どの医療機関でもできる、医師を確保するためのブランディング方法―医師への選択、医師の選択【第44回】

著者:野末睦(あい太田クリニック院長)

わたしは庄内余目病院の院長として、「理念」のみならず、「診療上のコンセプト」というものを就任数年後に設定しました。今回はその効用について解説します。

診療で大切にしてほしい2つのコンセプトとは

わたしが「診療上のコンセプト」として打ちだしたのは、以下の2つです。

(1)地域の熟年高齢者に、医療、福祉を包括的に提供する。
(2)専門店機能を備えたコンビニ的病院

(1)のコンセプトは、こちらの連載でも以前お示しした「専門領域およびその周辺領域を診療できる医師」という部分に呼応しています。(2)は、気楽に受診できる病院としての位置づけを踏まえたものにしていますが、そればかりではなく、「いくつかの領域では専門的で高度な医療を提供していこう」という意志も示しています。言い換えれば病院のブランド化を図ることで、いくつかの領域で山形県一、日本一を目指していこうということです。

前稿で挙げた「創傷ケアセンター」などはまさに(2)のコンセプトに基づいて開設したものですが、まさに理念、コンセプトの勝利とも言えるような結果を導いています。現在、わたしは群馬県在住ですが、庄内余目病院の創傷ケアセンターに移ってきた医師たちは関東地方と比較しても、とても質が高い。優秀な医師をひきつける役割をこの創傷ケアセンターが担っているのです。

病院の魅力をより効果的に伝えるために

もう一つ、医師確保戦略においてとても大事な「商品」があります。それは院長や診療部長などの「人」です。応募してくる医師にとって、病院そのものとそこで働く同僚、(特に中小規模病院では)院長の影響は大きいと思われます。医師に魅力的に思ってもらえる病院の院長とはどんな存在であるべきか―わたし自身いつも自問自答しつづけてきました。

院長個人をブランディングする上では、「院長をどのように露出させていくか」も重要です。わたし自身も自らの考えを社会に発信し、ある種のブランドを確立することを目指していましたが、SNSの発達によって、この点は、とてもやりやすい状況になっていると感じました。つまり、ホームページ、ブログ、Twitter、Facebookなどのインターネットを使った広報は必須で、これらと連動して、病院広報紙やマスコミ、さらには書籍の刊行などがとても大事だと思われます。

最後に、肝心の医師に対するマーケティングはどのように行えばよいのでしょうか?わたしは、いわゆる医師転職の仲介業者の賢い利用が大事だと思っています。現在、大学医局の人材保有力は確実に減少してきているので、大型病院以外での医局に頼った人事は、とても不安定になってしまいました。ですから、このような業者を上手に利用することが必要ではないでしょうか?庄内余目病院では、わたしが院長在職中に、毎年700万円ほど医師獲得のための経費を計上していましたが、そのうちの何割かは、仲介会社に支払う手数料となっていました。

「医師を採用するためには、どうしたらよいでしょうか?」への私的結論

理念に基づいて医師を獲得する上では、病院、院長のブランド化も必須です、仲介業者も上手に利用したいところです。

≫次回に続きます≪

野末睦(のずえ・むつみ)

初期研修医が優先すべきこと2―医師への選択、医師の選択(野末睦)筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。

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