2026年1月21日、中央社会保険医療協議会(中医協)第643回総会が開かれました。今回の改定は、持続的な物価高騰と賃金上昇、そして2040年頃を見据えた医療提供体制の再構築という大きな節目に位置づけられています。

賃上げと物価高騰への重点的な対応
今回の改定のポイントのひとつは、医療従事者の処遇改善と、物件費高騰への対応です。
- 確実な賃上げの推進
看護職員や病院薬剤師などの医療関係職種の賃上げを確実に実施するため、2024年度に導入されたベースアップ評価料等の仕組みが再編・強化されます。また、入院基本料や初・再診料で対応されていた職種についても、賃上げの実効性を確保する新たな仕組みが構築される見通しです。 - 物価高騰への評価新設
人件費、材料費、光熱水費等の高騰を踏まえ、初・再診料や入院基本料の見直しが行われます。特に令和8年度(2026年度)以降の物件費のさらなる高騰に対応するため、担う医療機能に応じた「新たな評価(加算項目等)」が設定されます。 - 食費・光熱水費の基準額引上げ
入院時の食費基準額が1食40円、光熱水費基準額が1日60円引き上げられます。
急性期・高度急性期機能の厳格化と再編
入院医療については、病院の「機能・特性」をより重視した評価体系へとシフトします。
- 実績要件の導入
特定集中治療室(ICU)管理料やハイケアユニット(HCU)入院医療管理料において、救急搬送件数や全身麻酔手術件数といった「病院の実績」が新たに要件化されます。 - 急性期充実体制加算等の見直し
拠点的な医療機関を評価する総合入院体制加算や急性期充実体制加算が見直されます。また、紹介・逆紹介の割合が低い特定機能病院等に対しては、初診料等の減算対象が拡大されるなど、機能分化の圧力が強まります。 - DPC/PDPSの標準化
診断群分類点数表の改定や医療機関別係数の見直しが講じられ、標準化と効率化がさらに推進されます。
「地域包括医療病棟」の定着と高齢者救急への対応
2024年度に創設された「地域包括医療病棟」は、今回の改定で高齢者救急の主要な受け皿としてさらに位置づけが明確化されます。
- 基準の緩和と体系見直し
平均在院日数やADL低下割合、重症度、医療・看護必要度の基準が見直されます。また、医療資源投入量や急性期病棟の併設状況に応じた評価が導入されるほか、リハビリ・栄養・口腔管理の一体的な取組を推進する加算体系が整備されます。 - 後方支援機能の評価
在宅や介護施設からの緊急入院を受け入れる後方支援体制を高く評価するため、地域包括ケア病棟等の初期加算の範囲や、入退院支援に係る評価が拡充されます。
医療DXの推進と業務効率化の評価
人手不足が深刻化する中、ICTやAIの活用による業務改善が診療報酬上でも強力に後押しされます。
- 看護配置基準の柔軟化
見守り機器やICT等を組織的に活用し、業務効率化を実現している病棟では、入院基本料等に規定する看護職員の配置基準を柔軟に運用できるようになります。 - 医療DX推進体制の評価見直し
電子処方箋の普及状況や電子カルテ情報共有サービスの進捗を踏まえ、医療DX推進体制整備加算等の評価が見直されます。
リハビリテーション・栄養・口腔管理の連携
質の高いアウトカムを目指し、リハビリ、栄養、口腔管理を一体的に行う体制への評価が強化されます。
- 早期介入の推進
発症早期からのリハビリテーション介入や、土日祝日の実施体制に対する新たな評価が導入されます。 - 地域包括ケア病棟への拡大
これまで一部の病棟に限られていたリハビリ・栄養・口腔連携体制加算が、地域包括ケア病棟でも算定可能になります。
効率化・適正化による制度の持続可能性確保
保険制度の持続性を高めるための「適正化」も継続されます。
- 後発医薬品・バイオ後続品の使用促進
後発医薬品の安定供給体制に対する新たな評価が行われる一方で、長期収載品の選定療養における患者負担の見直しなど、さらなる使用促進策が講じられます。 - 重複投薬・ポリファーマシー対策
医師と薬剤師が同時に訪問して残薬整理を行う場合の評価新設や、リフィル処方箋の適切な推進に向けた様式見直し等が行われます。
今回の改定率は、本体プラス2.41%となっており、その多くが賃上げや物価対応に充てられています。病院経営においては、これらの原資を確実に現場へ還元しつつ、厳格化される急性期の実績要件や、柔軟化される配置基準にどう対応していくかが、今後の安定運営の鍵となります。










