
2025年12月、2026年度診療報酬改定の基本方針が了承されました。今次改定の基本方針が前回の基本方針からどのように変わったのか、病院経営に携わる皆さまにとって重要な項目をピックアップしてご紹介します。

前回改定から共通(継続)している内容
共通するのは、「賃上げ・物価高騰への対応」「医療DX」「機能分化」の3大テーマです。これらは単発の課題ではなく、継続的な政策トレンドとして定着しています。
- 物価・賃金上昇への対応
医療機関の経営維持のため、物価高騰と賃金上昇への対応が最優先課題として掲げられています。 - 医療DXの推進:
ICT活用による業務効率化、医療情報の有効活用は引き続き中心的なテーマです。 - 働き方改革とタスク・シフティング
医師の長時間労働是正、他職種への業務移管(タスク・シェアリング/シフティング)、チーム医療の推進は継続しています。 - 機能分化と連携
入院医療の機能に応じた評価、外来機能の分化、かかりつけ機能の評価、地域包括ケアシステムの推進は一貫した方針です。 - 後発医薬品の使用促進
医療費適正化の観点から、バイオ後続品(バイオシミラー)等への置き換え推進は継続しています。
2026年度の基本方針で除かれた(またはトーンダウン)された内容
2024年度は「制度開始の初動」や「2025年問題」に焦点が当たっていましたが、2026年度ではそれらが達成・経過した前提の内容へと変化しています。
「ポスト2025」という表現
前回改定では、「ポスト2025を見据えた…」という表現が見られた一方、2026年度診療報酬改定では、ターゲットイヤーが完全に「2040年頃」にシフトしました。
働き方改革の「時間短縮の実効性担保」
前回は働き方改革の開始直前だったため、「労働時間短縮の実効性担保」という強い表現が用いられていました。2026年度診療報酬改定では、働き方改革は「推進」フェーズに入っており、より実務的な「基準の柔軟化」などに焦点が移っています。
2026年度の基本方針で強調または具体化された内容
より強調されたり具体化された内容としては、「経済環境の変化(インフレ)」へのより詳細な対応と、「人手不足」に対する規制緩和(基準の柔軟化)、そして「2040年」への長期視点が挙げられます。
「日本経済が新たなステージに移行」という認識
デフレ脱却・インフレ経済への移行を前提とした「物価・賃金の上昇」が基本認識の筆頭に挙げられました。
物価高騰対応の対象拡大(委託費等)
2024年度は「食材料費、光熱費」が中心でしたが、2026年度は「委託費」や「医療材料費」等の物件費の高騰も明記され、より広範なコスト増への対応が示唆されています。
「診療報酬上求める基準の柔軟化」
人手不足が深刻化する中、従来の人員配置基準等を維持することが困難になることを見据え、「基準の柔軟化」という緩和策が明記されました。
「医師の地域偏在対策」の強調
診療科偏在に加え、「地域偏在」への対策が具体的方向性として強く打ち出されています。
文言の変化から読み取れる病院経営のポイント
今回の基本方針で押さえておきたい点は、「基準の柔軟化」が明記されたことです。人身配置基準の緩和が期待できるため、人件費や採用に関するコストが軽減できる可能性があります。また、2040年に向けて 「治す医療」から「治し、支える医療」への機能転換が推進されています。急性期から回復期への機能転換、病床転換が病院経営にとってプラスに働く可能性があるでしょう。
2025年12月時点では、個別項目の点数が明らかになっていないため、どこまで踏み込んだ内容になるかは未知数ですが、議論の行方に注目です。











