“人を伸ばす教師”とは?―医師への選択、医師の選択【第3回】

著者:野末睦(あい太田クリニック院長)

質問:どんな方法でセルフイメージを確立しますか?
※編注:質問に対する「私的結論」を次回掲載します。

小学校高学年から中学校にかけては、いわゆる自我の目覚めの頃ですが、一方では、教師などの自分を取り囲む者からの影響もかなり大きいのではないでしょうか。人間形成や習慣の醸成に役に立ついい影響はもちろん、頑固さや理不尽さ、あるいは無理解を、教師をはじめとする周囲の大人に対して感じ、反社会的な考えをし、時として行動を起こしてしまうこともあるのではないでしょうか。こういった意味で、どのような学校を選ぶか、そしてその結果として、そこにどのような教師がいるのかなどはとても重要な選択であると思います。

忘れられない恩師とのエピソード

思い返してみると、私は教師に恵まれていました。現在もそうだと思いますが、当時の長野市では、いわゆる公立学校のレベルが高く、多くの子供たちは自分の住んでいる地区の小、中学校に楽しく通っていました。ですから学校選択で迷うことはなかったのですが、どのような教師が担任になるかは選ぶことができませんでした。幸い私の担任になった先生はとてもいい先生ばかりで、中でも忘れられないのは、小学校2年生から4年生までの3年間を担当してくれた、女性のK先生です。
思い出はたくさんあるのですが、とにかく皆のやる気を引き出すのがとても上手でした。年一回行われるクラスマッチでは、皆を鼓舞していつも優勝に導き、終わると決まって、クラス全員を教室の中に集めてアイスクリームをごちそうしてくれました。「絶対に誰にも言うなよ」といいながら。棒に刺さった長方体のアイス。その頃アイスクリームは珍しくて、高価だったので、皆が歓声を上げていただいたのを鮮明に思い出します。

いままで誰かに話したことはなかったのですが、もう時効ですね。個人的なことでは、ある時、同級生のN君と私が、K先生に個室に呼ばれました。そして言われたことは、「君たち2人は、とても勉強ができる。だから、授業中に手を挙げて答えさせるときに、君たちを当てることはしないからね。君たちを当てちゃうと、ほかの子ができないうちに進んじゃうから、わざと当てないので、がっかりしないようにね。ちゃんと私は知っているからね。」と言われたのです。強烈な言葉でしたが、私は、しっかり理解してもらっているのだという感覚を得ることができ、とても幸せな気持ちになりました。一人一人の能力を最大限に伸ばすという意味で、とても素晴らしい先生であったなあと思います。

 

野末睦(のずえ・むつみ)

“人を伸ばす教師”とは?―医師への選択、医師の選択(野末睦)筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。

 

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