病院の目玉づくりと医師採用ルート多角化で難局乗り切る―富士重工業健康保険組合 太田記念病院(前編)

太田記念病院は、乗用車のスバルなどで知られる富士重工業株式会社の発祥地・群馬県太田市で、同社の健保組合病院として戦後間もなく(前身は戦前)開設された総合病院です。2012年の新築移転を機に名称も変更し、現在、群馬県東毛地区の3次救急病院として地域医療の中核をなしています。医局の引き上げに遭遇した後、2006年頃から医師採用活動に二人三脚で注力してきた院長と人事担当部長に、採用成功のためのポイントについて伺いました。

《今回インタビューにご協力いただいた方》
佐藤吉壮氏(院長)
大川恵一氏(企画管理部/人事担当部長)

新築移転を機に救急を充実化

病院概要―医師採用において大事にされているのはどのようなことですか。

佐藤院長
いま医師の獲得は全国的に困難な状況にありますが、関東地方も例外ではありません。特に茨城県、栃木県、群馬県など北関東エリアは立地条件でアピールすることができず、どこの病院も苦労しています。このような状況下で医師を採用するために大事なのは、病院としての独自色を打ち出すための「目玉」となるものをつくることだと思います。

そう考えるようになったのは、2004年の新臨床研修制度に伴って医師の引き上げが始まった頃でした。2004年に68人いた医師がわずか4年間で12人も減ってしまい、産婦人科は分娩を休止する事態にまで陥りました。当時、2005年12月から2006年1月にかけて、慌てて30以上の大学や医療センターに連絡したのを覚えています。ところが、ようやく協力を取り付けられたのは1か所だけといった状況でした。医局に対してアピールできるものがなかったのです。

そこで当院では、病院の目玉として「救急の充実」を掲げるようにしました。なぜ救急かというと、幅広く症例を扱えるということで、いま若手医師の中で人気が高いからです。
2012年の新築移転時、大学病院から熱心な救急医3人を迎え入れることができ、救命救急センターをオープンしました。この医師たちのおかげで、現在では救急車の受け入れ台数が県内トップレベルになっています。
そして、医局派遣だけでなく、初期研修医が直接入職するという成果も生まれています。医学生の見学も増えてきて、2014年の医師臨床研修マッチングでは初めてフルマッチするまでに至りました。

医局以外の採用ルートも本格化

医師数の変遷
― 現在、採用経路は各種どのくらいの割合になっていますか。

大川部長
いま常勤医師が93人いますが、このうち大学からの医局派遣が58%、他ルートからの入職が42%です。後者のうち4割に当たる16.8%分が紹介会社経由、残りがウェブサイトや人脈により直接採用したものです。

佐藤院長
「医局6:就職4」は良いバランスだと感じています。実は、医局の引き上げが始まってから、人材紹介会社や知人紹介による採用にも力を入れようになりました。

医局派遣は医師確保の手段として最も安心できますし、今も各医局に挨拶に伺っています。ただ、医局に頼り切っていたら病院は生き残れない時代なのです。40年前に医局派遣が90%以上を占めていたことを考えると、いまはウェイトが減りましたね。

大川部長
医局派遣以外を見ると、紹介会社を利用し始めた2006年から2014年までの9年間に面接した医師数はちょうど100人でした。紹介会社経由が42人、ご自身で来た医師が58人です。100人中61人が採用となりました。採用率61%というのはかなり高い数字ではないかと思います。

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