DPC算定ルールの変更から、DPC病棟→地域包括ケア病棟のベッドコントロールを考える──診療報酬請求最前線

2020年度診療報酬改定について、今回はDPC算定ルールの変更を考えてみましょう。DPC制度に係るルール変更部分は、主に次の2点が挙げられます。
(1)地域包括ケア病棟(病室)への転棟(転室)時の算定方法
(2)再入院時に入院期間が通算される加算等の取り扱い
本稿では、(1)の地域包括ケアについて解説します。まずはDPC対象病棟→地域包括ケア病棟の転棟に対する算定方法の変更です。

1.DPC対象病棟→地域包括ケア病棟へ転棟する場合

図1 DPC対象病棟→地域包括ケア病棟への転棟について(厚労省「令和2年度診療報酬改定の概要」より抜粋)

厚生労働省は改定理由を「患者の状態に応じた適切な管理を妨げないよう、同一の保険医療機関において、DPC対象病棟から地域包括ケア病棟に転棟する場合の算定方法を見直す」としています。

この「患者の状態に応じた適切な管理」とは、地域包括ケア病棟における、入院受け入れ体制を指します。厚労省は地域包括ケア病棟/病室の機能を「急性期治療を経過した患者及び在宅において療養を行っている患者受け入れ、並びに患者の在宅復帰支援等」と定義しています。(図2)

図2 地域包括科病棟の役割

ご存知の通り、①急性期後の受け入れはpost-acute、②在宅等からの受け入れ(亜急性期)はsub-acuteの表現が用いられます。

点数ありきのベッドコントロールにストップ

今回の改定は、①急性期後の受け入れ(post-acute)にメスを入れるものです。というのも、同一医療機関内で①を行う際、転棟時に入院料の切り替えが発生します。このため、診療報酬の多寡(DPC日当点と地域包括ケア病棟入院料の比較)によって転棟時期が調整されているという側面がありました。こうした運用へストップがかかったのです。

具体的な変更内容としては、DPC対象病棟から地域包括ケア病棟へ転棟後も、DPC分類における期間Ⅱまでは、DPC点数で算定されることになりました。全国の平均的な在院日数である入院日Ⅱを過ぎてⅢに達した患者は、post-acuteの対象と捉えることができるため、入院日Ⅱを基準にしたと思われます。本改正により、入院日Ⅰ~Ⅱの期間において、地域包括ケア病棟入院料の点数がDPC点数を上回ったタイミングでの転棟は防止されることになります。

期間Ⅱを超える患者に対しては転棟基準の検証を

さて、本改定は、地域包括ケア病棟の運用・入院料算定にどの様な変化をもたらすのでしょうか。

  • 自宅等から入院した患者割合が1割5分以上(これまでは1割以上)
  • 自宅等から緊急患者の受入れ3月で6人以上(これまでは3人以上)

など、施設基準の実績部分(図3)の数値が厳格化されたことから、特に中小規模の病院に対しsub-acute機能の強化が図られることは明白です。

図3 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料の施設基準(厚労省「令和2年度診療報酬改定の概要」より抜粋

一方で、DPC算定の観点からは、入院料2・4の「一般病棟から転棟した患者割合が6割未満(許可病床数400床以上)」という条件を横目で見ながら、DPC対象病棟→地域包括ケア病棟への転棟について、捉え方を改める必要があると思うのです。

つまり、地域包括ケア病棟入院料について、期間ⅡまでをDPC算定範囲とするのであれば、DPC対象病棟で期間Ⅱを超える患者をしっかりと把握し、コーディング変更の点検はもちろんのこと、転棟の可能性を検証するといったマネジメントも徹底すべきかもしれません。

2.DPC対象病棟内で転室する場合

図4 DPC対象病棟内での転室について(厚労省「令和2年度診療報酬改定の概要」より抜粋)

同一医療機関内において、病室単位で地域包括ケア病棟入院医療管理料を算定しているケースでは、これまでのルールが変更なく適用されます。すなわち、一般病棟内にある地域包括ケア病室の場合には、DPC包括点数の満了期間(期間Ⅲまで)をDPC点数で算定することになります。
なお、療養病棟内の地域包括ケア病室へ転室する場合は、地域包括ケア病棟入院医療管理料を算定する旨が疑義解釈にて明記されています。以下をふまえ、混同してしまわないように注意しておきましょう。

問)DPC算定の対象となる病床から区分番号「A308-3」地域 包括ケア入院医療管理料を算定する病室に転室した場合は、どのように算定するのか。
答)転室前に算定していた診断群分類区分によって、当該診断群分類区分における入院日Ⅲまでの期間は診断群分類点数表により算定すること。(この期間は、地域包括ケア入院医療管理料は算定できない。)また、入院日Ⅲを超えた日以降は、地域包括ケア入院医療管理料を算定すること。

問)区分番号「A308-3」地域包括ケア病棟入院料について、診断群分類点数表に従って診療報酬を算定していた患者が、同一の保険医療機関内の他の病棟における地域包括ケア入院医療管理料を算定する病室に転室する場合に、転室後の診療報酬はどのように算定すればよいか。
答)診断群分類点数表に従って診療報酬を算定していた患者が、同一の保険医療機関内の他の病棟における地域包括ケア入院医療管理料を算定する病室 (以下、地域包括ケア病室という。)に転室する場合の算定方法は、なお従前のとおり。具体的には、同一の保険医療機関内の他の「一般病棟」における地域包括ケア病室に転室する場合は、診断群分類点数表に定められた期間Ⅲまでの間、診断群分類点数表に従って算定し、同一の保険医療機関内の「療養病棟」における地域包括ケア病室に転室する場合は、地域包括ケア入院医療管理料を算定する。
※2020年3月31日の事務連絡より抜粋(太字傍線は筆者)

>>vol.57 【後編】重症度の指標記載を要件化、救急医療管理加算を読み解く─診療報酬請求最前線

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