は、病院業界ではあまり見られません。病院とは予算規模が異なることが多いのですが、できる・できないにこだわらず、まずは一般企業のさまざまな事例を知り、面白がってみましょう。
そうしているうちに、ふと「うちのコンセプトの場合、こうやったらできるかも」と思いつくことがあるはずです。また、イベントやセミナー、研修会などの情報も得られるので、自己成長の機会も見つけられます。
以下のサイトを見るだけでも、色々発見があると思います。
<宣伝会議デジタルマガジン> https://mag.sendenkaigi.com/
<Advertimes> https://www.advertimes.com/
<markezine> https://markezine.jp/
8.GoogleカレンダーでToDoをチェック
Googleカレンダーを見て、その日のToDoを確認します。
医療・広報・マーケティングの知識がつき、やりたいことが見えてきて、「さぁ、実行して結果を出すぞ」と思っても、なかなか行動できていないという方はいませんか?自分を追い込むことができない人は、「Googleカレンダー」でToDo管理をすることをおすすめします。
私はやらないといけないこと・やった方がいいことは、すべてGoogleカレンダーに登録して、その通りに実行しています。「将来的には考えた方がいいよな……」と思う事案も、まずは実行の日時を決めて、Googleカレンダーに登録するんです。そしてその日時がきたら必ずやる。「Googleカレンダーの言うことは絶対。Googleカレンダーは神様である」くらいに思い込むことが大切です。
私が広報コンテンツをコンスタントに生み出すことができているのは、このToDo管理の賜物です。
おまけ:Google広告を確認
これは私が個人的にサポートしている医療機関での広報施策に関連することなので、日々のルーティンワークには入りませんが、Google広告の運用についてもたまに確認しています。
予算額が毎月決まっており、基本的には同じ検索ワードで運用しているので、大きな動きはない前提です。では何を確認しているのかというと、「Googleにban(アカウント停止)されていないか」という点です。Google広告の場合、検索ワードが急に不適切と判断され、広告表示されないことがあるので、その点をチェックしています。
おまけ2:外来予約状況とメール問い合わせ内容を確認
こちらも広報をサポートしているクリニックでの施策ですが、web予約システムで外来を運用しているので、直近1ヶ月の外来枠の予約の埋まり具合を確認しています。
またクリニック宛のメールと院長の返信を確認し、新規の患者さん確保につながりそうな問い合わせか(=コンバージョンにつながりそうか)を判断しています。
以上が私の朝のルーティンワークです。
「広報を担当することになったけど、何から始めたらいいのかわからない」という方は、やってみて損はないと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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