5部署8業務を経験 聖路加国際病院の10年間で学んだこと―医療法人あかつき会 髙﨑慶本部長【前編】

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新卒で聖路加国際病院(東京都中央区、520床)に入職して10年ほど経験を積んだ後、リハビリや療養、在宅医療に力を入れる医療法人あかつき会(埼玉県川口市)に転職した髙﨑慶さん。聖路加国際病院では医事や地域連携だけでなく、新規クリニックの開設準備や国際的な医療機能評価(以下、JCI)認定の更新を担当し、病院事務職としてのスキルアップを重ねてきたそうです。前編では、聖路加国際病院で培った10年間のキャリアについて伺いました。

10年で5部署の経験

―髙﨑さんは新卒時、医療以外の分野でも内定を得ていました。さまざまな選択肢がある中で聖路加国際病院に入職した理由を教えてください。

病院は地域の「インフラ」になるだろうと思ったからです。学生時代は地方政策を中心に学んでいたため、広い意味でのインフラに興味を持って就職活動をしていました。電気、ガス、鉄道、銀行などに加えて、たまたま聖路加国際病院も候補に入れていて、新しいことにどんどん挑戦している雰囲気に惹かれ、入職を決めました。

―入職後は、どのようなキャリアを歩んできましたか。

研修後は医事課に配属され、外来に1年、入院に2年、医療連携に2年ほど携わりました。その後は経営企画室で公式ホームページの改善や新規クリニックの立ち上げ準備を半年ほど行い、そのまま新規クリニックの開設準備室に配属。配属期間は1年足らずでしたが立ち上げから運営まで行い、開設当初は大学病院や企業内診療所への営業活動もしていました。最後は本院のQIセンター(品質管理部門)に配属され、JCI認定の更新準備を担当。更新後も書類作成や運用変更などを通して、2年ほど医療安全などの品質管理を行っていました。

―短期間で頻繁に異動されていたのですね。その時々で希望を出したのでしょうか。

特に私からの希望は出さず、すべて人事異動によるものです。ただ、これほど短期間で異動する職員はかなり稀だと思います。

私の場合は医事課の5年間は上司が変わらず、経営企画室からQIセンターまでの5年間も同じ上司でした。私が言うのもおこがましいですが、2人ともすごく仕事のできる上司だったんです。だから、自分にできることを探りながら手伝っているうちに、次の部署に引っ張っていただいた実感はありますね。運よくさまざまな経験を積んだことで、地域における病院の立ち位置を考えられるようになるなど、物事を俯瞰できるようになりました。

聖路加ブランドの通じない新施設、「やるしかない」

―10年ほどで自院を客観視できたとのお話でしたが、新規クリニックの立ち上げ時には院外に出ていく場面もあり、大変だったのではないでしょうか。

確かに、新規クリニックは本院とは離れた千代田区大手町で開業し、働き盛りの現役世代を対象にしていたので、全員が「聖路加」のことを知っているわけではありませんでした。そのため、この地域での信頼を積み上げるには聖路加ブランドに頼らず、自分たちができることを明確にPRしながら、ある程度の営業数をこなさなければなりませんでした。

私自身も「やるしかない」と思ってやっていましたが、当時70歳を超える院長が一緒にあいさつ回りをしてくれたり、「ありがとう」と声をかけてくれたりして、組織全体がとても前向きだったのがありがたかったです。

―そのほか、10年間の中で印象に残っている業務はありますか。

JCI認定の更新準備ですね。振り返ると、この仕事が一番大変だったと思います。私が配属される2年前に初めての認定は済んでいたのですが、3年ごとに項目が見直されるため、更新をしなければなりませんでした。しかし、初回受審を担当した職員が退職し、書類が未整備だったり、ルールに実態が追い付いていなかったり、そのままではとても更新できない状況でした。当時、事務方の担当は私一人しかいなかったので、私が動かなければすべてが止まると思い、やはりここでも「やるしかない」と思いました。

―JCI認定の更新とは、具体的にどのようなことを行うのでしょうか。

審査項目の把握や回答準備、回答のための内部調整などです。私が更新に関わった2015年当時の審査項目は1146項目、前回の2012年から大幅に変更された年だったので、まずは担当者の私が全項目を把握する必要がありました。そして、各項目の答えを一通り出し、必要ならルールを決めたり、ルールに基づいた運用を行ったりしていきます。

ここで最も難しいのは、審査当日までに、全職員がルールを運用できる状態になっていなければならないということ。つまり、2000人規模の職員を巻き込み、内容によっては日頃の行動変容を促さなければいけないので、動画を作って模範例を示したり、私が模擬審査官となって部署を回ったりしていきました。職員もJCIの更新があるとわかっていて協力的ではありましたが、地道な努力を続けなければ達成できなかったと思います。

病院事務職は“なりたい自分”をデザインできる

―新卒入職後の10年間で病院事務職としての基礎がつくられたと思いますが、スキルはどのように身に着けてきましたか。

ほとんど上司の見よう見まねをしていたように思います。というのも、私は本当に上司に恵まれたと思っていて、医事課時代には社会人の基礎、クリニックの立ち上げからJCI更新時代にはどうしたら企画を前に進められるのかというビジネスの基礎を教えていただいたと思います。また、教育研修部による研修にも参加し、若手時代にはパワーポイントやエクセルの使い方、中堅ではファシリテーションやコミュニケーションの方法なども丁寧に学べたのがよかったです。

そのほかプライベートで弓道のコーチをやっていて、学生などにどうしたらやる気を持ってもらえるかなど、教え方に試行錯誤したことは他職種とコミュニケーションをとる時に生きたと感じます。

―最後に、髙﨑さんが考える病院事務職の魅力を教えてください。

病院で働く各専門職と比べてオールラウンダーとして活躍できるので、自分がどうなりたいかをデザインできるのがおもしろいと思います。ただ、自分で「これだ」とわかった時はおもしろくても、あまりうまくいかない時は苦しいものです。それでも医療は人の記憶に残るサービスだと思うので、自分のなりたい姿が見えてやるべきことがわかってくれば、とてもやりがいがあるのではないでしょうか。

10年間の仕事を通じ、病院事務職としてのキャリアの基礎を築き上げてきた髙﨑さん。その後、医療法人あかつき会に転職し、制度化して間もない介護医療院の導入に関わるなどの活躍をしています。後編では、長期療養領域への転職理由、介護医療院への転換という前例のないプロジェクトの進め方を伺います。

<取材・文・写真:小野茉奈佳>

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