医師人生を通じて感じる「ゼロになる感覚」―医師への選択、医師の選択【第18回】

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著者:野末睦(あい太田クリニック院長)

もう少し大学院での経験をお話して、皆さんの選択の参考にしたいと思います。

「先生」ではなく「さん」

まず放射線医学研究所で研究を始めた時に、新しく指導教官になったSさんから、研究室内ではお互いを「さん」づけで呼びましょうと言われました。バックボーンや職種に関係なく。

最初は、その先生(基礎医学者の医師)を「さん」と呼ぶことに抵抗がありましたが、皆がそう呼んでいるので、次第に慣れました。と同時に「たかが呼称。されど呼称」でしょうか。研究室内が、とても平等で働きやすく、また協力し合う雰囲気に満ちていることが分かるようになりました。今でも、できるだけ「さん」と呼ぶように心がけ、また様々な方に私を呼ぶ時は「野末さん」と呼んでほしいとお願いしています。

「ゼロになる感覚」から生まれる感謝の気持ち

それともう一つ。4年間の大学院生活を終え、卒業したあとは、また研修医生活に戻りました。4年間、臨床には全くタッチしませんでしたので、3年目の医師として後期研修を大学の消化器外科で始めた時には、私の同級生は既に後期研修を終え、地域の病院に就職。人によっては、その病院の外科のトップになっていたりして華々しく活躍していました。ところが私は4年下の研修医と同じ身分で、消化器外科グループとしては最も底辺で研修を始めたのです。

この感覚は強烈でした。ちょうど大学院に入った時にその環境の変化にかなり戸惑って、途方にくれた時と同じような違和感です。言葉を変えると「ゼロになる感覚」とでも言いましょうか。いままで築いてきたものが一見通用せずに、すべて一から出直すという感覚。この感覚が蘇ってきたのです。この感覚はとても恐ろしいものでした。「ゼロ」になる前まで培ってきた人間関係、リソース、優位性。それらが一気になくなるのです。そして、ある意味プライドもずたずたになります。ただその結果、とても謙虚な気持ち、周りの方に感謝する気持ちが芽生えてくるのです。挫折を経験した分、いい意味でのプライドがしっかりと確立されたのだと思います。振り返ると、この「ゼロになる感覚」は、この後も海外留学、関連病院への出向、そして徳洲会系の病院で病院長になった時、そしてまさに今この瞬間も感じている感覚で、私の土台を築いている感覚の一つだと思います。

「大学院に進学するメリットとは何でしょうか?」への私的結論

大学院では、医師としての一生を形作る基本的な考え方を身に付けることができると思います。それを「エリート」「ゼロになる感覚」と表現しましたが、これらについてはこれからも、折に触れお話していく予定です。

≫次回に続きます≪

野末睦(のずえ・むつみ)

初期研修医が優先すべきこと2―医師への選択、医師の選択(野末睦)筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。

 

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