本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣が、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報の取り組みを取材・報告します。
目次
- 力を入れて制作した広報動画…。でも、どのくらい見られてる?
- 小倉記念病院の動画視聴実績を公開!Facebookでの平均再生時間はわずか13秒
- 「もっと効率よくて波及力がある、病院広報のツールはないのか?」への答え
力を入れて制作した広報動画…。でも、どのくらい見られてる?
今回は病院広報の観点で、「公式SNSで発信する動画って、そんなに見られていないですよ」という話をしたいと思います。
私が勤務する小倉記念病院は、これまで公式LINEのフォロワー数が4,000人超えと多く、ブロック率が14%程度と低いことを自慢してきました。その理由は「公式LINEで、医師が病気や最新治療を紹介する動画を配信しているからです」と。病院広報に医師の露出度が重要なことは、この連載でもこれまでお伝えしてきていると思います。
それではみなさん、病院が力を入れて制作した動画を、公式LINEやFacebook、Youtubeで配信したとき、人はどの程度見てくれていると思いますか?チェックする指標は、動画を見る人数と、見られている時間です。
結論から言いますと、「そんなに見てねぇじゃん」ということになります。
あれほど台本を練って、医師のスケジュールを押さえて、納得がいくまでテイク(撮影)を重ねて、意外と時間がかかる動画編集までやって……。それで「そんなに見てねぇじゃん」は、悲しいです。でも視聴者ってそんなもんなんです。
小倉記念病院の動画視聴実績を公開!Facebookでの平均再生時間はわずか13秒
では実際に当院が製作した、脳動脈瘤に対する新たな治療法である「フローダイバーターステント」に関する動画の、各SNSでの配信結果をみなさんにお見せしましょう。
当院の脳卒中センター長が解説している動画で、2分55秒です。
▼画像をクリックするとYoutubeでご覧いただけます
LINE
フォロワー4,163人中、ブロックされずに配信されるユーザーは3,458人。そのうち動画を開いた人は2,548人で、動画を最後まで見てくれた人は332人。フォロワー数の1/10以下ですよ!! そもそも1,000人近くが開くことさえしないなんて衝撃でした。
フォロワーの年齢層が若かったら、まだわかるんです。
でも当院のLIENフォロワーは、70%が50歳以上です(※下のグラフを参照)。年配の方って律儀なイメージあるじゃないですか。「届いたら一応見てやるか」という方が多そうじゃないですか!? でもそういうわけじゃないんですね。
続いてFacebookの配信人数は、1,591人。そのうち1分以上再生したユーザーは88人。平均再生時間は13秒。最後まで見てくれた人はかなり少ないでしょうね。
Youtube
当院では、Youtubeは動画のサーバー代わりに利用しているので、「Youtube自体をバズらせよう」とは全く考えていないのですが、参考までに分析データをお見せします。
動画をアップしてから2週間で、再生回数70回。視聴者は少ないですが、40%の人は最後まで見てくれているようです。ほかの病院では再生回数を伸ばしている事例もあるので、Youtubeの運用はもっと工夫できると思います。また今後、新しい学びや発見がありましたら、ご紹介したいと思います。
ちなみにLINEとFacebookには、Youtubeのリンクではなく、動画の生素材を投稿するようにしています。理由は、リンクだとなかなか開いてもらえないからです。例えばLINEの場合は、動画の生素材の場合、ユーザーが動画部分をタッチしなくても、勝手に再生が始まります。
「Youtubeの再生回数を増やすこと」を目指してしまうと、「なんとかYoutubeに繋げなくては」と試行錯誤することになると思います。でもその目標設定は適切でしょうか?こちらの事情でユーザーに手間を取らせるよりも、ユーザーフレンドリーな運用の方が「自院のことを知ってもらう」という最終的な目的につながるはずです。
「もっと効率よくて波及力がある、病院広報のツールはないのか?」への答え
病院広報の担当者に、「公式SNSは意外と見られていない」という話をすると、「えぇー、じゃあそんなツールを使うのは辞めて、もっと効率的で波及力のある取り組みをやりたいなぁ」と考えてしまうかもしれません。
でも、効率的で波及力があるツールって何でしょうか?
例えばテレビCM? ローカルTVの午前6時台でも、そんなに安い料金では放送できません。自由診療の美容整形はテレビCMで集患しているケースもありますが、保険診療ではそれほど事例がないですよね。
ブランドとは、「タッチポイント(顧客との接点)におけるユニークなイメージの積み重ね」で構築されるものです。まずは、目の前にいるたった1人を感動させられるコンテンツが重要。そのコンテンツが少しでも多くの人たちに届くように、ツールの力を借りるわけです。それが少人数にしか届かなかったとしても、これを繰り返していくしかありません。
病院広報は早めに取り組んだもの勝ちです。現実的には「コツコツが、勝つコツ」というシンプルな戦法しかないと思います。どこも亀のスピードでしか進めないんですから、できるだけ早くにスタートして、競合との距離を稼いでおきましょう。
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