【後編】重症度の指標記載を要件化、救急医療管理加算を読み解く──診療報酬請求最前線

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2020年度の診療報酬改定では、救急医療管理加算の要件として、患者の重症度等に応じた指標を明確にし、その値をレセプトに記載させることが規定されました。保険請求事務の手間が思った以上に増えたという印象ではないでしょうか。前回の概要説明に引き続き、救急医療管理加算の保険請求と運用面に注目し、解説してみたいと思います。

指標記載を現場に落とし込むために必要なのは?

本加算は入院日から7日間にわたり算定できるという収益性の高さもあり、重症度の捉え方にばらつきや疑義が生じているという指摘が中医協の議論でもなされていました。要件厳格化は、保険請求の適切化を図るものでしょう。当加算を多く算定する急性期の医療機関は、これまでの運用を改めて確認・検証し、指標の記載漏れを防止できるよう点検体制を確立していく必要があります。

救急医療管理加算に定められている重症度の定義は、次の10項目です。

ア 吐血、喀血又は重篤な脱水で全身状態不良の状態
イ 意識障害又は昏睡
ウ 呼吸不全又は心不全で重篤な状態
エ 急性薬物中毒
オ ショック
カ 重篤な代謝障害(肝不全、腎不全、重症糖尿病等)
キ 広範囲熱傷
ク 外傷、破傷風等で重篤な状態
ケ 緊急手術、緊急カテーテル治療・検査又はt-PA療法を必要とする状態
コ その他の重症な状態

この中で請求時に求められる指標として、たとえば意識障害のJCSや心不全のNYHA、呼吸不全のP/F比など、具体的な項目が「診療報酬請求書・明細書の記載要領」(図1)に示されています。

しかしこれらの項目を診療録から拾い出し、レセプトに記載するという作業は極めて煩雑で、診療録の記載が乏しいケースも想定すると現実的ではありません。つまり、受け身の保険請求事務では成り立たなくなっているのです。医師が算定への認識を深め、指標の入力を効率よく行えるよう配慮するなど、現場の協力を得られるよう事務部門がこれまで以上に積極的に働きかけていく必要があります。たとえば、電子カルテ上のテンプレート機能を用いて記載の負担を軽減する、あるいはエクセルで指標記載用の書式を作成し、入力は選択式にするといった工夫が考えられるでしょう(図2)。

図2 救急医療管理加算の指標チェックシート例

一方で、医事側もJCSスコアが意味するところの意識レベルやNYHA心機能分類など、各指標の評価方法に関する知識が必須となるでしょう。冒頭でも述べたように、当該加算についてはたとえばJCS0(意識清明)の患者を“救急医療管理が必要な状態”として保険請求するなど、算定の妥当性が疑問視されるケースが一定数発生しています。要件厳格化により、医事が保険請求時のチェック機能をしっかり果たせるかどうか、が問われているとも言えるのです。

なお、厚生労働省から示されている「保険診療の理解のために」では、医師と医事の協力関係について、次のように謳われています。保険請求の適正化がよりシビアに求められるいま、医師・医事の連携強化に向けた取り組みは、もはや不可欠と言えそうです。

(11) 適正な費用の請求の確保(第 23 条の 2)
保険医は、その行った診療に関する情報の提供等について、保険医療機関が行う療養の給付に関する費用の請求が適切なものとなるよう努めなければならない。
「請求関係は事務に一任しているのでこんな請求がされているとは知らなかった。」 というようなことがないように保険医はレセプトを確認する必要がある。
※厚労省「保険診療の理解のために:医科(令和元年度)」より抜粋

>>vol.56 【前編】重症度の指標記載を要件化、救急医療管理加算を読み解く─診療報酬請求最前線

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