「こんな事務職がいてくれたら」―2025年に向けて戦略的な病院経営が求められている今、スキルが高い病院事務職の需要が高まっています。「市場価値が高い病院事務職」のポイントを、前回に続き、医療機関と病院事務職のマッチングに携わる濱岡勇介氏(エムスリーキャリア 医療コンサルティンググループ)に聞きました。
40歳からが分かれ目!転職市場に見る病院事務職のキャリア
知識や資格よりも大切なこと
―今ニーズが高まっているのは、どんな病院事務職でしょうか。
医療機関の経営層が中途の病院事務職に求めるのは、実績です。つまり、単に医事や総務のことを“理解している”というだけでは不十分で、『どこまで自分の手足を動かし、病院経営に貢献できたか』が重要だということです。資格を持っていること以上に、『専門性を活かして何をしたか』が評価対象になっていると感じます。
医事課出身であれば、単にレセプトを細かくチェックできるというだけではなく、プラスアルファの働きが高く評価されます。たとえば、『加算を取るために現場の医療スタッフに提案を行い、売上にこれだけ貢献した』など、行動力を発揮した経験は大きな武器になります。
医療機関が医事課経験者を採用する背景には、『他院の視点を持っている人に、自院のレセプト請求を見てもらって機会損失がないか見て欲しい』という思いがある場合もあります。主体性を持って業務に携わる病院事務職は重宝されます。
―総務課出身の場合はどうでしょうか。
総務課も基本的には同じく実績重視だと思いますが、特に新たな施設や科目の立ち上げに携わった経験があると、評価が高いようです。
ただ、立ち上げにしても、“何にどこまでかかわっていたのか”が重要です。指示に従う立場だったのか・指揮する立場だったのか。計画の立案や医療機器の購買・人材採用などにどこまで貢献したかなど、かなり突っ込んで聞かれることが多いですね。
事業計画の策定に携わっていたとしても、それが何年先を想定したものなのかによって、経験内容も大きく変わります。資金調達や病院建て替え構想まで含めて策定したのかどうかなど、踏み込んで考えてみると、その方の強みが見えてくることもあります。
転職活動をしている病院事務職の方には、気になる医療機関があれば、地方厚生局に届け出られているデータを見てみて、『自分ならここの部分に経営改善を図る』と腹案を持った上で面接に挑むように勧めています。面接時に具体的な提案ができれば、『入職後に何がしたいのか』を伝えることにもなりますし、院長との相性を探ることにもつながりますので。
医療スタッフとのコミュニケーションが取れるか
―そのほか、転職市場においてニーズが高い病院事務職のポイントはありますか。
「医師・看護師などさまざまな職種の医療スタッフとコミュニケーションがしっかりと取れること」だと思います。
これは単に『コミュニケーション能力が大事だ』という意味に留まりません。『病院経営をうまく軌道に乗せるためには、事務部門と医療スタッフの協力が必要不可欠である』とよく理解した上で、院内関係を良くしようと働きかけられることが高く評価されているのだと思います。日常的に医療スタッフから、勤務環境や診療体制への率直な意見を聞き出せるような方は、評価されると思います。
40歳からが分かれ目!転職市場に見る病院事務職のキャリア
濱岡勇介(はまおか・ゆうすけ)
慶應義塾大学経済学部卒業後、都市銀行にて法人取引、与信管理に従事。300床規模の医療機関などに対して、経営改善の提案、中長期計画の立案、融資を実行。その後、製造業の事業再生プロジェクトに参画、2012年にエムスリーキャリア株式会社入社。現在は、医療コンサルティング部門にて、医療機関の戦略立案とその実行を支援。
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