著者:木村憲洋(高崎健康福祉大学健康福祉学部医療福祉情報学科准教授)
ここ最近の医療政策における最重要のトピックと言える地域医療構想。策定のガイドラインが出されたものの、なかなか難しいので、図を多めにして説明したいと思います。
医療機関にとっての“かじとスクリュー” 地域医療構想とは
2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、現在の医療体制では対応できなくなります。そこで、都道府県は2015年4月から地域医療構想を策定し、質の高い医療と介護を地域で効率的に提供するための施策を実行することになっています。
医療業界を、“たくさんの医療機関が乗った船”に例えると、地域医療構想は、“かじとスクリュー”に当たるのではないかと思います。
乗船している医療機関は、船の中を動きまわっても大海原で下船することはできません。2025年に向かって、地域医療構想がどんなかじ取りで進んでいくのか理解しておかなければ、医療機関は地域で取り残されてしまう可能性があります。
地域医療構想の策定手順
地域医療構想の策定と実現に当たっては、都道府県単位・2次医療圏単位で会議体が開かれ、様々なステークホルダーが携わることになっています=図1参照=。
都道府県単位の会議体の代表例が、都道府県医療審議会や保険者協議会。医療専門職・行政・保険者の代表などで構成されるこれらの会議体は、地域医療構想の策定に係る議論をするのはもちろん、医師会・薬剤師会・病院団体といった医療提供者、住民、市町村などの意見を吸い上げる役割も果たします。
なお、今後、都道府県は地域医療構想を策定・実行支援するに当たり、財政的な責任を持たなければなりません。このような意味では、医療政策に関する権限と責任が国から地方へ移譲するというのも、地域医療構想がもたらす大きな変化と言えます。
地域医療構想の実行に当たっては、2次医療圏単位でつくられる“地域医療構想調整会議”がカギを握ります。地域医療構想調整会議では、地域医療構想を推進するために必要な、ステークホルダー間のすり合わせが行われることとされています=議論内容の詳細は文末=。なお、“地域医療構想調整会議”の結成は、圏域連携会議 など、既存の枠組みを活用する形でも良いとされており、実際に圏域連携会議が地域医療構想調整会議と成り代わっていくだろうと思われます。
議論の進め方(『地域医療構想策定ガイドライン』より抜粋)
地域医療構想調整会議において病床の機能の分化及び連携に関する議論をする場合における議論の進め方の例を以下に示す。なお、必ずしもこのとおり行うことを求めるものではない。
ⅰ地域の医療提供体制の現状と将来目指すべき姿の認識共有
病床機能報告制度による情報や既存の統計調査等で明らかとなる地域の医療提供体制の現状と、地域医療構想で示される各医療機能の将来の医療需要と必要病床数について、地域医療構想調整会議に参加する関係者で認識を共有。ⅱ地域医療構想を実現する上での課題の抽出
地域の医療提供体制の現状を踏まえ、地域医療構想を実現していく上での課題について議論。ⅲ具体的な病床の機能の分化及び連携の在り方について議論
例えば、ある構想区域において、回復期機能の病床が不足している場合、それをどのように充足するかについて議論。現在、急性期機能や回復期機能を担っている病院関係者等、都道府県が適当と考えて選定した関係者の間で、回復期機能の充足のため、各病院等がどのように役割分担を行うか等について議論。ⅳ地域医療介護総合確保基金を活用した具体的な事業の議論
ⅲで議論して合意した事項を実現するために必要な具体的事業について議論。地域医療介護総合確保基金を活用する場合には、当該事業を基金に係る都道府県計画にどのように盛り込むか議論し、都道府県において必要な手続を進める。
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